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ドラッグ大国UK

UKに移住してだいぶ経つけど、度肝を抜かれるようなことがあった。

先週日曜日のお昼すぎ、同じストリートの可愛い子ども達が庭先で遊ぶ声が聞こえてくる牧歌的な休日。音楽digりながらお茶飲みながら家でゆっくりしてたら'Fuuuuuuuuuuuuuuuck!' 阿鼻叫喚に近い男性の叫び声が聞こえてくる。声帯から流血しちゃうんじゃないか、っていうぐらいの大音量で叫び続ける声が聞こえる。'Fuck! Fuck! Fuuuuuck!' やまない大音量の声。こりゃシラフじゃないし尋常にやばい。

叫び声でパニックになる子ども達の甲高い悲鳴が聞こえた。だけど、子ども達の声は男の声とは逆の方向から聞こえる。子どもは多分大丈夫そう。やばい男がどんな感じか野次馬でストリートに出るか迷ったけど、10分経っても全然声が鳴り止まないからパジャマを脱いで服に着替えてすっぴんで肌寒い10月の外に出てみた。自分の庭から観察してたら300メートル向こうの建物の前で男が暴れてるみたいだけどよくわかんない。'Fuuuuuuuuuuck!'声はやまない。そうこうしてるうちに救急車と警察がきた。

近くへ行くのも怖いし、警察もきたからもういーや、と思いお家へ帰る。が、そこから40分間男の叫び声はやまず、 家が離れてるはいえなんか心臓あたりがずっとひやっとしてた。尋常じゃない狂気と叫び声が同じストリートに響き渡る。私は別に医者じゃないけどあれは多分やばいドラッグ。日本でいえば危険ドラッグだっけ。

イギリスはロイヤルファミリーや紅茶など貴族趣味の崇高な文化と結びつけられてもてはやす能天気な日本人多いけど、実際住めばここはドラッグ大国。肌感覚では日本の数倍クレイジーなジャンキーとホームレスが多い。映画Trainspotting (1996) は西ヨーロッパで治安最悪のグラスゴーが舞台だったけど、ああいう話はグラスゴーに限っておこってる話ではない。いや、もっと悪いことには20年経った今のイギリスのドラッグ市場には粗悪で強烈な危険ドラッグがいっぱい溢れて、摂取した人が公共の場で暴れまくる日曜日のディストピアみたいな光景は年々増えて来てるらしい。

イギリスでもアメリカでも南米でも同じトレンドは、ホームメイドで大量生産される粗悪なドラッグ。既存のルート(ヨーロッパならオランダ産)でつくられるドラッグなら、その分野の専門家が知識と経験に基づき流行に合わせてドラッグをデザインしてきた。そのルートならある程度の健康に配慮した上でのドラッグの快感を追求してる薬が多いけど、そんな薬には手が届かない貧乏人に売るために粗悪なホームメイドドラッグが大量生産され始めている現状がある。なんというかもう、どうしようもない。

貧乏人は今までの何倍も害の強い安いドラッグに手を出して死ぬまでそれをやり続ける。マンチェスターの95%ものホームレスは2年前非合法になった'Spice'という安価なドラッグに手を出してるし刑務所だってそれで溢れてる。路上生活者(rough sleepers)の苦痛を辛さを紛らわしてくれるSpiceは大麻の10倍作用強いといわれ身体中の感覚を鈍化させ、寒くてもなんでも平気になる。でもSpiceは同時に多くの人の命を奪うのだ。


2016年に非合法化されたSpiceは、お店で売ることを禁じられアンダーグラウンドの市場に流れ込んだ。その法的規制は最悪の流れを作り、今やどんな危険な成分が入って誰が作ったかも一切わからないようなまがいものが大量生産され、摂取者は簡単に気を失ったり時には死に至ることだってある。

この傾向はMDMAだって一緒で、安全なドッラグの使用を訴えてレイブでわざわざドラッグの成分を調べてくれる団体さえ出てきたぐらいだ。

こういう薬物は非合法でもちろん「やっちゃダメ」っていうのは大前提な訳だけど、それでも手に届くところに存在すれば使う人だって出てくるわけでそれはもう仕方のないこと。問題は、そういう人にちゃんとした知識とか広めることが圧倒的にできていないということ。2011年からUKのRough sleepers はの数は2倍に増えた。一方で政府は、こういう人を社会に復帰する手立てを厚くするよりも、ただただドラッグの厳罰化だけを進めて地下に潜らせ、結果として今までとは比べられないほどの健康的被害が彼らにふりかかっている。リベラルなヒューマニズムの政治的言説が世界的にunderdog になってるならそれはUKだって一緒。Brexitの先にあるダークサイドUKへようこそ。

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