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乳頭温泉旅行記

家に篭り、暇があれば堤防を走るだけの生活が2ヶ月続き(これはこれでランニングが速くなったし自炊スキルも上がったのでよかったが)、耐えきれずに一人旅に出てきた。行き先は乳頭温泉。秘湯・名湯として名高い秋田の温泉だ。

2月13日の地震の影響で東北新幹線が不通になっており、行けるかどうか危ぶまれたが、ちょうどキャンセル料が発生する前に運転再開見込みが発表され、時間はかかるが、行くことができるようになった。ツイてる。今回の旅は台本執筆旅行でもあるので、時間がかかるのは全く問題ない、むしろ書く時間が増えてありがたいくらいだ。結果として書けたかは、私がこのnoteを書いていることから察してほしい。書けてなきゃこんなこと書いてられないからね。

1日目

家を出る時間が普段仕事に行く時と全く変わらないのが今回の行程の唯一の問題点である。どうしても仕事のことを意識してしまう。つい、今日は仕事なのではないか、と不安になり何度も予定表を見返してしまう。大宮までに気づけば仕事場に行き先を変えればいいだけなので、まだやり直しはきくのだ。しかし呆気なく東北新幹線は大宮を発車。後戻りはできなくなる。あとは職場から電話がかかってこないことを祈るしかない。かかってきたところでその時点ではすでに300km北方にいるのでもはやどうしようもないのだが。

どうしようも無くなったので気持ちを切り替え台本を書き始める。別に面白くないのでここは割愛するが、目論見通り執筆は大変捗った。おかげさまで通常より1時間ほど多くかかる大宮〜仙台間もその後も、全く長く感じることなくあっという間に田沢湖駅に着いた。時刻は11時過ぎ。雪景色が広がっておりテンションが上がる。台本執筆という目的を忘れそうになる。

乳頭温泉郷へはここからさらにバスに50分ほどゆられる必要がある。そしてバスの時間は1時間後。それに乳頭温泉郷には飲食店は存在しない。なので田沢湖駅前で昼食を取ることにする。事前のリサーチによると、田沢湖駅前には「カツカレー納豆ラーメン」を出す店や「辛味つけそば」を出す店があるらしく、思った以上に味に関しては保守的ではなさそうだった。そんななか今回選んだのは、「そば五郎」という店がやっている「ラーメン五郎」。なんとここにきて二郎インスパイア系のラーメンだという。それが毎月22日〜24日の3日間のみ提供されるというではないか。二郎系には群馬で痛い思い出のある私だが、麺の量なんかを見ているといける気がする。しかしなんで蕎麦屋で二郎系なんだ。多分名前が五郎で似てたから、というそれだけだろう。

田沢湖駅前には人影はほとんどなかったが店内はほぼ満席であった。地方あるあるだが、外に人はいないがいるところにはいるものである。屋外にも人がうじゃうじゃいるのなんて東京くらいのものだ。

さて、程なく着席ののち、注文方法など他の客の様子を観察したのち、ラーメン五郎、並盛を注文。二郎系なのにニンニク入れてもいいですか?と確認されるくらいで優しいラーメンであることを予感させる。その辺にあった雑誌の、ヒロシのソロキャンプ特集を眺めているうちにラーメンが到着。量といい味といいやさしい。二郎にはまってない人向けの二郎という感じで、二郎に馴染みのない私にはとてもいい塩梅のラーメンであった。

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その後、宿用の酒を買い込み(部屋で飲む用の瓶の日本酒と、チャンスがあるかわからないが露天風呂で飲む用のワンカップと。空振り覚悟だ)、バスに乗り込む。えらく年季の入ったバスが来た。秘湯に向かうにはふさわしいバスだ。ただでさえ年代物なのに後輪にチェーンを巻いてるものだから全然スピードもあがらず、ガチャガチャとゆっくりとバスは進んでいく。写真は誰かが撮った風自撮り。

