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社会人一年目の最終日にスタートアップへの転職を決めた話

5月1日にキャディ株式会社に第二新卒として入社した前田と申します。入社エントリーとして、学生時代から社会人に至るまでを振り返りながら、なぜ社会人2年目でキャディに転職したかを共有できればと思っています。

学生時代

物心がついたころから乗り物、特に自動車が大好きだった私にとって、日本のものづくりというのは常に憧れの存在でした。幼少期をフィリピンのマニラで過ごす中で、いかに日本の製品が人々の生活を支えているかを目の当たりにして、一日本人としてとても嬉しく、日本の製造業というものに尊敬の念を抱くきっかけになりました。

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一方で日本に帰ってくると、様々なメディアを通じて「日本の製造業の衰退」という言説を目にする機会が多くありました。日本のお家芸でもあり最大の産業でもある製造業が「終わったもの」として多くの人に捉えられている事実に、私は一学生として悔しく、将来は日本の製造業を支えられるような人間になりたいと思うようになりました。

そんな学生が大学受験を控えていたころのこと、勉強のモチベーションを維持するために大学で何をしたいかなと考えていた折、ネットでたまたま「学生フォーミュラ」という競技に出会います。大学生が自ら構想したフォーミュラスタイルのレーシングマシンを設計・製作し、その性能と企画力、技術力などを総合的に競う。将来ものづくりに携わりたいと思っていた私にとって、これ以上魅力的な活動はありませんでした。大学に入ったら学生フォーミュラをやる。それをモチベーションに受験勉強に励みました。

学生フォーミュラ

大学受験を終え、いざ新歓に参加すると、入りたかった学生フォーミュラチームの姿がありませんでした。なぜかわからずサイトを辿りチームのメールアドレスに連絡してみると、先輩から人数不足によりチームが活動休止に陥っていることを知りました。実際活動場所に行ってみるとそこはゴミの山。ひとけはなく過去のマシンは埃をかぶっていました。

想像もしていなかった状況を前に学生フォーミュラを諦めることも考えましたが、活動していないならしていないで自分たちで復活させよう!ということで、ネジの回し方も知らない新入生4人でチームを復活させる、ある意味無謀な挑戦を始めました。

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当初は4ヶ年計画で上位進出をするという目標を掲げ、とにかくがむしゃらに大会に向けて車両の製作を行いましたが、プロジェクトは全くスケジュール通りに進まず、メンバーの士気は下り、初年度の大会は未完成の車両を大会に持ち込むという散々な結果でした。

なぜメンバーが活動に対して本気で打ち込んでくれないのかと悩んでいた時、OBの方から「君たちは何のために学生フォーミュラをやっているのか?」という問いかけをされ、答えに詰まったことがありました。幼少期から自動車が好きで、大学に入ったら学生フォーミュラをやると決めていた私にとって、活動に対するモチベーションは無条件に肯定されるものでしたが、他のメンバーにもまたそれぞれ異なる動機があり、その共通解たるチームとしての全体目標が欠如していることに気付かされました。その時、「根拠のある明瞭な活動コンセプトをもって、全員で同じ意志を共有する」ことの重要性を身に染みて理解したのです。

翌年のプロジェクトから、メンバー全員と2ヶ月にわたり議論しを重ね、チーム独自の活動コンセプトと目標を決め、各々がそれを内面化することに力を注ぎました。「同じ頂点を目指すにも、他人と同じではつまらない。富士の頂に登るにも、地道に歩くのではなく、ロケットを作って飛べばどうか。」独自の勝ち方を目指すことを活動コンセプトとして定め、唯一無二のパッケージングのマシンで開発を進めました。

結果チームチームの結束力は高まり、4年生の大会ではチーム休止以来初となる動的種目進出を果たしました。惜しくも最後トラブルでリタイアしましたが、自分たちで作り上げた車のステアリングを握って大会の舞台で走れたことは、人生の中でも最も幸せな瞬間の一つでした。

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新卒就活とファーストキャリア

新卒就活では、日本の製造業を支えられる人間になりたいという思いをベースに、担当部品や担当サプライヤーの競争No.1実現に向け原価低減をプロデュースするという調達・購買職に魅力を感じ、様々なメーカーの調達・購買職にターゲットを絞って活動しました。

