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ネイチャーフィールドnote

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2020年8月の記事一覧

里山大百科「夏」夏の水田

夏の水田真夏の強い光を浴びて、田んぼのイネはぐんぐん生長し、やがて花を咲かせる。微風によそぐ花は、あまりにも目立たず見落とされやすい。 風媒花であるイネの花には訪れる昆虫こそいないが、イネは実りの秋に向けて強烈な陽射しをたっぷりと吸い込む。 畦道の伸び過ぎた草を刈る音が、遠いセミの合唱と競うかのように響き渡る。 ▲夏の朝、イネについた水滴が宝石のようだ。/神奈川県横浜市(撮影・新開孝) ▲イネの花/埼玉県嵐山町(撮影・新開孝) 地味だが、涼しげにそよぐ。花からは雄し

里山大百科「夏」トンボさまざま

トンボさまざまトンボは幼虫時代を水中で生活し、池、沼、湿地、川、そして田んぼなどあらゆる水環境を必要とする。 親となってからは餌を得るためにも、体を休めるにも水環境以外の草地、林などが必要となる。 つまりトンボは多様な自然環境と一体であり、トンボの種類が豊富であることは、豊かな自然環境が健全に保たれていることの証しともいえるだろう。 ▲モノサシトンボ/新潟県黒川村(撮影・新開孝) 左がオス、右がメス。オスの腹がものさしのような模様である。体長42mm。

となりのアライグマ その3「アライグマの手のひらの秘密」

前回「アライグマが日本で生きていけるのはなぜ?」で、アライグマは両手で物を水につけて洗う習性があり、水辺が大好きだというお話をしました。今回はその理由についてお話します。 水辺を中心に行動するアライグマ野外のアライグマの行動を観察しているうちに、アライグマは水があるところを中心に移動していることがわかりました。 アライグマが好む環境で、特に重要なのが「水と斜面地、高い木」と言われています。 水を飲むことは、動物が生命を維持していくために不可欠で、すべての生物たちにとって

里山大百科「夏」ヤンマの仲間

ヤンマの仲間トンボは多くの少年少女の心を捕らえて離さない魅力をもっている。 力強い飛翔、俊敏な旋回、空中停止と、その飛行能力は昆虫界でもピカイチであろう。 宝石を思わせる大きな目玉、複眼は手にしてみたい衝動を駆り立て、神秘な雰囲気を醸し出す。 トンボ捕りは、少年たちがもっとも好んだ野遊びでもあった。 とくにヤンマ類についてはあの「トンボつり」を懐かしく思う人もいるであろう。 ▲木陰で休むオオルリボシヤンマ/新潟県黒川村(撮影・新開孝) 広い沼や池で見られる。体長8

里山大百科「夏」雑木林を彩る小さな花

夏の雑木林は、おい繁った木々が葉をいっぱいに広げ、光も多くは直接林床までは届かない。 林の中は、アズマネザサなどのササ類がおおい、想像以上に暗い。 この暗い林床は、夏の暑さや強い陽射しを逃れるように咲く植物には、快適な環境となっている。 さまざまな照度の林の中で、涼しげな花をつけ、林を飾ってくれる。そしてまた、多くの生きものたちの出会いも可能にしている。 ▲キツネノカミソリ/東京都清瀬市(撮影・新開孝) 夏真っ盛りの8月開花の時期に葉はない。キツネノカミソリはヒガン

里山大百科「夏」アメリカザリガニの生態

里山に遊ぶ子どもたちの人気者、といえば筆頭はアメリカザリガニだ。 釣り方は簡単。木の枝の先にタコ糸を結び付け、スルメを餌にすればすぐ食い付く。 元来、食用としてアメリカから輸入されてきた帰化生物だが、いまでは日本の生物界の一員として定着している。 ▲大きなハサミを振り上げて威嚇するアメリカザリガニ。大きいものは全長が15cm近くにもなる。/埼玉県大宮市(撮影・榎本功)

里山大百科「夏」林の合唱団セミ

里山の夏に響き渡るセミの合唱。 高い梢で鳴く姿は、子どもばかりでなく、大人の注目も引く。 セミは夏の風物詩として親しまれているが、よく聞いてみると春から初夏、盛夏、晩夏、秋の気配まで、鳴き声の種類が移ろうのがわかる。 季節の流れを蝉時雨に感じとりながら、林の中の合唱団を見学してみてはどうだろう。 ▲晩春から鳴くハルゼミ/埼玉県滑川町(撮影・大久保茂徳) セミの中でも最も早く晩春から初夏にかけてマツ林で鳴く。 鳴き声:ゲーキョ ゲーキョ。 ▲アブラゼミ/埼玉県小川町

里山大百科「夏」わき水にくる生物の四季

谷津田(谷地にある田んぼのこと)を山手に向かって進むと、やがてこんもりとした林の中の沢となり、急な斜面の途中にわき水が垂れている小さな崖にぶつかった。 大人一人がようやく座り込める広さの崖棚にはわずかに水たまりができる。 ▲谷津田の崖からわき水がしたたり落ちている 2月~7月の間、カメラを設置して24時間、そこに現れる生きものを記録してみた。すると、そこにはわき水を求めて出入りするさまざまな生きものが写し出された。 ▲2月 0:51 AM ヤマシギ。この年初めての雪が

ふじまる虫時間・第4限「トックリバチ・スズバチさまざまな巣の形」

前回、前々回は「ミカドトックリバチ」と「キアシトックリバチ」をご紹介しました。今回は残り2種のトックリバチと、トックリバチの近似種である「スズバチ」の巣の形をご紹介します。 ムモントックリバチの巣ムモントックリバチは九州から北海道に分布していて、活動期は6月~10月。体長は10~14mmです。 ▲巣作りの様子(ムモントックリバチ/メス・8月) ▲完成間近の巣・樹皮繊維を塗り付けている(ムモントックリバチ/メス) ムモントックリバチは、巣の内部にえさを詰め込むと、襟を壊

武蔵野の鳥と里山と/7月「アオバズク」

「武蔵野の鳥と里山と」は、1999年に刊行された写真集「野に生きる鳥たち~里山の野生~」(武藤健二・著)をWeb用に再編集、加筆したものです。 狩りに出るアオバスク(1986/7 狭山市) ペンタックススーパーA SMCペンタックスM75~150mmF4 f8 1/125 ストロボRDP 巣立ち直後のアオバズクの親子(1983/7/9 狭山市) ▲右上が親鳥 ペンタックスMX SMCタクマ―500mmF4.5 f4.5 1/30 KR