『働きたい障害者が知っておきたい仕事への考え方。』を読んで。【レビュー記事】
綜合キャリアトラストの長徳です。
文中で紹介されている「社会の一員として役割を担う覚悟」という言葉が強く印象に残りました。
一見厳しい言葉のようにも感じますが、「働く人」として重要なことだと思います。
言いかえると、「責任をもって行動する権利」が、誰にでもあるということではないでしょうか。
障がい者の方が働く際には、「無理をさせてはいけない…」「責任の重い仕事は任せられない…」という消極的なイメージを、どうしても抱かれやすいように感じます。
もちろん、本人のキャパシティを大きく超える仕事は、控えたほうが良いかもしれませんが、負担が強すぎたり、デメリットになるような働き方は、そもそも誰にとっても望ましくないように思います。
できないことを無理やり頑張ることが責任ではなく、できる方法や条件を考え、そのために行動したり協力をお願いする力、誰しもが求められます。
「働くことの充実感を味わってみたい」
「お家を建てたい」
「恋人との結婚資金を貯めたい」
就労支援事業所を通い始める利用者の方に、将来の夢を伺うと、さまざまな答えが返ってきます。
自己実現も仕事の課題解決も、妥協せずに達成をめざすもの、という意味ではプロセスが似ているように思います。
自分の夢も自分の仕事も、誰かが勝手にやってくれるわけではありません。
「達成させるぞ!」と意志をもち、自らアクションを起こし、具体的な形にしていくものです。
方法は人それぞれであっても、「どのようにすれば叶えられるか」を考え、行動していくことを大切にしたいですね。
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以下記事本文より引用
*プラスハンディキャップ様より掲載のご了承をいただいております。
福岡にある就労継続支援A型事業所カムラック。障害者の能力や適性とITを組み合わせた仕事を創り続け、障害者雇用の輪を広げていこうとしているカムラック代表の賀村研さんが書いた『積極的障がい者雇用のススメ』はこのような言葉から始まります。
障がい者は、働くことができない。
障がい者は、支援される側。
障がい者は、成長しない。
と思われている節があります。しかし、果たしてそうでしょうか?私はそんな世のなかの「常識」に大きな疑問符を投げかけています。
障がい者は、戦力です。
障がい者は、ひとを支えられます。
障がい者は、ぐんぐん成長する存在です。
「就労継続支援A型(以下A型)」とは、現段階では企業での一般就労が難しいとされる障害者と雇用契約を結び、一般就労に必要なスキルやスタンス、知識を身につけていくことで一般就労への移行を目指す事業所のことをいいます。事業所で働き続ける方もいるので、そこは本人の選択と適性によります。
カムラックで働くほうが一般企業よりも待遇がよく、賃金もいいという状態にしたいと賀村さん本人から一度そんな話を聞きました。また、本の中でも福岡県の中小企業の初任給15万〜16万円ほどに対して、月収20万〜30万円を稼げるような仕組みにしたいと書いてあります。A型事業所という組織体でありながら、一般企業以上の待遇を準備しようとする点は特徴的です。
障害者雇用に関する本はいくつもありますが、働く障害者が知っておきたい障害者雇用に対する準備や考え方について、特徴的な経営戦略を採っているA型事業所の運営責任者が発信している点は、この本の見所のひとつです。
どんなことをして働きたいか、1日何時間くらい働きたいか(働けそうか)、2年後・5年後・10年後はどうなっていたいか、そういったことを洗い出していくと自分がどう生きていきたいか見えてきます。すると、自分に合った働き方や企業・事業所が見えてくるのです。(61頁)
最初の面接で「将来どうなっていたいか?」を必ず聞くというカムラック。働き方のビジョンがあると、仕事を進めやすく、共に働きやすいと書かれています。ただ、冷静に考えれば、大学生の就活も同じです。ビジョンを描き、自分に合いそうな仕事や企業を探す。障害者だから何か特別にする必要があるのではなく、就職するための一歩目はどのような場面においても同じです。就労支援の特性をもつA型事業所ならではの提案ともいえます。
社会に働きに出るときに重要なのは「自分中心」という考え方を手放すことです。(中略)特に重視するのは「お客様視点に立つ」ということ。これは嫌だ、あれも嫌だといっていては仕事は回ってきませんし、成長もできません。厳しいようですが「守られている自分」から脱却して、社会の一員として役割を担う覚悟が必要なのです。(62頁)
「ゆくゆくは企業で働きたいひとにはどんな準備が必要か」という一節にある、このメッセージは痛烈だなあと感じます。働く者として、耳が痛い言葉です。
仕事への向き合い方が徹底されれば、自身の健康管理や生活習慣の改善、症状悪化を防ぐためのリスク管理にもつながるというのが引き続き展開される説明。障害とうまく付き合えるようになって就職や仕事を考えることは前提だと思いますが、就職後には、仕事を軸として障害との付き合いを考えるように意識を変えるというのは言われてみると納得です。もちろん、すべてを健常者と同等に行おうとする必要はないでしょう。
また、A型事業所だからこそ、仕事に集中しすぎないように業務負荷を調整できるという特徴はあるはずです。ただ、そのさじ加減が一般企業における障害者雇用のマネジメントのミソ。自己管理が上手いメンバーに業務負荷を配慮できるマネージャーがいれば、障害者雇用に限らず、組織としてうまく機能している、働きやすさが広がっていることは想像に難くありません。障害者にとって働きやすい環境は誰にとっても働きやすい職場環境です。
障害者雇用に関する社会制度が分かりやすくまとめられていますし、A型事業所のような福祉就労の制度、現場についても分かりやすいつくりになっているため、タイトル通り、障害者雇用の手引書のような印象をもちます。ちょっと障害者雇用に後ろ向きな企業さま、働くに一歩踏み出したいけどちょっと不安な障害者の方にハマりそうな一冊。ぜひ手にとってみてください。
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