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盗撮加害者家族の記 02 警察からの電話

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「旦那さんですね、今日盗撮で逮捕されておりまして」
「とう、さつ……?」

信じられない、という思いがまず浮かんだ。

「そ、れは……。どういった経緯だったんでしょうか」
普通に話そうとすればするほど声が震える。それでもなんとか状況を把握しなければと、無理やりに頭を働かせた。

警察から聞いた経緯はこうだった。

旦那は自宅の最寄り駅構内を行き来し、エレベーターに乗り込んだ。そのエレベーター内で女子高生のスカートの下にスマートフォンを差し込んで撮影をしていた所を、不審に思ったサラリーマンに取り押さえられたという。いわゆる現行犯、と言うやつだった。

それだけでも膝から崩れ落ちる思いだったのに、続けられた言葉に更に絶句した。

「それでですね、旦那さんの車が駅近くのコンビニに停めたままですので」
「車、ですか…?」
「そうです」

頭が真っ白になってくれればいいのに、と初めて思った。こんな状況でも私の頭は冷静に、冷酷に自体を分析出来てしまう。

旦那は普段から電車を使う人間ではなかった。なんなら交通系のプリペイドカードすら持っていない。仕事もプライベートも車移動。時折電車を使って一緒に出かける時は、毎回切符を買っていた。

そこから導かれる事実はひとつしかない。


旦那は盗撮のためだけに行動していたのだ。

そのあとの警察官の説明はあくまで事務的だった。

・今日は本人と会うことはもちろん、一切連絡を取ることが出来ないこと。
・明日警察官立ち会いの元、車の中を調べさせて欲しいこと。
・本日から48時間以内に警察から検察官へ事件が引き継がれる「検察官送致(送検)」が行われること。
・送致後に検察官が拘留が必要と判断した場合、裁判官に拘留請求が行われ、裁判官が拘留を決定すれば最大20日間(最短10日間)留置所での生活をすることになること。
・拘留中に検察官が起訴を決定すれば刑事裁判にかけられることになり、そうなれば2ヶ月程度身柄が拘束されること。

色々一度に説明されたものの、その場で何とか理解できたのは「旦那には会うことも、電話をすることも出来ない」という事実だけだった。

電話を切った直後は呆然としていたが、少しづつ『旦那が逮捕された』という動揺と恐怖で泣き崩れた。

どうしよう。どうしたらいいんだろう。

声を上げて泣きながら考えたが、身内が逮捕された時にどう対応するかなんて知るはずがない。泣きながら、ひとりで抱えていることが出来ずに実母に電話した。

母も義理の息子が逮捕されたと聞いて動揺していたが、すぐに向かうためそこを動くなと言ってくれた。

母を待つ時間が、酷く長く感じられた。
2人で暮らし始めた家。結婚したのはつい最近だが、この家に2人で越してきたのは4年前のことだ。

もちろん喧嘩をしたことも、別れようと思ったこともある。決して今まで何も無かった訳では無い。それでもひとつずつ乗り越えて、この人と一生を共にしようと結婚した。

自分が愛して選んだ人が逮捕された。

人生の中でこれ程辛いと思ったことは無かった。

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