好きなアーティストの歌が聴けるのは、決して当たり前のことじゃなかったんだ

その人の歌を初めて聴いたのは、小学生の時だった。
当時、和歌山に住んでいた文通相手のお姉さんが送ってくれたテープに「ゲット・アップ・ルーシー」が入っていたのがきっかけ。

今まで聞いたことのない乾いたギターの音に、ちょっと不機嫌そうなチバさんの歌声。一度も体験したことがない音に出会って、衝撃を受けた。でも何度も聞くうちにTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「渋み」みたいなものにすっかりハマってしまった。音楽雑誌で見る黒いスーツを着込むその様式美がとても好きだった。

初めてテレビで見たのはあの伝説のMステ。ロシアのガールズデュオｔ．Ａ．Ｔ．ｕがドタキャンした穴を埋めるために、急きょもう一曲歌うことになった。曲名のテロップも歌詞も出ない「ミッドナイト・クラクション・ベイビー」。一瞬でMステの会場をライブハウスに変えてしまった。リアルタイムで見ていて鳥肌がたった。かっこよすぎ。これこそがロックスター。クールに歌い、激しくタンバリンを打ち鳴らす姿にすっかり惚れてしまった。

しばらくたってから映画『THE FIRST SLUM DUNK』のオープニングで流れるチバさんの声を聞いた。その後映画が大ヒットするとさらにあちこちで聞いた。あれだけのヒット作なのに、スラムダンクを「読んだことない」とパンフで言っちゃうチバさんの言葉に「この人、まだ全然尖ってる！　変わってない！！　かっこいい！！！」ってすごくうれしくなった。

今日SNSで流れてきた訃報。まさかチバさんだったなんて。
もうチバさんの新しい歌が聞けないと思うととても悲しいです。
でもチバさんのこれまでに残した歌はずっと消えない。初めてTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの歌を聞いたときの衝撃も。
どうか天国でも、好きな音楽を思い切り楽しんでください。
私はこの世で、まだまだ思い切りあなたの音楽を楽しみます。
今まで本当にありがとう。

好きなアーティストの歌が聴けるって、当たり前のことじゃない。
わかっていたつもりだったのに、今日、あらためて思い出した。
応援したい人がいる人は、応援できるうちに思いっきり応援しておこうぜ。
あぁ、今観てもやっぱり「ミッドナイト・クラクション・ベイビー」は最高にかっこいいわ。