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コミュニティガーデンからはじめるまちづくり

1 . 現代のまちが抱える課題と花を通してできること

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まちの高齢化、それに伴う独居高齢者の孤独死、3.11以降の防災対策など、まちの中には人と人とのつながりが必要な場面が溢れていて、「コミュニティの再生が必要」と誰もが考えています。「でも、難しいよね。声をかけてもなかなか人が集まらないんだよ…」という声を、みなさんもあちこちでお聞きではないでしょうか?

そんな切実な背景のもと、花やみどりをきっかけにまちのコミュニティづくりをしようという動きがここ数年ますます盛んになってきました。この場合、最終的な目的は「まちづくり」であって、花はあくまでもきっかけです。しかし、声高に「まちづくりをしよう!」と働きかけるよりも、多くの人を巻きこんで多世代や多様な人々の交流を生み、まちの景観も向上させて、成果をあげています。

2 . コミュニケーションツールとしての花

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まちの中で知らない人どうしが会って、会話を始めるきっかけは3つあると言われています。「ペット、子ども、花」。この中でペットと子どもは誰もが関われるとは限りません。でも花は、春の桜を考えればわかるように、そこに花があるだけで「きれいですね」などの会話がはじまります。きれいな花壇を眺めているとき、お店や自宅の花に水をあげているとき、「きれいですね」「いつも楽しみにしています」「ありがとう!」などの言葉をかけられたことはありませんか?声をかけてくる人は多くの場合、普通のまちの人たちです。

まちづくりの現場に人が集まらない…そんな悩みをよく聞きますが、「公民館でまちづくりについて勉強しましょう」と「きれいな桜を囲んでみんなで花見をしましょう」とでは、どちらに気軽さと魅力を感じるでしょうか?花見に集まってくるような人、遠くから花を眺めて楽しんでいる人、みんなひっくるめて「まちのコミュニケーションづくりの場」に引き込めるツールが「花」であり、その特性を活かすことで、今までよりも格段に人を巻き込みやすくなるわけです。

3 . コミュニティガーデンとは?

「コミュニティガーデン」という言葉をよく耳にするようになりました。けれど「じゃあ何?」となると、よくわからないのでは? それもそのはず。明確な定義をした公的なものはまだ日本には無く、ボランティアが管理している公園の花壇や住民が管理するマンションの中庭など、色々なものが、なんとなくコミュニティガーデンと呼ばれています。最近ではデイサービスの花壇でもこの言葉が使われています。

コミュニティガーデンは直訳すると「地域の庭」。都立狭山公園等で行われている「コミュニティガーデン講座」のテキストでは「コミュニティガーデンは『地域の庭』。まちかどの花壇や公園、マンションの中庭など、場所もさまざま、大きさや形もいろいろです。仲間と一緒に愛着をもって手入れをし、つくる人や見て楽しむ人の笑顔があれば、コミュニティガーデンです」という説明をしています。

つくるときだけでなく計画をする段階から色々な人を巻き込みつつ、コミュニティガーデンの目的などをメンバーで共有することが大切…ということで「みんなで考えて、みんなでつくって、みんなが楽しめる!」というキャッチコピーが使われています。最後の「みんな『が』楽しめる」はつくっている人だけでなく、地域の人みんな「が」楽しめるものという考えに基づいています。

4 . コミュニティガーデンがまちへもたらす効果

コミュニティガーデンがもたらす効果は本当にたくさんあります。小さなコミュニティガーデンを例として紹介しましょう。

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とある古い児童遊園を近隣住民と協議しデザイン、改修してできたコミュニティガーデンでの話です。

自治体の改修計画に乗ったもので、地域に子どもがいなくなってしまった時代に、どのような方向で整備し直すかの答えを、誰も持っていませんでした。

そのため、近隣のみなさんへ声をかけ、ワークショップ形式で協議、デザインをし、その結果「四季折々に花が咲く地域の中庭」として整備することになり、整備後は近隣のみなさんの手で植物の世話をしてきました。活動は、もう10年にわたっておこなわれていますが、みなさんの世話の甲斐があって、年を追うごとに美しく成長するガーデンとなっています。世話をしている方々の愛情のほどは、ひとつひとつ手書きされた手作りの植物名札からもうかがい知れます。

