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螺鈿から広がる恋文考💌大事な手紙はきらきらの箱から出てくる!

美しく光る貝殻を漆の箱などに巧みに貼ったり、埋め込んだ螺鈿細工(らでんざいく)のきらきら。つあおとまいこは、その美しさに吸い寄せられるかのように、根津美術館で開かれている「きらきらでん」展を訪ねました。

つあお きらきら好きって、よくわかる。カラスと人間は光り物が好きなんです。

まいこ 螺鈿細工はホントにきらきら。玉虫色に輝くのもステキですね!

つあお 緻密で華やか! 貝殻をこういう風にはめ込む形で漆の工芸品に使おうと最初に思った人は素晴らしい。

まいこ これ、結構いろんな国で使われている技術なんですね。この展覧会では、中国、朝鮮半島、琉球、日本の作品が出てる!!

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《楼閣樹下人物螺鈿箱》(中国、明〜清時代、17世紀、木胎漆塗、根津美術館蔵)展示風景

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《人物螺鈿沈金八角食籠》(琉球、第二尚氏時代、18世紀、木胎漆塗、個人蔵)

つあお 多分中国の方が古くて、日本へ技術が入ってきたのでしょう。どの国のものが気になりましたか。

まいこ うーん、中国かな。やはり螺鈿の本場なのでしょうか。箱全体がきらきらしてる! 派手好きな国民性もあるのかな。

つあお 確かに、比べると日本のものは少し渋い。逆に螺鈿が使われているのは箱のごく一部というものが多いかな。植物の図柄の中で花びらだけが螺鈿になっているものとか。でも、これはこれでとってもきれいですね! ミツバチはこうやって花に吸い寄せられていくのかなぁ。

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《秋草蒔絵硯蓋》(日本、江戸時代、18世紀、木胎漆塗、根津美術館蔵)展示風景

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拡大写真。一部の花びらにのみ螺鈿が施されている

まいこ ほとんどが金で描かれていて、全体としても華麗だけど、3輪の花だけ螺鈿にしているワンポイント仕立てがお洒落ですね! お花型に薄いパールがはめ込んであるデザインは、憧れのハイジュエリーヴァン クリーフ&アーペルの四つ葉のクローバーを思い浮かべます。でもヴァン クリーフ&アーペルの創業は1906年ですから、こちらが先ですね。

つあお そもそも草や花を大きく描くこと自体が、日本の美術品のよさなのですよねぇ。中国にも花鳥画はあるけど、絵画では大きな世界観を表したものが多い。身近な草花を愛でる日本の美意識も、それはそれでいいなぁと思う。

まいこ なるほど! 中国のほうは、人物や風景を題材にしているものが多いですね。同じ螺鈿でもけっこう文化の違いが現れていて面白い。

つあお 日本の中でちょっとユニークだなぁと思ったのは、手紙などを入れておくための文箱(ふばこ)。こんなに美しい箱に入れるのだから、昔の日本人はよほど手紙を大切にしていたのでしょうね。

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《紫陽花蒔絵文箱》(日本、江戸時代、18世紀、木胎漆塗、根津美術館蔵)展示風景

まいこ 恋人から来た手紙をときどき箱から出して一生懸命読んでるとか!

つあお 手紙を読む場面自体は絵で見たことがあるけど、こういう箱で保管されていると思うと、しみじみしませんか。

まいこ しみじみしますねー。浮世絵とかで、巻いてある手紙を伸ばしながらすごく目に近づけて一心に読んでいる花魁とかいじらしいですよね。でも、意外と文箱が運ばれてくる場面や、箱から出すところって描かれていないですよね。

つあお 今みたいに紙がふんだんにある時代じゃないでしょうし。ちょっと妄想。「好きだ」とか「早く家に来て」とか、手紙に書いちゃう!

まいこ 私はお姫様。召使いが文箱を持ってくるのをずっと待ってる。せっかちだから、本当は走って取りに行きたいところですが。笑。ふたを開けて、読むまでの間もドキドキですよ!!

つあお 私召使になります! あれ? 妄想終了。笑

まいこ こういう箱に入れてるだけで気持ちが盛り上がる気がします。いっぱいたまってきたらどうするんでしょうね。

つあお その時はまた新たに職人さんに頼んで箱を作ってもらうのです(キッパリ)。

まいこ 手紙を書く早さに追いつかないかも。螺鈿作るの大変だから。

つあお それはそうだなー。貝殻を絵の形に切って貼ったり、埋め込んで上からまた研いだりして、相当な手間がかかっていますからね。恋心の盛り上がりに追いつかない! 笑

まいこ 無理やり詰め込んじゃうのかな?笑。ところで、手紙を書くときに使うんだと思いますが、硯箱も素晴らしいですね。

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《芙蓉打出硯箱》(蓋表=土屋安親作、蓋裏=小川破笠作、日本、江戸時代、18世紀、木胎漆塗、根津美術館蔵)展示風景

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拡大写真。トンボにのみ螺鈿が用いられている

つあお この箱は、トンボをモチーフにしたところが日本的! これも、トンボだけ螺鈿というところがオシャレですね。恋文はともかくとしても、手紙などの文書を書くのは、情報や気持ちを伝える手段として、当時は今の何十倍も重要な行為だったことでしょう。紙に文字を書くということ自体の大切さを表してるのかなとも思います。美しい硯箱を出してきて墨をゆっくりすって気持ちを込めて手紙を書き、もらった手紙は文箱にしまっておいてときどき出してきて読み返す…素晴らしい光景として見えてきました。

まいこ そういう世界に浸ってみたい気がちょっとします!

つあお 今の硯箱はスマホです! メールとかメッセージに、どこでもどんどん文字を入力しちゃう。

まいこ その発想ステキです。

つあお スマホのケースを螺鈿の蒔絵箱にするといいかもしれない!

まいこ そうですね! 私、手描きの文字が宇宙人みたいにカオスなので筆で書く時代は即フラれたと思うのだけど、今なら電子文字だからなんとかなるかな! そこは現代でよかった~笑!

きらきらでんGyoemon画

Gyoemon作《かいがらでんを楽しむまいこさん》スマホケースを自作の螺鈿工芸にしたいのだけど作るのが面倒なので細かくする前の貝殻自体を転用して満足しているまいこさんの様子を描きました。(Gyoemonはつあおの雅号)

※掲載した写真は、プレス内覧会で主催者の許可を得て撮影したものです。

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企画展「きらきらでん」(根津美術館[東京・表参道]、2021年1月9日〜2月14日、日時指定予約制=上記ウェブサイトで予約できます)
輝く真珠層を持つ貝を文様の形に切り抜き、嵌め込んだり貼り付けたりして装飾する技法、螺鈿(らでん)。「螺」は巻き貝、「鈿」は貝で装飾するという意味です。アジア圏では漆工技法にも取り入れられ、主に夜光貝や鮑貝が用いられました。貝片の色は単なる白ではなく、内から放光するかのような青から赤のグラデーションのきらめきを持ちます。その貝と漆独特の美しい艶とで織りなされる世界は古来、人々を魅了してきました。 本展覧会では根津美術館の所蔵品を中心に、日本における螺鈿技術の受容と展開の歴史をたどりながら、中国大陸・朝鮮半島・日本・琉球の、きらきらの螺鈿の魅力をご堪能いただきます。(根津美術館ウェブサイトより引用)


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