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途中バスは十和田湖畔に寄る。道中も全く人気はなかったが観光地であるはずの十和田湖ですら全く人気がない。バス停のあるレストハウスもまるで廃虚であった。今は冬だからかもしれないが、にしたって酷すぎるだろう。観光地がこうなってしまっているのを見るのは、なかなか辛いものがある。まあ、十和田湖は霧に包まれており雰囲気はあるものの何が何だかわからない状態ではあったのだが。十和田湖では1組だけ乗ってきて、逆に何をしていたのか聞きたくなってしまった。

そしてバスはさらに坂を登り山奥を目指していく。こんなところでもしっかり除雪がされているのが感動的である。日本のインフラってすごい。一日何台の車が通り、除雪にどれだけの費用がかかる、ということを考えると割に合わないことは明白に見えるのだが、かといって除雪をしないわけにはいかないことも明白で、その辺りの短期的な損得でなく物事を判断するのは難しいな、などと考えているうちに宿最寄りのバス停に着いた。

自動音声でバス停の名前が聞こえたので反射的にボタンを押し、反射的に運賃を支払ってバスを降りたはいいものの目の前には雪の壁が広がっていた。一瞬やっちまったかと思ったが、落ち着いて視線を後方上の方にやると、雪の向こうに何やら建物らしきものが見える。一安心して宿に向かいチェックインし、湯めぐり帖を購入する。

ここで少し乳頭温泉郷について説明しておくと、乳頭温泉郷は田沢湖からさらに山奥に入ったところにある、7つのそれぞれ泉質の違った温泉宿からなる温泉地だ。本当に山深いところにあり、温泉宿一軒一軒がそれぞれ秘湯、という趣である(休暇村だけは少し雰囲気が違うか)。ここには宿泊者限定で、7軒の温泉を回れる湯めぐり帖というものがあり、今回はそれを使って回れる限り温泉を回ることにしたのだった。ちなみに冬は2軒休業しているのでいけるのは5軒だ。

一日目は、「妙の湯」と「鶴の湯」それから「休暇村」の温泉に入った。それぞれ泉質が違ってどこも良かったが、1番印象に残っているのは最も古い「鶴の湯」。いわゆる乳頭温泉といえばイメージする乳白色の露天風呂のある温泉だ。

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「妙の湯」は泉質の違う2つの湯があるのが良かったのと、宿の建物がきれい。「休暇村」は洗い場が充実しているのと露天風呂が広い。ただし露天風呂の出入り口が凍りついて開かなくなるので露天から戻るとき焦る。

温泉とビールを満喫して、宿で夕食(夕食は特筆すべき内容はなかった)そして部屋で台本書きをした。だいぶ早寝ではあったが、きちんと台本はかけた(と思う)。窓の外の雪を見ながら酒を飲みつつ、宿のあの謎の窓際のスペースで台本を書くのは、幸せな時間であった。

2日目

といいつつ、台本を書きながらも実は早々に寝てしまったので(布団で台本を書こうと思ったあたりから記憶がない)、自然翌日は早く5時前には目が覚めた。台本をまた書き、朝風呂。とにかく空気が冷たく温泉が温かい。露天風呂は通路がほぼ凍っていてツルツルである。なんて過酷な環境でなんて気持ちがいいんだ。朝からいい気持ちになって、朝食後チェックアウトギリギリまで台本をまた書く。変な話が出来上がった。

台本がかけたので、心置きなく湯巡りの続きをする。今日は「蟹場温泉」と「大蒲温泉」だ。蟹場温泉は宿の建物から雪道をさらに50mほど進んだところに混浴露天風呂がある。脱衣所も簡素で非常に野趣あふれる温泉だ。写真のこの奥が露天風呂。

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大蒲温泉は小学校を移築した旅館ということで非常に素朴な感じの宿であった。おかげで人もおらず貸し切りで温泉を楽しめた。

帰りは盛岡で途中下車、じゃじゃ麺を食べて帰ってきた。

気分が洗われるし、普通に台本進むからまたどっか行こうかな。今度は五島かな。

妄想旅行を一年越しで現実のものとしよう。


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