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第1章-2

部屋の中。ベッドに女の子が寝かされている。
ベッドの傍らには点滴の設備。それらがすぐに目に付くが、部屋自体はごく小奇麗な、ちゃんと片付いたセンスのいい部屋である。


玄:部屋全体や窓の外に、怪異的気配とか、感じるものは?

千晴:俺はマコちゃんだな。怪異の影響はある?

WC:部屋や窓の外に怪異的なものは感じない。
ベッドに横たわった「まこちゃん」は、顔色は青白く、手足に力は無い。『精気』のようなものに影響する怪異の気配がある。

玄:おお?

千晴:おっと。

WC:どこかに、奪われている?

玄:「環境には異常なしかー。そっちはどうだ?」

千晴:「やっぱ怪異だなこれ、誰かに奪われてるぞ。」

玄:「お?」

夕日:「奪われている? まこちゃんの命的なものが?」

玄:アモーレか?

千晴:「そうだね、精気って言うのか…」

夕日:「んー…」

玄:「どっからどう吸ってるのかね?」

千晴:体に痕とか、印とか、首筋に牙の痕とか?

夕日:「ちょっと、探してみる?」

千晴:「玄は体の痕や術的な印探して。」

玄:「俺!?馬鹿馬鹿、夕日頼む…」

千晴:「そだな、あまり長くもいれないし急ごう。」

WC:というようなことを話しているとき、2人ともフィール判定。

千晴:まじかー!

WC:目標値8で。

千晴:…バーストで、フィール10でした!!

WC:まこちゃんの体をどうこう、と…話している時、べランダでかさり、と物音がしたのをホストの耳が捉えた。

千晴:「ちょいまち!しっ!誰か居る…」

夕日:「…?」

玄:「?」

千晴:ちょっとベランダの方へ…

玄:窓にこそっと近づく。

WC:窓は面積の広い掃き出し。今は厚めのレースカーテン一枚きりだが、ベランダの様子までは見えない。

千晴:じゃあ、開けるしかないな。せーのか?

玄:せーのでいくか?

WC:夕日が指を三本立てる。
一本折る。もう一本折る。ゼロ!

玄:がば!

千晴:「誰だ?!」

WC:ベランダは畳一畳ほどの小さなものだが、その片隅、エアコンの室外機の陰に少年が一人、うずくまっている。

玄:おお?

千晴:「…ほんとに誰だ?」

WC:少年は、はっと顔を上げて2人をみると…

玄:「何奴?」

WC:ベランダを乗り越えて逃げようとする。

千晴:からからから…窓あけて
「ちょいまち。」

玄:「待て待て、落ち着け。」

千晴:「ほら、こわくない。」

WC:ことばなど聞かずに乗り越えてゆく。

玄:顔覚える。

千晴:追いかけれるなら追いかける。

WC:窓開けたなら、狭いベランダだし、乗り越えようとする間に捕まえることはできる。

玄:「おい!ここは2階だぞ!危ない!」

WC:ちなみに、顔が見えたのは一瞬で、帽子をかぶっているので、顔を覚えるほうがこの場で捕まえるよりよほど難しい。

玄:捕まえよ(笑)。

千晴:じゃあ、おれのレフレクスが火を噴くぜ!

WC:少年のレフレクスだって負けずに噴くぜ。

玄:男と男の勝負だ!2人がかりだけど(笑)。

WC:少年はレフレクス実行値11。

千晴:レフレクス12どす。

WC:千晴の伸ばした手は、少年のシャツの襟首を捕まえる。

千晴:「まちな、暴れるな。悪いようにしないから。」

夕日:「そこ危ないよ。ちー君、早く部屋に。」

千晴:「ほら、あぶねーから、降りろ。こっちの水は甘いぞ。」

WC:少年は観念したのか、特に暴れるようなこともせず、部屋に連れ込まれる。

千晴:「いい子だ。さてと…で、君の名前は?」

少年:「…」

千晴:「俺は、千晴っていうけど。」

少年:「…シン。」

WC:野球帽をかぶり、特撮ヒーローのプリントTシャツを着た少年は、観念したように答える。

千晴:「まこちゃんの友達?」

シン:「そうだけど。むしろあんたたち誰さ?」

千晴:「俺らは、まこちゃんを助けにきたものだ。」

玄:「まこちゃんの容態を診に来た者だよ。」

シン:「まこの部屋探すとか、体調べるとか…怪しすぎるっての。
少なくとも医者には見えねー。」

千晴:「じゃあ、俺がホストにでもみえるっていうのかよ。」

夕日:「…」

玄:「こうなった原因を知るためでもあるし、外傷がないか見るためだよ。」

シン:「…へえ。」

玄:「君もまこちゃんが心配で見に来たの?」

WC:どう見ても信用していない顔で2人をにらむシン少年。

千晴:「おっけ、じゃあ部屋もあさらないし、体もみない。」

シン:「?」

玄:「え?おいおい…」

夕日:「ちょっとちょっと…」

千晴:「だけど、シン、話を聞かせてもらえるか?」

シン:「話ってなんのだよ?」

千晴:「まこちゃんがこうなる前、なにか変わったことなかったか?
こんなベランダまでの侵入経路を確保したお前なら、関係は親密だったんだろ?」

シン:「親密とかイヤラシーいい方すんな変態。」

千晴:「じゃあ、どんな関係だよ。あと、親密に反応し過ぎだよ。」

シン:「仲間だよ。」

千晴:「どんな?遊び仲間?深夜徘徊仲間?TRPG仲間?」

夕日:「最後のはちょっとキモい…」

玄:(笑)

