電気うなぎにふれたみたいに

あまりの暑さにエアコンを真上に放り投げる。安いスリルと気安い痛み。さすがに30℃半ばが当たり前のように続いてはやる気もひからびる。

動物園の夏場のクマのように、あからさまにグッタリとしているうちに時間ばかりが過ぎていく。その気になれば動けるのだが、その気にならなくて困っている。世間は三連休最終日だと思うと、炎天下に、なおさらそんな場所に飛び込む気にはなれなかった。

左手一本で基本的に操作できる魔法の箱で、なにかしらニュースを探してみるが、昨晩のサッカーでは地元のチームも贔屓のチームも両方負けていた事を再確認させられただけだった。なんてこった。


生きる時間が長くなると、なかなか新鮮な驚きや喜びは少なくなってしまう。良いことだけでなく、悪いことやイヤなことに対してもそれはいえるから、必ずしも悪いことばかりでもないのだけれど、さまざまなことが、うすらぼやけてしまうのはやはり悲しい。

きっと、私が知らないだけで世界には、まだ見たことのない素晴らしいものがたくさんあるのだろうけれど、それにふれたときに感情を動かすことのできる自分であるのかどうか。

びりびり、ひりつく音楽を好んで聴くのは、鈍化していく魂の皮膚感覚に電気を流しているみたい。騒がしいばかりの音楽ではダメで、奥底に表現する人の想いが感じられないものはダメなのだ。

ライブは生き物で、行くたびに何かをもらって帰る。たとえこれだけ暑い日でも、大切なバンドがライブをするのであれば遠方まで出掛けていくだろう。

依存ではあるのだろうが、音楽は心という心臓を動かすための維持装置のようなものだ。さまざまな音楽を年代問わずに聴くけれど、わくわくするものなんて、そんなに多くはないから大変。でもせっかく生きているからね。

自分の固定観念を溶かして、拡げていくために、興味のあることはとらあえずアクションしてみる。香水とスパイスに関しては、わりと昔から調べたかったのに手が伸びていないから、まだ多少は料理で使っているスパイスから攻めてみよう。

香辛料もまた刺激をあたえるものだ。ハーブは香草であり薬そうだとするなら、スパイスよりはまだ穏やかなんだろうか。とかやっていると、薬膳とか漢方にまでリンクしそうで怖いが、まあ引き伸ばされた憂鬱に沈むよりはよかろう。

常に刺激的で忙しい時間に身を置きたいとは思わないから、ゆるゆる旅をする中で目が醒めるような、人生変わるかもみたいなものに出会えたらいい。

少なくとも、電気うなぎにふれたような、人生を終わらせたくないなと思えるような音楽には会えたのだから、旅を続けていりゃ、いつなまたそんな衝撃に会えるかもしれない。

冷房でしびれた頭でそんなことを考えた。どうせ痺れるなら音楽やアートがいい。

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