改修前は薄暗く、なんとなく近寄りにくい雰囲気の児童遊園でした。改修して明るい場所になってからは、中学生のカップルがおしゃべりをするような場所になっているそうです。

このようによく管理された美しい花壇は、まちの景観を良くし、訪れる人の種類すらも変えていきます。ゴミの投棄も減ります。別のコミュニティガーデンですが「中学生が喫煙しているという通報の絶えない公園だったが、花がきれいに咲くようになって無くなった」という例もありました。

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このコミュニティガーデンの活動は1か月に1度、近隣の方が集まって行われています。小さなスペースであること、計画時にできるだけ手間をかけずに管理できるような植栽設計をしたため、30分ほどで管理活動は終わってしまい、その後お茶タイムに入ります。「実はこの時間が楽しいんだよ」というのはどこのコミュニティガーデンでもよく聞く言葉です。

7年ほど経ったあるとき、みなさんにあらためて感想をお聞きしました。
「前は生協が来た時くらいしかご近所が顔を合わせることは無かったけれど、このガーデンのおかげで定期的に顔を合わせるので近所の結束が高まった」
「どこの公園よりもこのガーデンが素敵!と思う」
「このガーデンでの活動がきっかけになって、近所の広場や道路での花を植える活動に広がって、近所がとてもきれいになった」
「おまけに道路の活動に参加していた方をこのガーデンの活動にスカウトしてきた!」
みなさんの笑顔が前にも増して素敵で、このコミュニティガーデンや地域への愛情と誇りを感じ、近所のコミュニティづくりに果たしてきた役割を実感することができました。

5 . 誰かが仕掛けるまちづくりのための場

このような場は、多様なコミュニティガーデンの中の1ジャンルと言えるでしょう。このタイプのコミュニティガーデンは多くの場合、誰か(行政、まちづくり協議会、市民の有志など)が、花やみどりのある「場」を仕掛け、行政や各種専門家、コーディネーターなどが関わりながら、やがて趣旨に共鳴した住民が花壇やコミュニティづくりの主体となっていくのが特徴です。そのためこのタイプのコミュニティガーデンには最終的な目的にいたるための「コンセプトと道筋」があり、コーディネーター的な役割をする人の存在が欠かせません。前述のコミュニティガーデンは、行政の公園課が仕掛け、いくつかのNPO法人がコーディネーター的役割を担いました。

これまでの「花好きが集まった花壇ボランティアグループ」から、もう一歩社会への広がりを意識しながら仕掛けるため、まちの美観向上はもちろん、世代交流の場となったり、独居高齢者がまちへ出るきっかけとなったり、都会の子どもにとっての近所の自然体験の場となったりしています。「高齢者」「子ども」「子育てママ」など参加してほしい層を意識しながらPR方法を変えたり、直接声をかけたりしているため、必ずしも花好きではない多様な人々(ここが重要!)が関わらざるを得なくなり、コミュニティガーデンをきっかけにまちの交流が生まれることになるわけです。

仕掛ける主体は様々ですが、最終的に目指すのは「まちづくり」。スマイルプラスでは、そんなコミュニティガーデンを、コーディネーター的役割を担ってサポートしてきました。

このホームページでも事例として、紹介していきます。それぞれに人々の想いがあり、想いを実現するための行動があり、ひとつひとつ課題を乗り越えていく姿は、さながら物語を見ているかのよう。そこには、最終的には、みんなの笑顔が生まれます。そんなみなさんの背中をそっと押すのが、スマイルプラスの役割です。

花をきっかけとした新しい地域社会のいろいろな物語たち。ぜひ、お楽しみください!

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