つーたん

講談社FRaUweb「僕の妻は"女"芸人」「#nofilter」連…

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講談社FRaUweb「僕の妻は"女"芸人」「#nofilter」連載しています noteにはのんびりと短編小説を載せていく所存

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ジャケットの胸ポケットの中で、スマホがブルッと震える。どうせまた彼女の亜美からだろう。かれこれ3日はLINEを返していない。そういえば昨夜は電話もかかってきていたが、もちろん折り返していない。仕事が忙しいのは本当だ。しかし、正直なところもう冷めている。理由なんてわからない。付き合って1年。草津やUSJにも行った。楽しい思い出もできたし、特に大きな喧嘩をしたことはなかった。なんでだろう。他に好きな人ができたわけでもない。自分でも不思議だけど急に冷めてしまったんだ。できることなら

    • ハッピー

      「田中さんいつもごめんねぇ、助かるわ」 「いえ、困った時はお互い様ですよ」 29歳未婚でなおかつパートナーなしのワイは、誰かが仕事を急に休むことになると、真っ先に交代要員として頼られる。ワイが生まれ育った北海道夕張郡栗山町では最大級のスーパー『ハッピー』で働き始めてから早いもので5年。東京の女子大を卒業して、そのまま都内の保険会社に就職をしたものの、精神的に参ってしまい1年半で退職。逃げるように栗山町に帰ってきた。幼い頃からあれほどまでに強い憧れを抱いていた東京だったのに

      • ピンク

        今日も右足のくるぶしが痛い。社員割引で50%オフだから、と慣れないショートブーツなんか買うもんじゃなかった。擦れて血が滲んでいる。売り場で眺めている時は、無難で何にでも合わせやすそうと思ったが、本当に無難なだけで特に気に入っていない。65点てところだろうか。 「履いているうちにお客様の足の形に馴染むので、どんどん履きやすくなっていきます」 お決まりのセールストークを今回ばかりは私自身の心のお守りにしながらも、いよいよ1ヶ月。合皮でできたこの子は一向に私を受け入れてはくれな

        • スナックJ

          「よかったらどうぞ。飲み放題歌い放題で4,000円ぽっきりよ」 50代後半から60代といったところだろうか。セットに15分はかかりそうなこだわりの前髪を携えたママが優しく語りかける。アイラインがしっかりと引かれた目尻を抜きにしても、はっきりと綺麗な目鼻立ちが印象的だ。ところどころ語尾が半音上がるのは果たして博多弁なのか、個性なのかはまだ判別がつかない。なんとなく商売っ気のなさそうな雰囲気に安心して入店した。なんとなく。 店内はL字形のカウンター5席でこじんまりとしているが

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