東京司法書士会とSDGsについて

第1 SDGsとは
 SDGsとは、2016年から2030年までの15年間で世界が達成すべき目標(ゴール)を表したもので、17の目標が設定されている。また、各目標でその対象が分かれており、全部で169のターゲットに設定が細分化されている。
 SDGsの特徴は、国家が取り組むべき目標だけでなく、先進国に住む私たち個人や企業・団体が取り組むべき目標も設定されているところにある。
 国連加盟国である日本は、2021年に東京オリンピック、そして2025年に大阪万博と世界中から注目されるビッグイベントを控え、SDGsの目標を達成するための取組みが国内外から注目されている。このようなSDGsへの取組みが動き始めているなか、法律事務の専門家として様々な社会的責任を負っている司法書士だからこそ、SDGsに取り組む必要がある。

第2 SDGsに取り組むには
 では、一般的にどのようにSDGsに取り組むか、以下のステップをふむ必要がある。
ステップ1 SDGsを理解する。
 大きな組織になればなるほど、一部の役員だけがSDGsを理解しトップダウンするのではなく、多くのメンバー(構成員)にSDGsを理解してもらうことが必要である。
 また、言葉としてSDGsを知っているだけではSDGsは浸透していかない。SDGsの本質を理解すること、自分たちがSDGsに取り組むことで社会にどのように貢献できるのかというビジョンを理解することが重要となってくる。

ステップ2 これまでの取り組みをSDGsで考える
 SDGsのために全く新しいことを始めるのは大変である。しかし、これまで当たり前のようにやってきた取り組みが、実はSDGsにつながっていることも珍しくない。そこで、今までの取り組みをSDGsにつながっているかを考える必要がある。

ステップ3 取り組みを発信する
 どれだけ素晴らしい取り組みをしていても、その取り組みを知ってもらわなければ広がってはいかない。SDGsとの関わりを、どのような事業活動がどの目標に貢献しているのかということを分かりやすくまとめて発信することが大切である。

第3 東京司法書士会のSDGs
 以上のことを踏まえた上で、東京司法書士会ではこれまで取り組んできた様々な取組みがSDGsの各目標につながるか検討し、この場を借りて発信する。
① 経済的に困窮する方への支援
 自己破産手続や生活保護申請の同行支援、社会的弱者の法的支援などの活動は、目標1(貧困をなくそう)に関係してくる。特にターゲットの1.2(貧困状態にある人の割合を半減させる)や1.3(貧困層・脆弱層の人々を保護する)、1.4(基礎的サービスへのアクセス、財産の所有・管理の権利、金融サービスや経済的資源の平等な権利を確保する)が関係してくる。
②法教育、市民公開講座
 目標4(質の高い教育をみんなに)に関係してくる。質の高い教育は、人に健康で持続可能な生活を送る能力を与え、貧困の連鎖を断ち切る力を与えることに繋がる。
③空き家問題
 目標11(住み続けられるまちづくりを)に関係してくる。空き家は非常に大きな問題となってきており、例えば、空き家を利活用することによって廃棄されなくなり、解体されなくなれば、目標12(つくる責任つかう責任)で廃棄物を減らす目標にも関係してくる。
 また、空き家問題において行政と協定書を締結することは、目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)にも関係してくる。
④司法過疎解消、総合相談センター設置、民事法律扶助、災害対策、セクシャルマイノリティの方への支援
 目標16(平和と公正をすべての人に)に関係している。ゴール16では、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて平等で暴力のない社会を作ることがゴールとして設定され、またターゲット16.3では、司法への平等なアクセスを提供することが設定されており、司法書士の多くの事業が関係してくる。
⑤事業承継
 事業が承継されなければ、失業で収入が無くなり、それが貧困に繋がるならば、目標1の貧困に関係してくる。また、売上がある会社の後継者不足での廃業には、街の経済や従業員の働きがいにも影響を与えるため、目標8の働きがいや経済成長にも関係してくる。また、会社が廃業したことで、社屋や倉庫、工場などが取り壊されてしまうならば、大量の廃棄物が発生することになるため、目標12のつくる責任つかう責任にも関係してくる。

第4 最後に
 これらの取り組みは、地球規模の問題解決につながるだけでなく、司法書士はこれからどのように社会に貢献していくのかという司法書士全体のあり方の方向性を示すものになる。人類が目指すべきSDGsの目標を参考に、司法書士の一人一人がまずはSDGsを理解し、考え、そして自分のできるところから取り組んでみて欲しいと考える。

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