On sale bar

アメリカというのはつくづく面白い国だと思う。

特許が認められる要件に新規性(novelty、anticipation)という基準がある。この中にOn sale barというものがある。訳しにくいが販売行為による新規性喪失というもの。

アメリカは2013年に先発明主義から先発表優先先願主義に移行していて、実質的には他の国の先願主義(最初に出願した人が特許をとる)に移行したことになっている。原則としては先願は先に出願したかどうかで決まり、新規性は、原則として公知になっているかどうかできまる。公知は通常は秘密保持義務のない人が知っているかどうかというもの。米国以外では疑義をはさむ余地はないと通常考えられている。

しかしながら、2019年1月にHelsinn Therapeutics事件という最高裁判例がでて、On Saleによる新規性喪失は、秘密保持契約の下であっても新規性喪失するという判断が出たものである。他の国では、新規性が喪失したという判断はされることはないものである。

他方で、米国最高裁は、この点について、法改正前の判例をもとに、秘密保持契約の下であっても新規性喪失すると判断したのである。法改正時に米国議会がOn saleに関連する文言を改正していないから判例の改正に影響を与えることはないという判断を下したものであった。

https://www.supremecourt.gov/opinions/18pdf/17-1229_2co3.pdf

最近は、薬機法改正もあって製薬会社でも分業していて、On Saleが問題になることがある。契約書の条項の解釈にもよるが、秘密保持のもとでの取引も気を付けなければならない時代になった。


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