そして縁あってトヨタ自動車の調達部門に就職します。トヨタ自動車の調達職を選んだのは、日本で最も大きい売上高を誇り、日本の製造業に広範囲に貢献できること、そして日本一のメーカーの調達としてのベストプラクティスを経験したいという思いがあったからでした。

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入社後は主にワイヤーハーネスという車の血管・神経に相当する部品の発注・値決め・発注/原価低減戦略の立案を行いました。1年目にもかかわらず様々な企画を担当させていただき、非常に濃い経験をした一方で、もやもやするような違和感も覚えるようになりました。それは、明確な力の非対称性がある関係の中の当事者として全体最適を図ることの難しさです。

日本型サプライヤーシステム

日本型サプライヤーシステムは、情報技術が発達する以前の高度経済成長期の中で、当時としては「究極の取引コスト低減策」として生まれた構造です。国内外に様々なサプライヤーが散在する中で、自社が欲しい製品を最も品質良く・安く・長期安定的に供給できる最適なサプライヤーを都度市場から見つけてくるのは取引コストが増大し極めて困難です。

そうした取引コストを抑える代わりに、①少数だが複数のサプライヤーと付き合い育成・競合させ、②長期継続的に取引を行いながら③一括外注をするのが日本型サプライヤーシステムの特徴です。そしてこのシステムは、日本の製造業の世界的な地位を押し上げたのと同時に、少なからず歪みも生み出しているのです。日本型サプライヤーシステムの特徴をひとつずつ見ていくと、なぜこうしたシステムが歴史的に成功を収めてきたかが分かります。

①少数サプライヤー間の能力構築競争

日本の製造業における調達ではほとんどの場合競争相手がおり、管理された競合を実施しています。サプライヤーは見積もりの段階で仕様とともに、最終製品の目標販売価格から逆算された部品の目標価格を受け取ります。その目標価格は以前の当該部品よりも低く設定されるため、サプライヤーはコストを削減しなければ、そもそも競合に負けて契約を取れない上に、契約を取れたとしても損失を出すことになります。そのためサプライヤーはVEやVAに真剣に取り組み、顧客固有の関係特定的投資を行いながら熾烈な競争を繰り広げるようになります。こうした少数のサプライヤーによる能力構築競争は大幅なコスト削減につながり、日本の製造業の競争力を大きく引き上げてきました。

②長期継続的取引

上でも述べたように、サプライヤーは顧客の特定のニーズを理解するために、顧客固有の関係特定的投資を行う必要があります。一方で顧客側からしても、サプライヤーの評価には大きなコストと時間がかかります。ようするにどちらの当事者も取引固有の特定的投資を行わなければならないのです。その代わり、一度契約を結べば、その契約は製品寿命まで継続する慣行があり、取引は長期継続的となる傾向があります。これにより顧客とサプライヤーは一蓮托生となり、協調的な関係を築いてきました。

③一括外注

顧客はサプライヤーに対し、製品供給に関連する活動(開発・設備投資・部品加工・アッシー・検査など)を一括して外注する場合がほとんどです。これにより顧客は取引コストを大幅に抑えることができるとともに、特定の部品やシステムの設計・製造に関してより多くの専門知識を有するサプライヤーが生み出すまとめ能力やコストダウン・品質向上(=いわゆる「競争力」)の恩恵を受けることができます。

しかし、こうしたシステムに課題があることもまた事実です。

①少数サプライヤー間の能力構築競争

上で見てきたように、製品の開発目標や節目は親企業によって設定され統制される仕組みとなっています。サプライヤーはこれに合わせて、親企業に従属して設計・生産活動を行わなければなりません。いくら技術力のあるサプライヤーであったとしても、最大の顧客に平均して市場の60%以上を依存していることからわかるように、サプライヤーは多重階層構造に組み込まれているのです。この階層構造に組み込まれたら、サプライヤーは階層制の階段を上る努力をしなければなりません。階段を登れば、製品開発の内部情報に接したり、有利な契約機会に恵まれたりすることもありますが、それに伴って親企業への依存はより一層高まり、製品開発過程に開発能力を従属させ、無理な要求にも柔軟に対応しなければならなくなるのです。そして、その要求に応えることができなければ、「競争力のない」サプライヤーとしての評価が下り、仕事を失うことにつながりかねません。