シン:「仲間は仲間だ。お前、仲間にそんなレッテル貼るのか。これだから大人は…」

千晴:「ばっか、俺だって仲間のために動いてるんだよ。
レッテル貼るために聞いてるんじゃねーの。お前の仲間に対する意識がどの程度かしりたいのよ。」

シン:「イシキとかシンミツとかどっかエロいんだよ変態。
仲間は仲間だ。」

千晴:「お前、言葉はお前を写す鏡だよ。エロを感じたらお前がエロイ証拠。」

シン:「いみわかんねー。」

玄:「まあ、本題に入ろうぜ。まこちゃんがこうなる前に、なにか変わったことはなかった?」

WC:と、押し問答に近いやり取りをしていると、夕日が…

夕日:「あ、まずい、義姉さんが階段上がってくる。」

玄:「げ。」

WC:シン少年はそれを聞くと瞬時に身を翻し、ベランダに。

玄:「待て待て、落ち着け。ちょっとこっち来い。」

シン:「はなせこら。めんどくせーことになるぞ。」

玄:シンを捕まえてベランダ出るわ。
「お前、まこちゃん治すきあんのか?一緒に治そうって言ってんの。」

シン:「エロいことされたって叫ぶぞ。」

玄:「おとなしくしてりゃバレねーよ。黙ってじっとしてろ。」

夕日:「あーどうしよ…ばれたらぶっちゃけこっちがやばいんだけど…」

千晴:えーい、カーテン閉める。

WC:階段を上りきった足音は、部屋の前で立ち止まり…

玄:「いいか、おとなしくな…(ヒソヒソ)」

千晴:「じゃー、そろそろ、おいとましよーかーなー!」

マリ:「夕日さん…?」

シン:「たーすーけーてーー!!!」

WC:響き渡る少年の大声。

玄:「おまえなー…こらおとなしくしろ!」

千晴:あちゃー…

WC:部屋の戸を開けて飛び込んでくる義姉。暴れる少年。

マリ:「なにやってるのよ!ひとの家で!!!」

玄:「なんかベランダにいたので。」

マリ:「シン君!?いつも玄関から入りなさいって言ってるでしょう?!」

玄:いつもやってんのか。

マリ:「それより、何してるのよあなたたち!!」

WC:明らかに、彼女の顔は君たちに疑いの目を向けている。

玄:「はい?」

千晴:「いや、シンくんとやらがいたので、話を聞いてですね…」

マリ:「勝手にひとの家で動き回って娘の友達を押さえつけて!」

シン:「おばさんオレマコのお見舞いにきたらこいつらに突然捕まってひどいことされそうに!」

玄:「勝手に動きまわってませんし、ベランダに不法侵入のような形で人がいたので話を聞いてただけですよ?」

シン:「助けて!」

千晴:「へー…」

マリ:「出て行ってください!シン君を放して!」

玄:だめだこいつ…

マリ:「夕日さん!あなたもどういうつもりなの!!」

夕日:「いやあの…」

WC:まあ、常識的に、まったく信用されてない上に印象も悪い君たち2人と、黙ってとはいえベランダから入るのを黙認されていた娘の友人のどちらが信用されるかは火を見るより明らかなわけで…

千晴:「どうもこうもねーよババア、さっきから言ってるだろ、夕日は姪っ子心配して来てるんだよ。心配なのはてーめーだけじゃねーの!」

夕日:「こらばかちーん!けんか腰になってどうすんのよ!」

千晴:「いってーなー…」

マリ:「警察を呼びます!」

千晴:「だってさ!はいはい、でてきますよ!」

玄:「千晴の言うとおりだぜ。かえろーぜ。」

WC:マリは携帯電話を取り出してナンバーを…

玄:「なんもやましくねえよ。呼ぶなら呼べよ。」

千晴:「だけどね、変な宗教信じるよりも先に、夕日のこと信じてもいいだろ!」

夕日:「わーわーわー!」

千晴:「あー、はいはい…いこうぜ。」

玄:「おう、いこいこ。」

千晴:「じゃあな!」

WC:という感じで、3人は名波家を追い出される。

シン:「…」

千晴:「さ、ぱっぱと出てくか。
あと、シン!おめー、助ける策があるんだろうな!」

WC:シン少年は胸に下げた携帯電話(いまどき珍しくなったフィーチャーフォン)をぷらぷら振りながら2人に舌を出す。

千晴:中指立てる。


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