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「自分の “働く” を拓くプロセス」が伝えたい細野真悟さん 【後編】

このnoteは、InterRace株式会社が、会社を辞めずに社外活動でキャリアを磨いている人たちのために、おもろい働き方をしているイチオシの人を連れてきて、話をしてもらうインタビュー記事です。

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細野真悟(ほそのしんご)さん
2000年に株式会社リクルートに入社。リクナビNEXT、リクルートエージェントなどのサービス企画担当を経て、リクナビNEXT編集長、執行役員を歴任。リクルートキャリアに籍を置きながらプロボノとして社外のスタートアップを支援するようになり、2017年から株式会社ローンディールのCSOとして参画。音楽SNSを手掛ける株式会社nana musicのCOOも務める。
強面ではない良い人。


#自分がやりたいこと × タスクじゃないこと

イベントで社外価値が体感できたこと。毛穴が開くフィードバックをもらったこと。2つのターニングポイントを経た細野さんが思うこと。

インタビュア 本業側の仕事には何か変化が起きました?
あるいは、自分の社外での価値を体感した時に、社内で何かしておいて良かったと思えることとかあります?

細野 本業でもっと強気になれるとかそういう変化は起きなかったなあ。
ああでも、自分がやる仕事のプロセスをナレッジ化しようっていう変化は起きて、それはオススメです。

僕自身「何を売るか」っていうのは、すーごく悩んだの。
だから本業で「上手くいったプロセスなどをナレッジ化しておき、社外で売れるようにしよう!」っていうのを意識するようになったんですよね。
常に売れる状態を作っておくっていうこと。

「依頼されたタスクをやる」という働き方は、時間も食われるし、クオリティ云々も言われる。依頼されたタスクを時間の限りやるスタイルになってしまう。それはやめたほうがいいです。

「自分が何が提供できるかを考え、相手側にその仕事を作り出す」
この感覚がすごく大事だと思っていて、それは実はマネージャーの仕事と同じだと思っています。仕事を作り出して、意味付けし、メンバーにアサインするっていうところが。
仕事を作っていく時に、どういう考え方で作っているかを意識すれば、その領域でのそのマネージャーのノウハウは、社外で売れます。

だからね、マネージャーじゃない人は、まずマネージャーになれ!成るくらいの結果を出せ!そしてそのプロセスを自分でノウハウにしろ!と言いたいです。

インタビュア それは社外を社内に置き換えても違和感がないですね。
社内でもノウハウをまとめてナレッジ化して次につなげて・・・って評価を受けることはありますもんね。
自分のエネルギーを割り振った時の価値観とか、何かをやらないと決めた理由とか、手触りのあるプロセスがありますよね。

細野 結局は本業でも副業でも、自分がやりたいって思うことに、自分なりのプロセスで関わらないと上手くいかないってことなんですよ。
「自分がやりたいこと × タスクじゃないこと」をやらないと。
「やりたくないこと × タスク」が一番つらい。

なので、そのためには色々なことやビジネスに関わって、人と会って、「こうありたいかどうか」っていうのを現物で確かめないと、と思っています。

#ゆるやかにつながり続ける

社員か社員じゃないかよりも、もっとコミットメントレベルでつながるような組織づくりが大切。オススメの方法、あります。

インタビュア 細野さんは一方で、いまはベンチャー側(nana)のCOOもやられてますが、採用などで気をつけていることはありますか?

細野 ベンチャーでいうと、圧倒的にマネージャーをやれる人が不足しています。
仕事を作れる人、それをきちんとメンバーにアサインできる人っていうのがすごく少なくて。結局経営者が直でやるしかなくなり・・・。
仕事を作り出せる人かどうかっていうのを見極めないといけない。

それで僕がやっているのは、「週1何時間で●万円」と決めて、入社前に副業で仕事をしてもらうという方法。

ある人は3ヶ月くらいの間に、2週に1回程度来てもらって、ディスカッションだけをしていました。
「いまこういう事業状態で、こういうことがあるんだけど、どうする?」みたいな。壁打ちをして飲みに行って終わる、という感じ。
結果、感覚のすりあわせはできているし、nanaの背景も既にわかっているから、ふとボールをポーンと投げても何か答えをくれる関係になった。

逆に僕ら側がその人に活躍してもらえる仕事を創り出せずに残念ながら退職される場合も、月額固定の業務委託料でnanaでの副業をお願いしています。

インタビュア その人はその人で副収入になるし、会社のことをよく知っているから、いざ何かに取り組む時は仕事が作り出せますね。

細野 そうそう。そんな人達が月何時間かでも居てくれるだけで、10分の1の稼働率でも、知らない新人より10倍くらい効果的なの。

ベンチャーは「入口も出口もゆるやかにして人とつながっている」というやり方をとることで、「社員か社員じゃないかではなく、コミットメントレベルでつながっている」という組織を作ることができます。

