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プロローグ1

WC:マトリクス・ゼロ『マニャーナの遊戯盤』。
ファーストミッション「ふたりの場所」。
オープン・マトリクス。

…さて、ある休日のことだ。

千晴は、玄の用事に付き合って、珠間市郊外の農家を訪れている。
サラミとかトマトとかバジルの仕入れだ。

千晴:季節は夏だね。

玄:「こんにちは~お世話になります~!」

千晴:「あじー…玄、早くやすもうぜー…」

玄:「お前、ナポリタンがかかってんだぞ?
まあ、日陰でやすんでな。ちょっとおじさんとバジルの相談してくる。」

千晴:「じゃあ、自販でジュースかってくるわ。」

玄:「遠くへいくなよー。」

WC:雨の多い今年は、トマトやバジルには良くない年。
買い付けは思いのほか手間取り、仕入れが終わるころには夕刻になってしまう。

玄:「さてさて今日はこんなもんかね。」 

千晴:「こっちは夕方になると涼しくなるな~。」

玄:「山に近いしな。さて、乗れ乗れ。帰るぞ!」

WC:と、のんびり車を走らせ、市街に入ったあたりで、突然、強い寒気が。うなじの辺りがチリチリとざわつく。」

千晴:「ん?これは『入った』か?」

プレイヤーは事前に伝えられた以下のような世界設定を理解しており、主人公たちもそのように対応しています。

 この世の理のうち<クガ>、理の外<ヲト>。その狭間を<ミギワ>と言う。

 クガとヲトは、この世界を共有しながらも、互いに認識しあわず、それゆえに交わることのない異世界。
 クガに住む人間、すなわち「クガビト」がいるように、ヲトにはヲトの住人「ヲトナイ」がいる。
理の異なる彼らヲトナイは、クガビトから見ればまさしく怪異。
人を襲い、害をなす魔物である。
 しかし、その2者は、世界を一にしながらも、互いに決して認識しあわず、「互いに存在しない」ことで世界は成り立っている。
しかし時として、その狭間に、クガとヲトの交じり合った異界が生まれることがある。これが「ミギワ」である。

 クガに住む現世のクガビトも、ヲトに住む常世のヲトナイも、等しく迷い込む可能性を持った神隠しの庭。
クガとヲトの理が交じり合い、決して交わらぬはずのクガビトとヲトナイのまみえる場所。
 それゆえ、迷い込んだ現世のヒトは、「怪異」であるヲトナイと対峙する危険を覚悟せねばならない。

 また「怪異(ヲトナイ)」の中には、ヒトを、獲物・玩具・塵芥としか見ておらぬものも多くあり、ミギワにおいて積極的にヒトに害をなす。
 しかし現世(クガ)にも、そのような、悪しき怪異に立ち向かう異能を持つヒトがいる。あるいは魔術で、あるいは特殊な力を帯びた武器で、あるいは(超)科学の力で。怪異に届く刃を以って、悪しき怪異からヒトを守る者たち。彼らを<イサリ>と呼ぶ。

 そしてもちろん、主人公たちもイサリの卵なのです。

WC:ミギワが、町全体にまだらに広がりつつあるように見える。
「異常」としかいえない気配が伝わってくる。

その直後。東の空から、波のように、爆発のように、大きな気配が襲い掛かってくる。気配は爆発の余波のようなもので、敵がどうこう、ではないが一般人なら寒気を感じ、能力者にはキツイ衝撃になるレベル。
運転手はハンドル操作を誤るほどの気配だ。

玄:おっと!

千晴:やだな、爆発のような気。
その方向に目を向けます。訳の分からないヤバさに備えますか。

玄:「こういう時は落ち着いて減速し、車を路側帯に…」

WC:かっちょいい(笑)。

千晴:「そ、そうだよ!」

 さて、ここから本格的にTRPGの「G」、つまりゲーム部分に入ってゆきます。
 何らかの出来事に遭遇したとき、TRPGでは、プレイヤーの意思で『自由に』自分のキャラクターの行動を決定することが出来ます。これがTRPGのもっとも大きな特徴と言えるでしょう。
 もちろん、自由に、とはいっても、あくまで主人公の能力や、彼自身を縛る規範の範囲内で、ですが、それでも、あらかじめ決められた行動のみ行うコンピュータRPGよりは、かなり融通がきくことになるでしょう。

 ここでは、千晴は『警戒する』と言う行動をとり、玄は『車を安全に停車させる』と言う行動をとったわけです。

玄:教習所での基本を思い出し、ケアフルにブレイブ判定を…

WC:落ち着いて行動できるか、自制心の判定ですね。
達成値が9を超えれば成功になります。どうぞ。

千晴:ココで事故ったらやだなー(笑)。

 行動は、すべてが当たり前に行うことが出来るものではありません。
 たとえば、千晴の『警戒する』という行動は、特にそれを阻害する要素もないので普通に実行できたことになりますが、玄の『車を安全に停車させる』という行動に関しては、事前のWCの描写でも『運転手はハンドル操作を誤るほどの気配』と言及されているので、これを失敗してしまう可能性もあるでしょう。
 このような場合は『判定』によって『成否』を決します。
 このシステム、マトリクス・ゼロ(Mー0と略記します)においては、 行動にどのような能力が必要とされるかを表す<能力値>と、どのように行動を行うかを表す<マトリクス>の組み合わせを決め、10面体のサイコロ(ダイスとも言います)1個を振って成否を求めます。

 ここで玄は、精神力を表す能力値<ブレイブ>と、慎重に行動することを表すマトリクス<ケアフル>によって判定を行っています。
 ちなみに、サイコロの目は0~9、高いほうが良く、低いほうが悪い結果になります。

玄:ダイス9…ケアフルなので6になって、ブレイブ6と足して達成値12。

WC:教官との絆を思い出した玄は、慎重に車を停車し、事故は起こさなかった。

玄:「あぶねええ、ありがとうお姉さん教官!」
(↑もちろん玄PLによる突発的な発言です(笑))

千晴:そうだったの?!

仮想教官:「うん。うまいわよ。は・じ・めクン(はぁと)」

千晴:「なんだよそれ、紹介しろよ。」

玄:「えー、とっておきだからなあ。」

仮想教官:「あんやだ、そこはギアじゃないわ。玄クン。」

仮想玄:「俺の!?」

仮想教官:「強く握っちゃ…だ、め(はぁと)」

千晴:一方、千晴は鬼教官だった。

仮想鬼教官(玄PL):「きさまー!やる気あるのかー!」

仮想千晴:「さー、えっさー。」

仮鬼:「サーと言えー!」

玄PL:なんか最近も会ってないかこの教官(笑)?

 <ケアフル>は、サイコロの目が高くても低くても、ある一定基準の達成を得られるマトリクスで、逆に、サイコロの目が良くても一定までの達成に抑えられてしまいます。
 ここで玄は最高の目である9を出したのですが、ケアフルマトリクスの効果で数値は6に抑えられてしまい、彼のブレイブの能力値6と合わせて、12という達成の値を得ました。
 この達成の値(達成値)が、行動の難易度によって決まる値を超えれば行動は成功になるので、今回、玄は見事に『車を安全に停車させる』というという行動を成功させたことになります。

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