見出し画像

災害リスクを予測する治水のDX 実装成果報告【株式会社ハイドロヴィーナス】

河川や水路のビッグデータを取得し、AI予測で災害を未然に防ぐため、株式会社ハイドロヴィーナスは治水DXのプロジェクトを立ち上げた。独自開発の流水発電技術を活かし、西条市の河川で実装検証。治水DXの結果を分析し、地域固有のAI学習モデルの構築に挑んだ本プロジェクトの成果や今後の取り組みについてレポートする。

▼株式会社ハイドロヴィーナスの事業内容はこちら▼

河川の現状を把握し、防災に役立てる実装

本プロジェクトの目的は、以下の3ステップにより治水に関する現状把握とリスク予測を防災に役立てること。

①    水の流れがあるあらゆる場所(電線・通信線のない山間部や下水を含む)でセンサネットワークを配備。(強みである水力発電技術を活かす)
②    クラウドにデータを集積し、天候情報、水門制御情報等とともにAIで解析、地域固有の学習モデルを構築する。
③    リスク予測、治水や灌漑のナビゲーションの提供。

今期は、そのうちのステップ①を以下のコンソーシアム体制で取り組んだ。

【プロジェクトリーダー】
株式会社ハイドロヴィーナス
⇒実装プロジェクトを指揮/発電計測系開発担当/利用定着支援/共有会の開催

【プロジェクトパートナー】
・西条市
⇒実証フィールド提供、利用者視点での情報交換

【プロジェクトメンバー】
・株式会社 アクシア
⇒機械系開発担当

・株式会社 ゴフェルテック
⇒通信系開発担当

・株式会社 Pionero
⇒ソフトウェア開発担当

・株式会社 センコー
⇒装置ボディの開発担当、コロナ禍移動制限時の現地対応

同社が独自開発した流水発電技術「ハイドロヴィーナス」の特性を活かした発電・計測・通信モジュールを西条市内の河川各所に設置し、河川データを集積。河川の氾濫や鉄砲水、土砂災害のリスク予測を把握し、避難の判断をする将来目標のために、山間部を含む未計測点からデータを取得し、リアルタイムモニタリングを可能とする。


センシングモジュール

今回の実装検証では、愛媛県及び西条市の河川管理部門などの協力のもと、西条市の中山川と加茂川にモジュール(流速センシングモジュール・水位センシングモジュール・LTE接続用のゲートウェイ)を設置。

さらに、独自で開発したソフトウェアでデータの解析を行った。

◼️ソフトウェアの機能
・6分ごとに水位と流速のデータを取得。
・気象庁から取得した雨雲と今後の降水の予測も見ることができる。
・現在の値の他に各点の時間変化履歴のグラフも見ることができる。(今後は学習に基づいた予測を実装予定)
・雨が降ってから実際に各点の水位や流速が変動するまでの時間差に注目した解析を開始している。

通信状況が整っていない山間部における実装の成果


電線や通信線のない山間部の河川はデータの取得や通信が難しいとされてきた。本プロジェクトではその壁に挑み、以下の成果を得ることができた。

【西条市からのニーズへの対応】
・設置装置からのデータ受信(ただし0.5m/s以上の流速)
・一つの対象河川に上流下流2点以上の計測点の実装
・マップ形式で流速、水位、降水を見られるソフトウェア実装
・急な増水(鉄砲水)以外のニーズ(土砂災害など)に向けた解析の実装

【技術的目標】
・必要箇所以外は電池を用いることなく、河川でのマイクロ水力電池を用いる(ただし、冬は極めて流れが少なく電池が必要だった)
・数分に1回程度の時間間隔でデータ取得
・橋から装置を係留する形で実装
・LTEが届かない場所でも通信(冬は流れが少なく電池が必要)
・反射水位計の実装
・全ての電力を水力で賄う(発電力を高める開発が必要)
・カメラの実装(発電力を高める開発が必要)
・流された場合の発見手段確立(蓄電とGPS搭載が必要)

データ解析から見えてきたこと

本プロジェクトで活用したデータは以下のとおり。

①モジュールにて自ら取得したもの
水位、流速

②外部から取得したもの(公開データ・市や県から提供されたデータ)
降水量、地下水の水位、土壌水分センサー

これらのデータを解析することにより、雨が降ってから増水までには時間がかかること、そしてその遅れは場所によって異なることが見えてきた。

上流では雨が降ってから18〜19時間後に増水が始まっている。つまり上流を観測するほど、より早くリスクを感知できる可能性が見えてきた。

県内の複数自治体も参加した勉強会

2023年3月22日、西条市の「SAIJO BASE」にて、周辺自治体向け勉強会及び関連事業者向け勉強会を実施。本プロジェクトの目的やセンシングモジュールの設置技術の説明、データ解析の実例紹介に加え、現場の課題、今後の展望などが話し合われた。その後、希望者には現地視察も行った。

【参加者】
リアル参加:西条市4名(危機管理課)、今治市4名(危機管理課)
オンライン参加:宇和島市2名(デジタル推進課、危機管理課)、協和テクノロジィズ1名
アーカイブ聴講:新居浜市3名(ICT戦略課)

協議の結果、今後の実装に向けた課題が見えてきた。

■今後の取り組みの指針
①河川に関する防災管理者に、リスク対応の判断材料を与える
②氾濫予測から非難指示を出すための学習予測システム作りに着手する

■データ取得・解析のポイント
①最終的に必要なのは「降水予測のもとで河川がいつ、どれくらい増水するか、氾濫リスクのある地域はどこか、沈静化するのはいつか」という情報
②上記を機械学習で実現するためには、災害の観測だけでなく、河川上流の日常の情報が重要

■分析対象となるデータ項目
①上流と下流での水位・流速の日常的増減
②計測点の分岐図上の結合関係
③降水情報(いつ・どこで・どれくらい)
④県が計測している土壌水分量
※単に現在の値を知るだけでなく、これらの相関を学習することが重要。

今回のプロジェクトを踏まえて、未来リスクを予測するためのデータ活用のガイドラインが示された。

河川の氾濫、鉄砲水などの災害がいつ、どのようにして発生するのか。本プロジェクトを通して、危険予測は日頃からのリアルタイム計測にかかっていること、特に山間部(上流)のデータ取得の重要性を改めて実感。
水流で自家発電できるセンシングモジュールが山間部の河川の問題を解決し、河川の氾濫や土砂災害の危険をいち早く察知する未来へ。西条市から愛媛県全域への展開を見据える本プロジェクトに、今後も期待していきたい。

■公式ホームページ
https://dx-ehime.jp/

\SNSもやっています/
■Instagram
https://www.instagram.com/tryangle_ehime/

■Facebook
https://www.facebook.com/tryangleehime

■Twitter
https://twitter.com/tryangle_ehime

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?