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【 短編小説 】 永遠のフライト。

学校からの帰り道、僕はいつもこの土手を通って帰る。

ここは広い景色を見ることが出来て気持ち良いし、河原にちょいちょい吉沢さんがいるから。

いつもなら吉沢さんはベンチに腰掛けて本を読んでいるはずだった。

今日はそのベンチが机になり、吉沢さんは熱心に紙飛行機を折っている。

僕は土手を降りて行った。

久しぶりに声を掛けてみる、、といっても一週間前にここで会ったけど。

「何してるの?」

3機目の紙飛行機を折りながら、僕を見上げる吉沢さんは肩までの髪を軽く耳に掛けながら「輝く!紙飛行機選手権だよ」と言った。

「出来た!」

それぞれ大きさの違う紙飛行機がベンチに3機並んだ。

「・・輝くの?」と聞いた僕の問いに吉沢さんは答えず、「では一機目出発です!!」と言いながら、手に持った紙飛行機を勢い良くブンっと投げた。

飛び立った紙飛行機はヒューンっと上空に一気に高く舞い上がって、それでいて急角度でほぼ垂直に落下し、地面にその先っちょを突き刺した。

「うーん、なるほど。なるほど。」

吉沢さんは何かを納得したようで、ほぼ足元にある紙飛行機を見定めている。

「では、二機目、出発ですっ!」

二機目の紙飛行機も一機目と同じで、元気良くブンっと腕を振り切った。

今度も舞い上がったと思ったら、トリッキーな前方宙返りを決め、これまた数メートル先の地面に突き刺さった。

「・・凄いな、分かりやすい、あははは!」

ひとりで何かを納得して、楽しそうに笑う吉沢さんは可愛い。

「ラストッ!!」

ベンチから掴んだ三機目は何か思うところがあるらしく、さっきの二機より丁寧に、スルーっと軽い感じに腕を振った。

確かにあれだけブンブンに腕を振り切ったら、空気抵抗がキツイだろう。

穏やかに飛び立った紙飛行機は、程良く風に乗り、上下左右に軽く揺れながら気持ち良く飛距離を伸ばす。

「今度は上手く風に乗ったのかな。」

「三機目だと学ぶよね。」

得意気に笑いながら吉沢さんがチラリと僕を見た。

紙飛行機は割と長いフライトを終えて、静かに着地した。

「一機目と二機目はノリが良過ぎて機体が軽かったんだよね。」

吉沢さんは無傷な三機目を眺めながら、すっきりとした感じで言った。



あのから10年の月日が経った。

時々起こる軽い乱気流な出来事を越えて、僕たちは一緒に過ごしている。

あの時の「僕のラブレター紙飛行機」みたいに、彼女と一緒にいる時間の飛距離は伸びるだろう。

もっと長く、ずっと無傷のまま。


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