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黒いケモノと冒険の旅に出た話 #00

「ネコが飼いたい」「ダメ」
「犬が飼いたい」「ダメ」

それはどこの家庭にもありそうな通過儀礼。

子育てにも目処が付きはじめた、49歳の春
俺はペットショップのショーケースの前に立っていた。

俺は小学校の時に何度か、飼育係になったこともあり、動物には興味がある。
決められた飼育当番も何度か平気で忘れた。

今までもペットを飼ったことがあるが、メダカ、ヌマエビなど、決まった時間に餌をやり、時々、掃除をしたりして、
水と太陽光だけあたえておけば、すくすくと育つ観葉植物のような育て方。

どちらかといえば「ほったらかし」
鑑賞はするが干渉はしないタイプだった。

犬猫の類もかわいいとは思うが、自分の時間を割き、面倒を見ながら育てる自信はない。
毎日の散歩なんて考えたこともない。

「散歩も毎日するから」

それは飼い主がするのが当たり前だろう。
小さな頃から子どもに対しては、ハムスターの様な小動物を飼わせてペット飼っているでしょアピールで、大きなペットを飼うことを避け、今まで切り抜けてきた。

しかし、自分の予想とは裏腹に、子供はハムスターを可愛がり、子供を増やしては、その子たちの飼手を探す様に世話をしていた。
努力は認めよう。

しかし、今回の「ネコを飼いたい」は少し違うようだ。

今まで我慢をさせていた区切りがついたのだ。

「卒業まで頑張りました。」
「言われる通り進学することができました。」
これだけ我慢して努力した上に、自分で面倒を見るというのだから、反対しても何かしら飼わなければならないという事を感じるのだ。

この時、本人の強い意志に反対する理由が見当たらなかった。

この場になっても諦めてもらいたいと感じる俺は、ショーケースの前で、
「ネコが飼いたい」という言葉の返答に
「この子だったら飼ってもいい」と答えてしまった。

理由はなんだってよかった。ささやかな抵抗である。
だだ、こいつの思い通りにはなるまいという気持ちからか、黒くて小さな子犬を指さしていた。

もちろん犬は飼ったことはない。

「ネコじゃダメなの?」
うちには小さなビンや危険なものが存在するから、人の言いつけが守れるような子じゃなきゃダメだ。

「柴じゃダメなの?」
柴は外で飼う犬だろう?うちには土間もないし、毛が抜ける犬種が家の中にいると、いたるところが毛だらけになってしまう。
喘息になったら困るしね。

「なんで、この子ならいいの?」
「毛が抜けないからだよ。」
値札の横には毛が抜けないと書いてあったのをパッと見て反射的に答えた。

子供が希望する、ネコでも、柴犬でもない犬ならば、もしかしたら諦めるかもしれないという甘い考えもあったのだが、商談は即成立し、

「来週お迎えに来てください。」となった。



みにちゅあ しゅなうざあ?



ミニチュアというのだから、小さなままなのかな?
シュナウザーって何犬なんだろう。


その日、俺は「ミニチュアシュナウザーの飼い方・しつけ方」という本を買って帰った。

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