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人流が60倍に! AIカメラの解析が商店街の未来を変える【プロジェクトi実行委員会|実装報告】

シャッター街化が進む県内の商店街を活性化させるため、「今治銀座商店街」に24時間体制で人流カウント、滞留状況を可視化・分析できる「エッジAIカメラ」を導入した本プロジェクト。併せて、商店街で世代別のターゲットが異なるイベントを実施することで、平常時との人流の変化も解析した。若年層に向けたイベントでは、平常時に比べて人流が60倍となった地点も! ビッグデータを収集することで効率的な集客へ繋げる、商店街の新しい取り組みとその実装結果に迫る。

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商店街に人流・滞留状況を可視化する「エッジAIカメラ」設置

全国的に問題となっている、商店街のシャッター街化。ここ愛媛県内の商店街も同様で、なかでも東予の空き店舗率は約30%ともっとも高い。今治港と隣接している「今治銀座商店街」もそのひとつだ。「しまなみ海道」の開通に伴い、サイクリストなどの観光客数は増加した一方で、島しょ部から離発着するフェリーの数が減少。今治港の利用率の減少により、人流が少なくなってしまったことでテナントも減り、多くの店がシャッター状態になってしまっていた。

そんな状況の中で「今治銀座商店街」の組合長から「まずはシャッターを上げることが大事」との意見が上がった。今回の「プロジェクトi実行委員会」の取り組みは、商店街利用者のビッグデータを収集することで、より効率的な集客へ繋げる施策。この施策に「今治銀座商店街」組合も賛同し、実装先として連携することとなった。

人流を計測するため「今治銀座商店街」に計12箇所設置された「エッジAIカメラ」

今回のプロジェクトでは、まず「今治銀座商店街」各所に平常時・イベント開催時ごとに人流カウント、滞留状況を可視化・分析できる「エッジAIカメラ」を12台設置。「エッジAIカメラ」を活用することで、人数だけでなく、どういった属性(性別・年齢)の人が、どの時間帯に通っているのかなどを24時間体制で計測し、商店街の現状を見える化することができる。

さらに平常時とイベント時の人流変化を比較検証するため、「今治銀座商店街」にてターゲットの異なる下記3つのイベントを実施した。

10~30代の若年層向けイベント「WHITE ROOM(ホワイトルーム)」

開催日:2023年12月20日(水)~2024年1月8日(祝・月)
イベント概要:お化け屋敷の革命児「オバケン」とコラボし、「今治銀座商店街」本町通りの空き店舗を活用し、冬休み期間限定で実施した体験型謎解き脱出ゲーム。

ファミリー層向けイベント「キッズアソベンチャーワールド」

開催日:2023年11月23日(祝・木)
イベント概要:キッズボルダリング、ワークショップ、巨大段ボール迷路、フォレストアドベンチャーなど、子どもが楽しめるアクティビティを多数用意。

40代~60代向けイベント「ヨル街ラクザ」

開催日: 2024年2月24日(土)
イベンント概要:地元で活躍中のアーティストや出店者を招いて、夜の「今治銀座商店街」に賑わいが生まれるイベントを実施。人出の少ない「冬」「夜」に人流を作るため、こたつエリアなども設置された。

イベントを実施するごとに、人流に山型が見られた実装結果

「エッジAI」による、商店街全体の人流計測総数

イベントごとに、人流データを解析した結果が上記のグラフだ。1日当たりの平均計測値は5,500~6,000人程度で、重複計測を踏まえるとおおよそ4,000人前後と考えられる。データを見てみると、イベント実施ごとにグラフに山型ができているのが分かる。さらにプロジェクト実施前の商店街通行人数は1日平均が約1,830人だったことから、本事業で取り組んだイベントコンテンツが人流増加に繋がったことが分かる。

性別・年齢によるデモグラ測定結果。また曜日ごとの人流も計測

さらに年代別では40代以上が約65%を占めているものの、30代以下が35%いることが分かった。曜日別で見ると、平日では火曜の人通りが多く、全体を見ると日曜日が1番多いことが分かる。また、男女比で見ると男性の方が多いことが分かった(グラフ上のMは男性、Fは女性)。

イベントの前後で人流が60倍にも変化したエリア、本町通り

本町通り北西側(カメラ11、12)での計測結果

今回、「エッジAIカメラ」を商店街内の12箇所に設置したが、その中で特徴的なデータが取れたエリアを紹介する。
上記は本町通り北西側に設置された「エッジAIカメラ」による計測結果。このエリアは平常時100人前後という人通りの少ないエリアだが、「キッズアソベンチャーワールド」及び「WHITE ROOM」実施時には6,000人近くの人流となった。このことから、人通りの少ないエリアでも、誘致するコンテンツによっては人流の変化を生み出せるということが分かった。

