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【短編小説】 霊感タオル その7

「タオル、誰から貰ったんだっけ。」

「母親が送って寄越したんだよ。」

「誰がお母さんにそのタオルくれたの?」

「そんなの知らないよ。手紙に書いていなかったし。」

「今度、聞いて教えて。」

「わかった。」

急いで向かった甲斐があって、何とかまだ明るい内に公園へ到着出来た。


公園には昼時の小さい子供たちは殆んどおらず、小学生くらいの子供がちらほらと遊んでいる。

「あれ、あの奥の木のところ。」

例のベンチの前から問題の奥の木を田島に指し示した。

田島がじっとベンチを見ている。

ベンチは夕方になって、また日陰になっている。

「・・いるの?」

田島が自分の質問には答えず、目で木のところへ行こうと言っている。

気の進まない足取りで、二人で奥の木の立ち並ぶ方へ向かった。

奥といってもメインの広場から10メートルも行かないくらい。

でも、入った途端にスっと空気が冷たい感じになって、広場の声が聞こえなくなった。

一番奥まで行こうとしたら、田島に手で制された。

「そこは踏んだらいけない。見てみ。」

田島が地面を指差した。

パっと見た感じは周りとあまり変わらないように見える。

けど、なんとなく土の色が数メートル分、他の場所と違う気がする。

田島が目を細めて言った。

「何か出てない、あれ・・?」

「出るって・・何がよ?」

足が全く言う事を聞かない、ひざが震えて踏み出せない。

田島が自分を横目に問題の「何か出ている」部分へ近づいた。

地面を見たまま、「電話して。」と言った。

「誰に・・?」

「・・わかってんでしょ?」

スマホの番号を震える指で「110番」と押した。


近所の交番から来たと思しき若い警官がやって来た。

警官の顔に「暑いのに、戯言を。」と書かれている。

「ここ、見て下さい。」

田島は動じず、地面を指差している。

「誰か近所の人間がペットでも勝手に埋めたんでしょうね。自分の庭みたいにしちゃあ、困るんだよなぁ。」

警官が愚痴りながら、しゃがんで地面を警棒で軽くつついた。

ツンツンと軽く土を抉るように突いていると、ペットな動物じゃありえない量の毛、人の髪としか思えないものが警棒に絡みついて来た。

警官が小さく「ヒッ」と言いながら立ち上がって、無線でどこかへ助けを呼び始めた。

ものの数分でパトカーやら救急車やらが数台やってきた。


現場には規制線が張られて、自分と田島は公園から移動して、パトカーに乗せられて色々と聞かれた。

「女のお願い」の話をしたって仕方無いので、公園のそばの飲み屋に行こうとして、店が開くまで公園をブラブラしていて見つけた、と雑な説明をした。

連絡先や勤め先をひと通り聞かれて、その日は解放された。


もちろん飲みに行く気なんてさらさら無いし、とにかくどっと疲れた。

会社に何か連絡が行ったらしく、自分にも田島にも電話が掛かって来て、これまた色々と聞かれたし、ヘンな詮索もされた。

「何か、巻き込んじゃったね。悪かったな。」

トボトボと最寄り駅まで一緒に歩いて帰る道すがら、田島に謝った。

「話、ほんとだったね。。でも、良いことしたよ。きっと。」

「あれ、、そうだったのかな・・?」

「多分、そうなんじゃない。犬猫であんな大騒ぎにはならないと思うし。」

「そっか、そうだよな。。」

少し落ち着いて来たら、汗が止めど無く噴き出して来た。

タオルでゴシゴシと拭っていると、横から田島がタオルのタグをギュっと摘まんだ。

「間に合って良かったね。」

「うん、、ありがとう。」

そのまま黙って駅まで歩いた。




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