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天塵からノクチルを見てみよう① 世界は理由を求める/僕らは?

こんにちは、とらいと名乗るものです。

ノクチルのシナリオイベント「天塵」、素晴らしかったですね。
なので感じたことを書きたくなったので、書きます。長くなります。

1.所感とあらすじ


端的に言って、濃密な内容でした。一言一句全てに意味があるように思わせてきて、読むのに時間がかかってしまった…シャニマスの考えることはシャニマスにしか分からないですけどね。

自分の中で美しく映ったのは、何よりエンディングコミュでした。そこまでに至る流れを大まかに述べると、

ノクチルに生放送番組の仕事が入る→番組内のライブに向けてレッスンに励む→制作側の意向で透のみが注目される演出となり、4人でしてきた努力があわや無駄になりかける→透を中心にノクチル4人が生放送ライブで「やらかす」→ネットでは批判的な声も見られ、実際に業界からも「干される」→なかなか仕事が貰えない中、花火大会の小さなステージ出演の営業が舞い込む

といったものでしたね。この間には示唆的な会話が非常に多く見られましたが、全て挙げていくと大変なことになるのでやめておきます(濃密すぎるんよ…)。

2.理由が必要な僕らは

花火大会のステージ出演について、Pから4人に本当に出演したいか、という問いかけがなされます。小規模なステージ。客観的に見れば「出る価値がない」かもしれない。「やりたくない」仕事なら出演は勧めない、と

それでもやるなら、「理由」が必要になる、と。

4人は考えます。話しあいます。

市川雛菜はにこやかに言います。「雛菜は行きたい」と。
福丸小糸は言います。「みんなを追いかけたい、みんなと一緒にアイドルを頑張りたい」と。
これに対して、3人に追いかけられる存在である浅倉透は言います。「わかんないや」「でもさ、行こうよ」「海は楽しそうだから」と。

最後に、樋口円香は「行く」と結論を出します。小糸に理由を聞かれますが、「理由がなくてもいいんじゃないか」と答えました。

透はこれに笑って、「いいじゃん」「行きたいから、行きたい」

(そして「透にできることで、私にできないことはない」という彼女の内に秘めたものが描かれ、これも非常に熱いのですが、ここでは省略します。)

この場面について、それまでのコミュの中で示唆的な部分が見られます。

第2話にて、授業中外に居る透を眺める雛菜に、教師から「大事なところだから聞け」と注意が飛びます。これに対して彼女は「『大事』っていうのはテストに出るから?」と聞き返します。試験に出るから大事、試験に出るから勉強するのは、本当に正しい理由なのでしょうか。勉強に限らず、自分の行動の理由を明確にすることは、非常に難しいものです
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第5話では、雛菜が透に「透先輩はなんでアイドルになったの?」と尋ねます(ここで訊くか…!)。もちろんきっかけはジャングルジムの一件に他ならないのですが、透は濁してしまいます。そして、自分たちに向けられたネットの批判を見て、「覚悟がないと」アイドルになったらダメなのかな、と問いかけが始まります。画像4

これらのシーンからは、この世の中、そしてアイドル業界においても同様に、自分の行動には「理由」や「条件」、「姿勢」といったものが時に理不尽に問われるということが表されていると感じます。
「なぜ、なんのためにアイドルをするのか」という問いに彼女たちはどう答えたのか。それは、「やりたいから、やりたい」という、一見して理由とは呼べない、けれども彼女たちの秘めた意思そのものでした。

3.花火/僕ら、それでも…

そして、来る花火大会のステージ。予想通りノクチルへの注目は全くと言っていいほどありません。お客さんは天に上る花火の輝きに夢中です。
始まる直前、透は「いいんだよね 今日は」「うちらがよければ」と他の3人に問います。そして曲が流れ、彼女たちは全力でパフォーマンスします。Pを除いて、ほとんど誰も見ていませんでした。
それでも、円香は「今の・・・いい感じだったから」と締めくくります。P、雛菜、小糸もこれに続きます。

そして、透の唐突な提案で海に入る4人。「花火じゃなくてこっち見ろー」と空に叫びます。発される言葉は観衆に対する愚痴みたいなものに、イラストや演技が相まって清涼感あふれるシーンになっています。画像3

幼少期に「海に行こう」という会話をしたことがありました。透は案の定覚えていません。でも、夏休みは終わらない感じがして苦手だったけど海に行くのが決まったら早かったよと呟き、こう続けます。画像2

「楽しいんだ、最近。こうしてるの」「ありがと」

「それしかないや、私。理由とか」

透のWINGコミュでは、長い人生とジャングルジムの頂上までたどり着かない夢という構図で話が進みます。アイドルになって、彼女の時計は一気に動き出しました。アイドルを続けたいと思う理由は、「こうしているのは楽しいから」なんだと彼女は結論付けます。アイドルにかける思いとか理屈とはまた違うレベルの話です。

本当に美しいシーンだと感じました。
Pも「なんて伝えればいいんだろうな」とこの美しさを目の当たりにし、絶対後悔させないと心の中で誓います。

自分が彼女たちのステージを美しいと感じた理由を敢えて述べるならば、たとえそれが世界に求められているものでなくても、理屈や条件を超えた自分たちの意思を表現した」ことへの羨望が全てです。彼女たちが羨ましくて仕方ないんです。理由が求められる世の中で、その理由が正しいかとかを抜きにして自分たちで肯定するんだから。

たとえアイドルとしての覚悟とか誰かを楽しませたいという目的でなくても、彼女たちの心の中には明確に自分たちの意思が芽生えていました。それがアイドルとして望ましいものなのかとか、そういうのは関係ありません。

色々彼女らに言いたいことは確かにありますよ。283の他ユニットに対してどうなんだ、とかやっぱりアイドルとしての目的がある方が正しいんじゃないか、とか。でもそんなの忘れるぐらいに美しかったんですよ、彼女たちのステージは。透明な美しさを見てしまったんです。

「これがノクチルだ!」というよりも、「今のノクチルにはこれが精一杯の結論だけど、これはこれで最高だ!」というニュアンスで受け取ることにしています。

最後は感情を吐露して終わってしまったのですが、天塵からノクチルを見るにあたってもう一つ述べたいことがあるので②にて書きたいと思います。

最後まで読んで頂いた方に感謝申し上げます。

とらい

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