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オーケストラ型組織とジャズ・コンボ型組織の違いから学ぶVUCA時代の組織形態

オーケストラは【指揮者】⇒【コンサートマスター】⇒【各演奏者】という指揮系統を主軸に、楽譜通りの演奏をして音楽を創造しています。

【指揮者】が楽譜を理解(各パートの役割)して、そこに自らの解釈も加えて、この組織を動かしていきます。

【コンサートマスター】は、各演奏者を統率して、指揮者の意図を具現化する役割をもった「第2の指揮者」です。

オーケストラ型組織の特徴として、まず整理しておかなければならない3点があります。

① 個々の楽器が多様で、それぞれの演奏者は自律的である

楽器は仕組みが違っているので、音域や音色も異なり、音が出てくるタイミングも違います。そこで各部署・各個人の「分業と調整」という組織編制の基本原理が働きます。

② 【指揮者】は演奏はしないが、それぞれの楽器が最高の演奏に貢献できるように指示する

【指揮者】は、プレイング・マネージャーではないので、経営陣と考えられます。【コンサートマスター】がプレイングマネージャー(中間管理職)と考えてもいいかもしれません。

③ 【演奏者】は、【指揮者】の意図を汲み取りながら、楽譜という設計図通りの演奏を求められる

各部署における各自の役割・目的・優先順位は楽譜通りに行うことが重要。
これは、会社のマニュアルに基づいた業務遂行プロセスに似ていると考えられます。


オーケストラ型組織は、日本の企業に多い『ピラミッド型組織』ほど強い縦の階層性は備えていませんが、
① 各演奏者(会社で言えば構成員)の分業が徹底していること 
② 指揮者(会社で言えば経営幹部)の意志が貫徹されること
という2点で、ピラミッド型の会社組織と極めて近い形態であると言えます。

VUCA時代と言われ、経営環境の激変期で、不確実性がますます高まっている時代において、楽譜通りの演奏を【指揮者】に意向に従って行うというオーケストラ型組織での破壊的イノベーションの創造は、あまり期待できません。

この組織形態は、上図のような「官僚制組織」の指示命令系統に似た流れで、成長が右肩上がりの高成長期に機能するビジネス組織体制と考えられます。

オーケストラが目指すべき目標は、楽譜に書かれた作曲家の意図を、【指揮者】なりの解釈を加えた上で、演奏者全員で「具現化」とすることでしょう。

聴衆を感動させるという点は同じですが、ジャズ・コンボの目標設定は、全く違っています。

各プレーヤーの個性や創造性に基づくインプロヴィゼーション(即興演奏)によって、既存の音楽とは違ったモノを創造していくことです。

ジャズの即興演奏における聴衆の期待感は、一般的に予測不可能であると言えます。
なぜなら、ジャズの即興演奏は、プレーヤーたちがその場で自由に演奏するものであり、予め決められた曲の構成やアレンジに縛られることがないためです。

プレーヤーが、自分のアイデアをリアルタイムで形にしていく過程は、まさに生きている芸術であり、聴衆にとっては、想定外の展開や緊張感とスリルを楽しむことができます。

ジャズのプレーヤーは、自分の腕を磨くことも兼ねて『ジャム・セッション』という異業種他流試合に挑戦します。
この『ジャム・セッション』には、一定程度の進行はあるものの、各プレーヤーのインプロヴィゼーション(即興演奏)合戦ですので、一定レベル以上の音楽理論をマスターしていることと、他プレーヤーとの音楽を通じたコミュニケーション能力(ジャズの世界では『インタープレイ』と言います。)が求められます。

オーケストラ型組織は、目標が明確になっている『事業部制組織』に当てはまり、ジャズ・コンボ型組織は、具体性のない漠然とした目標をもつ研究開発などの『プロジェクト・チーム』に適していると考えられます。

「ジャズには名演あって名曲なし」というジャズ・ファンなら知っている名言があります。
これは名曲が存在しないと否定しているのではなくて、例えば、スタンダード曲という同じ土俵で、各自の個性を発揮して、新しい解釈を加えて「新スタンダード曲」を創造されることもあり、常に変化に挑戦していることを意味しています。

ジャズ・コンボ型組織において必要のは「マルチウェイ」なコミュニケーションです。

多様な個性を持ったメンバーを集めて、「建設的な意見の対立」「創造的な摩擦」を作り出す環境に置くことで、チームワークとしてのイノベーション創出が実現できる可能性が高い組織形態と考えられます。

このジャズ・コンボ型組織の肝は『即興力』の発揮と、言葉を超えたコミュニケーション能力です。


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