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7月13日 イスラエルでのコロナ第2波の様子

1.はじめに


さて、大変しばらくぶりの投稿となります。イスラエルの現在の状況をまとめてみたいと思います。
全世界的に、コロナの第二波が今にも猛威を振るわんとする勢いの中、イスラエルも多分に漏れず、「ギリギリのところにいる…」という感じです。
何がギリギリなのか。「医療が今にも崩壊しそう」、「経済的に大恐慌が始まりそう」、「民衆の怒りが限界に達して爆発しそう」…といったところでしょうか。
そういった「大惨事」が目の前に迫っていて、チョンとつつけばドミノ倒しのように日常生活のすべてがドラマのように崩れ去る。そんな感じのギリギリ感なのです。
とはいえ、今を生きている私たちとしては、そんなわかりやすいことにはならないのでしょう。医療は半崩壊だし、経済的には世界的な恐慌がもう始まっているのかもしれない、世界のあちこちでそしてイスラエルでも大規模なデモがあったりして、実際ドミノはもう走っている。将来的にこの出来事が歴史の教科書に載ったり、誰かに語られた時に、今私たちが体験しているすべてのことが「ドラマ」へと変わるのだと思います。

季節の違いなのでしょうか、あの第一波の騒ぎは何だったのだろう…という気がしないでもありません。WHOはコロナの毒性は決して弱まってはいないというけれど、1日当たりの感染者数が第一波の時よりも多いのに、死者数や重症患者数はずっと少ない気がします。それはどうしてでしょうか?

イスラエルでは1日当たりの感染者数が1,200人とかそんな状況です。これは第一波の時よりもずっと多い数なのに、外出禁止といった政策はとられていません。あの時は家の門を開けて100メートル先に出るのですらドキドキしていた私ですが、今では多少の緊張感を持ちつつも電車に乗って都心に出かけたりもするのです。感染者の数だけの話ならば状況は第一波の時よりもずっと悪化していると考えることもできるのに…です。

2.それでは、イスラエルのコロナ・エピデミックを数字で見てみましょう。


イスラエル保険省のホームページでは(全部ヘブライ語ですが)、コロナに関する数字がグラフになってわかりやすく示されています。
https://datadashboard.health.gov.il/COVID-19/?utm_source=go.gov.il&utm_medium=referral

7月13日22:28現在、イスラエルの感染者数は40,635人となっています。その中で「病気である人」の数は20,872人です。この辺の定義が私もよくわからないのですが、「感染者数」の中には半数近く無症状の人も含まれていて、「病気である人」というのが、実際に症状も出ている人という風に私は理解しています。

病気である人のうち、呼吸器をつけているのが54人、昨日の深夜から数えると5人増えたそうです。
感染者数は昨日に比べると+1,234人とのこと。7月13日の検査数は21,767件です。そのうちの6.1%の人に陽性反応が出たということだそうです。
重症患者数の推移も表示されていますが、先日は定義が変わったので、「重症患者数」が劇的に増えたとの見解がラジオで解説されていました。「重症患者」を定義づけるための血中酸素濃度が、高くなったのだそうです。データを見るときの注意事項ですね、状況が変わったのでなく、定義が変わった。なかなかむつかしいものがありますけれど、定義を変えたのは何か理由があったのでしょうね。

興味深いのは病院のベッドの使用率です。普通ベッドとコロナベッドに分かれて使用率が表示されていますが、エルサレムのハダサ・エイン・カレム病院ではコロナベッドも普通ベッドもすでに100%を超えた使用率、その他の病院も都市部にある名の知れた大病院は80%くらいの高めの割合となっているとこともあれば、40%から50%と落ち着いているところもあります。

これらの数字は保健省のホームページをご覧いただけるとわかるのですが、上記だけでなく、感染者の居場所別の人数(入院中か自宅隔離かホテル隔離かなど)、感染者の年齢別の割合や地域による分布、さらにはエピデミックの拡大率(?)というような、ちょっと見ただけでは(私には)理解できないような特殊な計算がされた数字なども、細かい定義と一緒に掲載されています。

さて、こういった数字も踏まえて、最近のイスラエルのコロナ・エピデミックで特に私が感じたことについて、書いてみたいと思います。

3.イスラエルの検査などの数字分析の細かさについて。

とにかく際立った検査数の多さ。まずはこの一言です。イスラエルは世界でも人口比あたりの検査数が最多数だと聞いたことがあります。「総検査数」というのは見たことはありませんが、人口約900万程度と言われているイスラエルで毎日の検査数が20,000人を超えている状態です。多い時では1日で30,000人近い検査数となっているのです。私は世界のほかの国の状況をそれほどよく知っているわけではないですが、この検査数は世界一でなかったとしても、上位に入るのは間違いないと思います。
(ちなみに、検査を請け負っている組織が、人手不足や条件の悪さ、それを政府が改善しようとする動きがみられないということで、「これ以上私たちだけに犠牲を強いるならストライキをする」と言い始めています。イスラエルのストやデモはとても清く正しく民主主義が反映されているので、これについてはまた別の機会があればご説明したいと思います。)