②長期継続的取引

日本の長期継続取引において重要なことは、製品開発に投資された費用が開発費という形で顧客から直接支払われることは基本的にないということです。サプライヤーは製品のポートフォリオの中で、個々の製品というよりも長期的に築き上げてきた関係全体で利益をあげれば良いということになります。そこに、顧客からの無理が通ってしまいやすい関係が生じるのです。

③一括外注

一括して外注をすることにより、顧客とサプライヤーの間での取引コストは抑えることができたとしても、結局は誰かがその取引コストを負わなければなりません。しかし一括外注で苦手領域を受注したサプライヤーは外注する以外に手段がなく、そうした製品は二次三次とTierを降っていき、最終的に負えなかった取引コストは分厚い中間コストとして跳ね返ってくるのです。
このような相互依存関係・無理が通る長期継続的関係・取引コストのTier下位への負担が、既存の日本型サプライヤーシステムでは避けられないものとなってしまっているのです。そしてそれは、市場関係でありながら企業間に非対称な関係を形成しているからこそ生じるものなのです。

キャディとの出会い

調達部門での仕事は、こうした構造の中で、会社とサプライヤーの間で板挟みになる負荷の大きいゼロサムゲームでした。よりフラットな関係で顧客とサプライヤーが全体最適を目指し、日本の製造業を底上げする仕事はできないものなのか。そう悶々としていた時、たまたまキャディの記事をネット上で見つけます。

会社として重視する価値観は「至誠」。「初めて取引する会社は品質が不安」「あとで値引きを求められるのでは」。相互不信が新たな取引を難しくし、競争力低下を招いたと考える。「無益な駆け引きをしない。テクノロジーを正直なビジネスに役立てる」と訴える。
「町工場の技術に光 脱・下請けへ基盤づくり」『日本経済新聞』、2021年2月16日

これを読んでハッとしました、これが自分のやりたいことなんだなと。高校生の時に学生フォーミュラと出会った時と同じ感覚です。

よく「キャディって今流行りの顧客とサプライヤーをただマッチングさせるだけのサービスなんでしょ?」と聞かれますが、実際には異なります。確かにマッチング機能はプロダクトの重要な要素の一つですが、キャディのプロダクトの本質は「製造業の経営課題のテクノロジーによる解決」です。

今まで相見積もりによって顧客側もサプライヤー側も受発注の事務処理で忙殺されていたのを、キャディに一式任せることによってベストな取引先とつなぎ、取引上のリスクを分散しながら適切な価格で買えるようにする。調達担当者はより付加価値の高い業務に集中できる上に、一式を任せることによって、あらゆる顧客から発注があった類似部品をまとめてサプライパートナーで製造することで大幅なコストダウンを図ることができる。サプライパートナーにとっても、様々な顧客からの発注を受けることによって一社依存を脱却し、自社の得意とする領域の製品を毎月安定した量受注することができる。これらは全て、あらゆる顧客との取引を持ちながら、サプライパートナーの工程を深く理解しているキャディでしか実現できないことなのです。

そしてもう一つ、キャディへの転職を後押ししたのが、Mission・Value・Cultureの組織への深い浸透です。キャディは数年間で急成長を遂げているスタートアップ企業ですが、これほどまでに構成員のベクトルが揃っている会社組織を過去に見たことも聞いたこともありませんでした。学生フォーミュラでチームを結束させることがどれだけ難しいことかを経験し、全員で同じ意志を共有することの重要性を理解した自分にとって、キャディはまさにそれを実行しているロールモデルでした。キャディのカルチャーの中でも最も好きな言葉は「ムーンショットで飛躍する」。頂に登るのにロケットを作って飛ぼうとしてた学生時代の思いと通ずるものがあり、純粋に心惹かれました。気づけば、キャディの採用に応募していた自分がいました。そして社会人一年目の最終日、縁あってキャディに入社することを決めました。

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新卒・第二新卒の選択肢としてのキャディ

入社して1ヶ月が経ち、当初の不安は嘘のように、転職を後悔したことは一度もありません。とはいえ、新卒や第二新卒としてキャディに興味を持ってくださっている方にとって、20代前半の構成比率が低いスタートアップに飛び込むことはとても勇気がいるということは非常によく理解できます。キャディの中でもあまり例がない第二新卒としての大手からの転職を経験した私でもしお力になれることがあれば、ぜひコメントでもTwitterのDMでも構いませんのでご連絡ください!


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