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きみのかお

笑顔を見たいという気持ちと、寝顔を見たいという気持ちの均衡は、早寝早起きの習慣のある彼女に対しては、あまり有効ではないことに気がついた。

おはようから、おやすみまでを百獣の王(仮)に見守られ、歯磨き粉を買うように催促されるなかば脅迫的なビジネスのCMが流れるテレビを見ながら、伺うように鼻歌をくちづさむ彼女は機嫌が良さそうだ。

千変万化とまではいわないし、機嫌でコントロールを失う波間の船のような彼女の表情はある意味で表現であり、条件が整えば、こちらとしては無情にも無条件降伏となる。矛盾すら飲み込ませる破壊力。

比較的、感情の抜けたフェイスレスの魔法に依った寝顔すら痛々しく愛しい日々は、やっぱり笑顔とどちらが素晴らしいかなんて選び難いと思う。

いつか笑い合えない日が来るとしても、願った不均衡や選べない愛しさの序列を覚えていたい。それは、記憶にけされることのない、埋もれることのない君の顔。

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