そして、この数字分析の細かいこと。これだけ細かい情報を国が公に出しているのだから、その内側ではもっともっと細かい分析がなされているのではないか…と思っています。

なぜイスラエル人はこんなに検査をするのか。実はこれ、私はイスラエル人の、「なんでも表に出さないと気が済まない性格」、「臭いものこそ一番に蓋を取ってしまおうとする性格」が、如実に表れていると思うのです。
全世界の共通認識として、「コロナは感染率が非常に高い」「感染しても無症状の人も結構多くいる」これは、多分、大多数の人に賛成いただけることだと思います。(私はコロナに関する専門知識は全くありませんので、私の書くことはすべて「素人の感想」です。)

私も途中で、「何もここまで必死に検査しなくとも、重症者やハイリスクの人のケアの充実を図る方が得策なのでは?」と、何度も思いました。
どの国も、限られた予算と時間と物資と人員とで、経済崩壊と医療崩壊のお互いが一番少なくて済むバランスを求めて試行錯誤している状態です。検査と追跡がそこまで重要なんだろうか…と思いました。
でも、イスラエルにとってはこれが重要なのです!

前にも書いたと思いますが、イスラエルはこれを今後に活かしたいと思っていると思うのです。なんでも記録するのはユダヤ人の得意技です。これを機に、ここで感染の動きを学ぶ。どこでどうやってどのタイミングで広がっていくものなのか、それを防ぐにはどうすればいいのか、追跡しなければわからないと思っているのではないでしょうか?「追跡」というよりも、これはすでに「追及」に近いような…。

この検査数の多さは決して悪いことではないけれど、それが本当に最善策なのかは、もっと後になってみないとわかりませんよね。ここまで検査してもそれにどれほどの意味があるのか…。それでもとにかく、臭いものは蓋を取る。見えにくいものは可視化してはっきりさせる。イスラエル人はこの検査の量の多さに何の疑問も抱かないのです。(検査数が多ければ、感染者数が増えるのも今の状況では当たり前と言えます。)
以前、日本のダイヤモンドプリンセス号に入っていったスタッフに言われたとされる「検査すると陽性が出るから検査しない」というような考え方は露ほども思いつかない。
何しろフェイスブックで「私の子供が陽性になりました!皆さん応援してください!」と書く国民性です。「隠したい、内緒にしたい」という感覚はないのだろうかと、不思議になります。


4.イスラエルの「プライバシー」と「バッシング」について

日本では感染者が行ったお店などは「プライバシーの侵害」及び「風評被害」を恐れて公表されないようになってますよね。イスラエルではあり得ません。「何月何日の何時何分から何時何分まで、どこそこ町の○○というお店にいた人は隔離!」と細かく発表されます。これは前にもお話ししたとおりです。これだけはっきりさせればその人が行ったことのないお店に「風評被害」がおきることはないだろうという徹底ぶりです。

ここで一つ、バッシング、これはイスラエルではないのだろうかという疑問が上がります。あります、バッシング。イスラエルにもあります。でも、バッシングされる方も黙っていないという強さがあります。
まだ感染者数が二ケタ台で感染が広がり始めだったころ、イタリア旅行から帰ってきたイスラエル人が感染を広げてしまった出来事がありました。その時、その家には「殺人鬼!」と言われるレベルまでのバッシングがあったそうです。それでも家族は毅然とした態度で新聞社に公表してほしいと手紙を送った。「うつしてしまった人に対しては申し訳ないが、私たちは保険省の指示に従った生活を送っていた、悪いことは何もしていない!!!」と。これも、以前お話ししたと思います。

こんな風に、同じ第二波でも日本とイスラエルは状況が全く異なり、同じ「風評被害」も「バッシング」も捉え方が全く異なっています。
日本とイスラエルを同時に観察していると、本当に興味深いことがいっぱいです。

5.最後に



…とコロナからは少し外れてしまいましたが、そういえば先日は、イスラエル人にマスクのつけ方を注意されてしまいました…。ちょっと日本人としては屈辱的でしたよ…。

次回はイスラエルのマスク事情その2、そして感染者が出たイスラエルの学校がたどった道について、書く機会があればと思っています。

もう、「コロナ前に戻る」ということは世界の誰も考えていないと思います。「ニューノーマル」という言葉さえ古く感じてしまうこの頃で、私たちはすでにコロナと一緒の世界を歩み始めているんだと思います。まるで壮大な社会実験のようです。
少しでも多くの人が、安心と満足を感じて生活ができますように。

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