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屋根裏のフィリピン人に追いかけられる夢をみた

あれ、ストックしてあるはずの歯ブラシがないな。
あれ、こんなところ汚れてたっけ。
あれ、壁が少しヘコんでる。

彼氏と同棲を始めて半年が経った。
最近、あるはずの物がなくなっていたり、壁に覚えのない傷がついていたりすることが続いている。
小人でも住んでいるのだろうか。
住んでいるとしたらそれはジブリ映画に出てくる可愛らしい小人ではなくて、もっと禍々しい何かであるような気がした。

なんとも言えない気持ち悪さを感じながら過ごしていたある日、浴室から大きくはないが小さくもない物音がした。
カタ、ゴトッ、ドン
彼は休日出勤で家には私しかいない。
気づかなかったことにしたいが、無視するのはなんとなく違う気がした。音の原因を確認しなければ。

「せっかく寛いでいたのに」
面倒に思いながらも惰性で脱衣所の扉を開けると、浴室のスモークガラスの向こうに人影が見えた。
状況を飲み込めずにフリーズして立ち尽くす。そうしているうちに浴室から中肉中背のフィリピン人が出てきた。
まずい、逃げないと。
フィリピン人は一瞬驚いたような表情をしたのち、険しい顔になった。不法侵入者を見つけたかのような恐ろしい形相で私を力強く睨めつける。

ここ、私の家なんですけど。

そんなことを言えるはずもなく、私は脱兎のごとく逃げ出した。階段をかけおり、玄関を開け、全力疾走で道路へ出る。
交番を目指して走っていると、途中で赤いタスキをかけた駅伝選手に追い越された。「え?」と思い左に視線をやると緑のタスキをかけた選手が私と並走している。いつの間にか道の両端にたくさんのサポーターがいて選手たちに声援を送っていた。
後方にも駅伝選手が多数、そのなかにフィリピン人の男とその仲間と思われる男女も紛れ込んでいた。相変わらず険しい顔で何かを叫びながら追いかけてくる。

口封じに殺そうと思っているに違いない。
そういえばフィリピン人と対面したとき浴室の天井の蓋が床に転がってたからあそこから入ってきたんだな、落ち着いたら塞がないと。
早く警察に行って、彼にも報告して、それからそれから…。考えている間に駅伝選手たちが私を追い抜いていく。フィリピン人が迫ってくる。
無我夢中で走って走って、ゴール目前で目が覚めた。

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