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【お薦め】『パトリックと本を読む』

今回の本のご紹介

今まで沢山の本を読んだけれど、こんなにも心を動かした本はなかった!というわけで、ご紹介。これはもうお世辞抜きに!!本当に良かった!!

パトリックと本を読む:絶望から立ち上がるための読書会
ミシェル・クオ、神田由布子

あらすじ

著者ミシェル・クオ氏による、大学時代からの記録小説。
ミシェル・クオ氏、彼女はミシガン州生まれの台湾系アメリカ人である。ハーバード大学で四年生になった頃、弁護士になる為のあれやこれやを準備しながらに思うのだ。自分が台湾系アメリカ人である事から無視できなかった人権問題があり"常に自分を動かしたものはそうした本や教育であったが実際に自分が動いて努力してきた事は何があるのだろう"と。

そこで思いついたように教育支援団体へ加入、期限は2年間と決め、教育が行き渡っているとは言い難い、ミシシッピ川畔の街ヘレナへ飛び込む。ここで出会ったどうしようもない生徒たちと共に日々を過ごすうち、そこにある黒人差別や、本当は学びたいのに学び方のわからない子供たちに出逢う事となる。

中でも、パトリックという少年はミシェル氏が教える事に希望を持たせてくれた唯一の生徒であった。その彼が、殺人を犯してしまう……。

読みどころ

本書は、そんなパトリック少年と、ミシェル氏の長い長い交流を描いた記録であるが、まるで映画を観ているかのように街の風景や抱える心情が見えてくる筆運びにある。街の通り、倒れたごみ箱、迫害される事を日常として捉えてしまっている人たち。自分一人では、彼らの人生を変えられない、とミシェル氏の苛立ちが募り、逃げ出してしまいたくなったり、だいたい私に何ができるんだ、と自問自答してみたり……。

この本の素晴らしいところは、人生はトライアンドエラーで成り立っている事がよくわかる部分にあり、一方向の思いはただの押し付けに過ぎず、共に成長していける、そうした交流を描いている部分に思う。その愛が本当に暖かいのだ。そして、文体が非常に美しい。誰にでもある"あの日"や胸を焦がす"あの瞬間"を思い返すときに目を細めるようなあの感覚、それが丸ごと文章として成り立っている。(これは翻訳者である神田さんの言葉選びの素晴らしさもある!)

人種差別、それらがあるのは、私たち日本人でもよく知るところだけれど、それがどのように積み上がり、当人たちにはどのように受け止められその方向性が出来上がったのか等も詳細に学べて、勉強にもなる。ところどころに美しい文学・詩・小説・俳句、様々が文章中に織りこまれる。

なぜもっと早く読まなかったのか!!(積読されてたw)
とても勿体ないことをした!これをお読みの皆様には是非、ご一読頂きたい一冊です!自信をもって推薦できる!大人は勿論のこと、お子様であれば中学生後半~高校生なら十分に理解できる内容かと思うのでご家族で回し読みもありかも。

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尚こちらの単行本の売り上げの一部は、パトリック少年に寄付されるそうです!以上、本当に!心から!お薦め♡
皆様、よい読書ライフを。


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