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女子アイスホッケー『スマイルジャパン』。北京で中国に「上海での借り」を返せ!

快勝です!
2/5に行われた北京オリンピック、女子アイスホッケー予選リーグB組の日本対デンマーク戦。
日本は第1ピリオド序盤から攻勢を見せ、10分46秒にブレイクアウェイからゴール前に走り込んだ山下光選手がキーパーの左側を巻き込むシュートで
先制。
※ブレイクアウェイ=攻撃の選手が抜け出し相手GKと1対1の状況になること

さらにその直後12分8秒には右サイドから抜け出した床秦留可選手がゴーリー(GK)の股間を抜くシュートで、待望のオリンピック初ゴール。

13分50秒には浮田留衣選手がこの大会2ゴール目となるシュートを決めて3-0とさらに突き放します。

序盤で大きくリードしたスマイルジャパンは、その後も3ゴールを加えて最終的には6-2で圧勝!
連勝でB組1位の座をキープしました。本当に攻撃が多彩で見ていて面白い試合だったと思います。

↑怒濤の6ゴール。試合のハイライト映像はこちら

日本対中国戦のポイントは?

そして今日2/6、日本は開催国の中国と対戦します。
B組1位での準々決勝進出を目指す日本にとっては絶対に落とせない中国戦。
中国の世界ランクは20位。日本の6位と比べるとかなり下で、ある程度勝ちが計算できる相手なのではという下馬評もありましたが、いざ大会が始まってみると中国は結構強い、ということが判明。簡単に勝てる相手ではない、ということが分かってきました。

中国の実力はアメリカNCAAの大学クラス!?

まあ、ぶっちゃけ言いますと、大会が始まるまでこの中国女子アイスホッケーチーム、本当に情報がなかった。
さらに大会が始まっても、帰化した関係で北米出身者の名前がまったく変わってる!!!
なので、マスコミ関係者は名前を照らし合わせその特定をする作業も結構大変(泣)。
たとえば中国の初戦でゴールを決めたMI Le選手ですが……。
実はカナダの大学を卒業したHannah Miller(ハンナ・ミラー)選手の中国名。
こりゃわかりません。

↓KRS VankeRaysというチームによる中国名→英文名の対象表。左がオリジナルで右が中国名。どんだけ名前変えてんねん(笑)

調べてみると、23人のメンバーのうち、中国本土の出身者がゴーリー(GK)1人、ディフェンス(DF)3人、フォワード(FW)2人の合計わずか6人。
カナダ出身が8人、アメリカが5人。
そんでもって出身地が書いていない「不明」が4人(笑)。
13人がアメリカ大学リーグ(NCAA)でプレーしたことがあるメンバーです。
※「EliteProspect」というアイスホッケー界では有名なサイトの情報を元としています。


カナダ&アメリカの3軍、NCAA大学リーグ出身者が目白押し。

NCAAの女子リーグはレベルが高いですが、そこから各国の代表メンバーが選ばれるので、カナダやアメリカの五輪メンバーよりは格下ということとはなりますが、結構上手な選手が揃っているのではないかと思います。
 
で、この北京までの4年間、中国女子アイスホッケーチームがどんな強化をしてきたか、ざっくりと説明すると……

①まず代表になれそうなメンバーを1チーム20名くらい、カナダの女子リーグに「新チーム(VankeRays)」を作って留学させる

②北京オリンピックの2年ちょい前に、中国本土の深圳(香港からすぐ近く)という街にスケートリンクを作ってチーム丸ごと移籍。助っ人(予定)選手も合流。

③コロナになってこりゃ大変、という状況になったら、ロシアに頼んでチーム丸ごとモスクワ郊外のMytishchiという街に移転。ロシアの女子リーグに入れてもらい、ガンガン公式戦で練習。

(そこらへん細かいところはうまいことやって)中国に住んで2年経ったので助っ人選手は中国人として登録OK。オリンピックへの準備はバッチリ☆ 

ということです。なんとまあ驚きの「オリンピックの後のことなんざ知ったこっちゃない」というダイナミックなチーム強化方法でしょう。

深圳KRS Vanke RaysのFacebookページがあった! 初戦のゴールシーンに対する反応はいいね22件、コメント7件(2/6 16:00時点)少なっ!

その是非は置いておくにしても、2014年のバンクーバーオリンピックに出場を果たしたものの、その後一気に世界のトップレベルから消えていた中国がオリンピックで惨敗を避けるためにはこんな方法をとるしかなかったのかなとも思います。

→(2/8追記)3軍と書きましたが、2軍レベルの強さでした。
   U-18カナダ代表経験のある選手の実力を見誤っていました。
   特にGKの周嘉鷹(キンバリー・レイチェル)はワールドクラス。
   見たて違い、お詫びします。ごめんなさい。

中国戦でスマイルジャパンが気を付けるべきことは?

さて、そんな「思ったより強かった」NCAA連合軍……もとい中国ですが、試合を見る限り個々のスキルレベルはまだ日本の方が上と感じます。
パスの精度、シュートの強さ、また伝統的に日本の強力な武器として備わっている試合終了のホイッスルが鳴るまで走り続けられるスタミナ面。そういった優位な部分の積み重ねが試合では徐々に効いてくると思います。

いっぽうで、ペナルティーには気を付けなければなりません。
パワープレーを相手に与えると、その時だけのスペシャルラインで中国は攻撃してくることとなり、(中国ユニ着てるけど)5人全員が帰化北米勢という状況も充分にあり得るわけです。体格差を生かしてのゴール前でのパワープレーには要注意でしょう。

日本はこの2試合、全体的にはディフェンス面はかなり安定してるので大量失点は考えられませんが、ミスからの失点には十分注意して対処すること。
第1ピリオド序盤はあまり無理をせず、相手の動きを肌感覚で見極めながら行けると判断したら一気にGOするという感じで戦うのが良いのかなと思います。

デンマーク戦では得点差を序盤に付けられたことで、ある程度ファースト&セカンドラインの出場時間を抑え、体力をキープすることができました。
また、守護神・藤本那菜選手も途中交代で少し休ませることができたので、フィジカル部分には不安はないと思います。

相手を恐れすぎずぶつかり、着実なプレーで得点を

最後に1つ。
準備段階で飯塚祐司監督は海外のチームの情報収集も担当していました。
新型コロナウィルス対策で直接話せる機会がほとんどなく、その件について確認することはできませんでしたが、監督は中国に対しても相当に分析を行い、中国選手の特徴はつかんでいるのではないかと思います。

ちょっとドキドキする展開になることもあるかも知れませんが、中国に対しスマイルジャパンは、その強みを生かしてしっかり勝ちきってくれるのではと期待しています。

写真・文/ポタやん(IcePressJapan編集長)

【北京オリンピック 女子アイスホッケー 放送予定】
スマイルジャパンの試合はすべて地上波で放送!
<予選リーグB組>
2月6日17:30- vs中国(TBS)
2月8日17:30- vsチェコ(NHK)

↓より詳しい『スマイルジャパン』&アイスホッケー情報は
 アイスプレスジャパンへ 


ポタやんです。基本的にはライター&編集者ですが、最近は映像制作も精力的に行っています。現在アイスホッケー&アイスクロス情報サイト「IcePressJapan」を運営中。冬スポーツ色々を盛り上げるべく頑張ります!