「たった月10時間の人にそんなにパワーは掛けられない」と思うかもしれないけど、それは逆。
いつもオフィスにいる社員は会社の状況は把握できるけど、月10時間しか関わらない人は、その状況を理解できないので、むしろ丁寧に状況をインプットし続けることが大事になります。

いま大企業にいる採用権限があるマネージャーも、そういう感覚で社員の力を使えばいいと思うなあ。
そういう感覚で働くマネージャーが増えることが、日本の労働力の最大活用ってことだと思うから、僕はそういうことを推進していきたい。

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#転職 ってなんですかね

転職や副業の概念も時代とともに変わってくる。いま大切なこととは。

インタビュア もうそうなると、転職って何ですか?って話ですね。

細野 「転職」っていう言葉はなくなるんじゃないかな...。
「1社しか勤めていない人が、全く違う1社に飛び込んで」みたいなことは、5年後くらいに「よくあんなことやってたね」って言われるに違いない(笑)

インタビュア 企業で働くっていう働き方自体が最近の働き方ですよね。もともとみんな自営業だったわけで。それがここ何十年か終身雇用とかが当たり前の中で生きてきたけど、そうじゃなくなったっていう話ですね。働き方改革とかも・・・。

細野 朝から夜遅くまで働いてってやってたのに、時短とか労働時間の制約かかってさ「どうすんのこの夜の時間?」みたいな(笑)
すでに抗えないわけでしょ。
暇だなってなって、残業できないから給料も減って。
企業もリスクが高くなるから失敗できなくなる。
チャレンジさせてくれる会社でチャレンジするしかないよね。

インタビュア それを、そもそもチャレンジしているベンチャーでチャレンジさせてもらうと?

細野 そう。チャンスを伺い、活かせるノウハウを提供し、PDCAを回して、自分のナレッジに磨きを掛けていく。
いまはそれが1社に居ながらも、副業とかの手段も考えられる時代になってきたっていうことです。

ただそれは「タスクの切り売りじゃない!」「タスクワークを受けてやることじゃない!」っていうことは、はっきり言い切らないと。
「なんかやらなくちゃ」って副業でタスクワークを始めたら疲弊して…なんていう人が増えると問題だと思っています。
それ違うよって言ってあげて整理して、やり方とかを見せてあげないと、みんなが外ばっかり見ながら「もっと自分のやれることやらなきゃ!」なんて思っちゃう社会がきてしまう。

インタビュア 転職っていうのは会社から会社に移るものではなくなるし、自分のやれることの棚卸しが必要になるということですけど、これから結構大変になりませんか?

細野 でも大変っていう感覚よりは、むしろ嬉しいんじゃないですかね。
僕も(前述の)10万円をもらった感覚の以前と以降で、働くとか稼ぐっていうことがガラッと変わったから。

「自分の価値が金銭的な対価として自分を食わしていく」っていう感覚を一回しして、その種類や提供しあえる企業が増えていくと、自分のナレッジの単価が上がっていく。
この面積を広げることだけをやるっていう感じがとても大切です。
それをやっていくと雇用不安というようなものはなくなるし、いまの自分の会社もその中の1個と考えると、むしろ安心感すら増すと思う。
だから大変さ以上に安心感が勝り、嬉しく思えるんじゃないかな。


#法人 という“人”と出会えているか

やっぱり大切なのは人と人とのつながり。「助けてあげたい!」と思える感覚が芽生えるような関係性をちゃんと作らないと、何事も始められない。

インタビュア 大変と言ったのは、新卒の時には1社で頑張ろうとどこかで思っていたのに、これからは自分の好きなことを棚卸しし、新しく関係性を作り・・・と進めていかなくてはならない。それは、やれたら楽しいことはわかるんですけど、そこまでの間には結構大きい川があるんだろうなと思って…。

細野 その大きな川を越えるためにも、ちょっとでもいいから普段から顔合わせしておくっていうことが大事だと思います。
「面談で見極める」とかそういう話じゃない。
「見極め」じゃなくて「すり合わせ」をやらないと!
結局、法人って、法のもとの“人”じゃないですか。その“人”との関係性がちゃんとあるかですよね。
「助けてあげたい!」と思える感覚が芽生える“人”と出会えてもいないのに、転職とか副業は始めないほうがいいと思います。

ワーカーとかタスクがやりたい人の場合は、棚卸しも関係性作りも必要ないかもしれないけど、チャレンジできるフィールドが欲しいなら、ポジションを変えるよりも先に、やり方を変えるほうが大事だと思います。

自分もそういう風にやってきたし、そういう人が増えるようにプロセスを伝えていきたいっていうのが、いま僕が考えて取り組んでいることですかね。

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編集後記
InterRaceの会議室で行われたインタービュー。終始楽しい雰囲気ながらも、自身の経験から得たいきいきと働くためのヒントには生身のリアリティーがあり、少しでも多くの人に伝えてあげたいという熱意に溢れていました。

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