次からは、実施した3つのイベントごとの実装結果を見ていこう。

10~30代の若年層向けイベント「WHITE ROOM」実装結果

「WHITE ROOM」来場者のアンケート結果

「WHITE ROOM」には体験者が700人程度訪れ、年代別では10~30代が多く、若年層に刺さるコンテンツ開発ができていたことが分かる。また来場者による内訳では、今治市内からが約35%、愛媛県内(今治市外)からが約44%、県外からが約20%訪れており、広いエリアからの集客に成功。

「イベントをどこで認知した?」という質問には、「口コミ」「SNS」と回答した人が全体の65%を占め、マーケティング的にも狙い通りの結果となった。さらに、体験者がSNSや口コミで情報を拡散してくれたことで、より多くの方の来場に繋がった。
この実装により、目的があれば遠方からでも「今治銀座商店街」への誘客に繋がることが実証された。

ファミリー層向けイベント「キッズアソベンチャーワールド」実装結果


「キッズアソベンチャーワールド」のイベントでは、マーケティング通り多くの家族層が来場していたことが分かった。さらにチラシとSNSによる情報認知での来場者が9割を占めており、SNS活用が活発なファミリー世代に向けた情報発信の成果が得られた。
また、ダンボール迷路やフォレストアドベンチャー、キッズボルダリングやワークショップといった体験型のコンテンツを多く取り入れることにより、滞在時間の増加に繋がり、商店街の賑わい作りの良い参考事例となった。

40~60代向けイベント「ヨル街ラクザ」実装結果

「ヨル街ラクザ」来場者のアンケート結果

「ヨル街ラクザ」のイベントでは、夕方の時間帯の来場者が最も多く、夫婦やカップル、家族など複数人での来場が多かった。また、イベント来場後、そのまま近隣の飲食店へ足を運んだという声も多くあり、周辺飲食店への波及効果も確認できた。

なお、イベント当日は昼から激しい雨が降っていて集客が心配されたが、「今治銀座商店街」にはアーケード(屋根)があるため雨天中止とならず、多くの来場者が訪れた。商店街が持つ、アーケードという強みが再確認できたイベントとなった。

また、本事業に賛同した地元有志が、独自に併設イベントも実施。「オールド今治」と題し、商店街の歴史を伝える周遊型観光MAPイベントを行った。徐々に協力者も増え、プロジェクトを始める前よりも地元住民のモチベーションが上がってきたと実感できるイベントだった。

今期のまとめと来期に向けた展望

今期に実施されたプロジェクトで得た、成果や知見についてまとめる。
まず、例年アナログで取得していた人流データよりも、「エッジAIカメラ」で取得したデータでは約2~3倍の通行量の差があり、時期によって人通りが変わることが確かめられた。また、商店街の状況を性別・年代情報などで可視化することで、取り組みに対しての結果検証ができ、今後に生かす指標となった。さらにイベントを通して今治市内外からも商店街を訪れる仕掛けができたことで、商店街内部での協力者も増え、来期以降の発展に前向きな姿勢が多く見てとれた。

続いて、来期の展望については、まず取得したデータをより見やすくし、分析レポートのブラッシュアップを計ること。次に今期取得したデータをベースに、来期以降どう推移させたいかについての戦略策定を行い、施策に対してのPDCAを回すことでより良い商店街の環境整備を目指すこと。さらに参加者の声として多かった「アミューズメントや飲食店の店舗増加」に向けて、まずは店を他者に貸し出せるような環境を作っていくことが次の目標となるだろう。

プロジェクトリーダーを務めた「合同会社GTO」の大木鉄兵さん

今回の実装を受けて、プロジェクトリーダーを務めた「合同会社GTO」の大木鉄兵さんに話を伺った。
「プロジェクト発足時に『今治銀座商店街』の組合長より『まずはシャッターを上げることが大事』と言われましたが、今回の取り組みでもっとも重視したのが、シャッターを上げるためにどうデータを使うかということ。データを可視化することで、人の信用も増します。今後は商店街だけでなく、民間、行政とともに三位一体となり、新たなチャレンジを続けていけたらと思います」。

今回得られた人流データを、シャッター街化している県内の各商店街に開示し、計測の仕組みを横転させることで、商店街が活性化するための重要なベンチマークを作ることができるだろう。本事業で取り組んだ「エッジAIカメラ」導入とその実装結果は、減少していく商店街の未来を救う、確かな一歩となった。

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