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誰を顧客にしようか

「会社のバックオフィス業務をまるっと引き受けます」というベンダの人と、チャットを数回往復させた。2日前に軽く言及したトピックだ。アタマの奥深くに眠っていた、いにしえの知識が少しリストアされたので、ここに記述する。

管理仕事でそれなりに稼ぐため、最も重要な要素は、技術である。言うまでもないが、僕は技術至上主義に立っている。感情・理屈・過去事実からそれを支持する。

続いて、チーム編成。自分のスタッフ、外部専門家、顧客側人員はそれぞれ致命的な役割を担う。以前一度書いたことがある。引用しておこう。

自分側は4人。すべてを担う私と、事業以外のすべてをサポートする秘書様。事業のうち、会計士税理士的領域をカバーする士業アシスタント、管理仕事的領域をカバーする管理アシスタント。

顧客側は、人数ではなく、要件で示します。こちらの指示できちんとルーチンワークを継続してくれる人。事業サイドと管理サイドとの橋渡しをしてくれる人。その他第三者とのコミュニケーションを担い、こちらへ情報を伝達してくれる人。

外部ベンダは、弁護士・税理士(手続・相談)・社労士(手続・相談)・司法書士・財務コンサル(評価)。

質問への回答10_年齢と時代・チーム人数』20220618

技術、チーム編成に次ぐ、第三の要点は、顧客、である。今回は顧客について記載する。

どのような法人・個人を顧客とするべきか。

①充分な資金
無い袖は振れない。利益が出ている、キャッシュフローが潤沢である会社へ請求書を発行するべきだ。この観点は不思議と抜け落ちがちだが、しかし、最も大切だと僕は考える。

幸い、管理系のベンダは、先方の儲け事情を帳簿を見ずとも事前の打ち合わせからそれとなく知ることができる。毎月カツカツ、借入金が重く給料の遅延が頻発する会社の仕事は請けるべきではないよね、という当たり前の話をしている。

②技術への評価
きちんとした仕事にたいして、しっかりと報酬を支払う心意気を持った人々を、顧客とする。この姿勢は、資金力の多少に関わらず、社風もしくは担当者のマインド次第。ケチな金持ちはそこら中にいる。「できるだけ少なくカネを払おうとする態度が正しい」という信条を掲げる者は、珍しくはない。

法の範囲内であれば経済社会にルールはない。どのような態度であっても、僕は否定しない。自分が嫌だ感じれば、そこから離れるのみ。可能な限りカネをケチる会社が、可能な限り暴利を貪ろうと努力するベンダと、熾烈かつ不毛な争いを繰り広げ、互いに消耗してくれれば社会は少し幸せになる。

最も単純かつ効率的な判断方法は、「値切られたか」どうか。僕は一瞬でも値切るそぶりを見せられただけで、絶対に仕事を請けなかった。その後どんなに依頼・謝罪されても、それで終わり。何度も書いているが、この世に仕事は無限にある。わざわざ値切る道を選択した人間へ役務を提供する理由はない。

③プロパスタッフの存在
こちら側の仕事の型を全面導入することが前提条件なのは、前回言及した。MF・G suite・Slack・ネットバンク利用は絶対。他のツールを要求されれば、そこで笑顔でさようなら。また、顧客側にプロパの管理スタッフがいて欲しい。どれほど省力化しても、スキャンや物理書面の送付、押印は消えない。こちら側の問題ではなく、銀行・行政が悪い。ベンダサイドで管理仕事を完全に巻き取ることはできないし、するべきではないと僕は思う。先方にプロパのスタッフがいなければ、仕事は受けない。

次は少し広い目線で。それでは、どういった事業・産業の会社がベンダにとっては有利なのだろうか。切り口は色々と思い浮かぶのだけれど、今回はスタートアップか中小企業か、で論じよう。

スタートアップは、テクノロジ利用のハードルが低く、効率化へ積極的で、理屈で話が通りやすい。規模も小ぶりな傾向にあって、導入時の工数負担が少ない。ネガティブ面としては、資金的な余裕がなく、管理仕事領域が真っ先に削られる立場にあるという点。「渋いな」というのが僕の印象だ。

ただし、基本的な管理仕事に付随して、資本政策・上場準備・法務などなどをすべて同一のアタマに格納する管理仕事プレイヤというのは、この世にあまりいない。技術を身に着け、クライアントサイドから重要性を見出されれば大きな報酬につながるし、さらに不可欠だと認定されれば、離さないように、エクイティのオファーを受けるかもしれない。エクイティとなればフローの報酬とはまた別の世界。「エクイティ報酬」の可能性が最大の利点かもしれない。

デメリットは、事業の可変性。事業の統廃合や組織の変革が頻発し、その都度、管理設計を見直さなければならない。部門別会計や予実分析まわりのやり直しは、得られる情報の価値と比べ、著しく面倒である。仮に順調に会社が育ったとしても、会社の規模に応じて適切な管理設計は異なって、その都度、やはり、整備のために手を動かさなければならない。工数増加に比例してきちんと報酬交渉を入れられればよいが、果たしてどうだろう。

いま書きながら少し考えたが、その業務上の痛みを相殺するには、エクイティを保有して成長が自分の経済価値に還元させるような状況になくては、ストレスなしに続けるのは難しい。ゆえに僕は、多額のフロー報酬を得ても、エクイティをもらわなかったスタートアップとの仕事は長続きしなかった。逆に、エクイティをもらったしごとは疲弊しつつも経済的な満足に背中を押されなんとか最後までやりきった。
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いまから中小企業への業務提供について説明しようとしたのだが、字数が。ターゲットは、売上10-30億、従業員30-100名程度の優良法人。

続きはまた明日。連載感が出てきたね。

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