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「多元追憶ストライクエンゼル」各話紹介#1

ぼくが制作に参加している自主制作アニメ「多元追憶ストライクエンゼル」。その各話を、メインプロットを追いながら見どころや制作の裏話などをお届けします。

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今回は第一話「抜錨、ヒリュウ発進」の紹介と解説です。

この紹介自体初めてですのでやり方は手探りですが、視聴のきっかけとなり、作品理解の一助になれれば"光栄の至り"です。

ちなみにこの記事の見出しをクリックすると本編の該当箇所の再生ページに飛ぶようになっていますので、ビデオソフトのチャプター機能のように活用してください。

アバンタイトル

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「時に聖暦2199年」のテロップ。これは「宇宙戦艦ヤマト」の「時に西暦2199年」から始まるナレーションが元ネタ。

時に西暦2199年、地球は今、最期の時を迎えようとしていた。
21世紀のはじめ以来、宇宙侵略を着々と進めてきた謎の宇宙艦隊は、遂に太陽系へその魔の手を伸ばし、地球に対して遊星爆弾による無差別攻撃を加え続けているのだ。
地球人は地下都市を築き必死に生き延びたが地球防衛軍の懸命の努力にもかかわらず謎の宇宙艦隊は圧倒的に強力であり、地球人の絶滅か奴隷かを要求して情け容赦のない攻撃を繰り返してきた。
次第に戦力を失っていく地球防衛軍にとって最後の頼みは地球防衛艦隊であったが、強大な謎の宇宙艦隊の攻撃の前に今や地球防衛艦隊は壊滅しようとしているのだ。
遊星爆弾による放射能の汚染は、地球の表面はもとより地下をも着実に侵し始めていたのである。
もはや地球に健康な土地はなくなった。人類はただ、その絶滅の時を待つだけだろうか?明日への希望はないのだろうか?

のちに「新世紀エヴァンゲリオン」でも引用される表現。日本のSFアニメは、この言葉で始められるのが伝統芸能なのかもしれないです。

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さて本編ですが、まず描かれるのは前日譚です。冥王星にある基地(地球の軍の前線基地)が、突如現れた艦隊によって攻撃されています。攻撃を受ける中で地球への生還をしようと艦を率いているのが、のちにストライクエンゼル(通称・ヒリュウ)の艦長となる天田ヒカル(上図)ですね。対して敵側の人物として出てくる人物。本作のラスボスであるハインツ・グライスト(下図)です。

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「ヒリュウ」の物語は、襲撃された冥王星基地を奪還するという目的から始まります。ちなみに「宇宙戦艦ヤマト」でも、敵国ガミラスが前線基地を置いた冥王星を攻撃し地球への直接的な攻撃能力を無力化することを第一目標としていましたので、構造自体がオマージュということなんですけども。

さて発端となる冥王星襲撃が描かれタイトルコール(これもヤマトオマージュ)がされまして、ここからが本編。主人公桐生リョウジの視点から話が動き始めます。

主人公リョウジの登場

主人公桐生リョウジ。訓練生として登場、つまりまだ配属前の身分ですが、上官から召集命令を伝えられ、特務機関フルクラムの司令部に行きます。そんなリョウジがなぜ召集されたかというのは一つのポイントです。

リョウジが司令部に向かう際、第一話の舞台である「緋彩市」の様子が写ります。街の様子は慌ただしく、大量の物資が一方向に輸送されてることがわかります。リョウジが向かうのと同じ方向のようですので、リョウジの目的地には何かあるという予感的な描写です。

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さて目的地に到着したリョウジに一人の女性が近づきます。ヒリュウ副長の久織ミサキです。彼女に司令部まで案内されますが、道中リョウジはヒリュウを目にします。「夕日に眠るヤマト」っぽいBGMで、この作品のもう一つの主人公である万能宇宙戦艦ストライクエンゼルの全景が電撃的に登場します。

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決断を迫られる主人公

ミサキに連れられ司令部に到着したリョウジは、ヒリュウ艦長の天田に「君の力が必要だ」と言われ乗艦を依頼されます。命令じゃないのがポイントですよね。主人公に選択を迫るという作品としての通過儀礼ではありますが、もしかしたら伏線かもしれない。

乗艦を頼まれるもののリョウジは渋ります。というより断ります。はっきりと戦うのは嫌だと断るわけです。軍の拘束力はそこまで失墜しているんですよね。

もう一つ、というより別次元の理由を挙げると、この作品では、万能戦艦や空・宇宙に憧れを持ちながら戦争には反対する現代っ子を描いているからです。いえ、現代っ子に限定できないかもしれません。たとえば、宮崎駿は戦争という大量消費行為には全く反対の立場を主張していますが、自身の作品では戦争の道具が数多く描かれ活躍します。そうした矛盾には長年苦しんできたのでしょうが、それに対する答えが「風立ちぬ」ではないかと思います。この矛盾は、戦後日本の一つの症状でしょう。

しかし、そんなリョウジに対し、天田は敵の空爆によって炎上する街の様子を見せつけ尚も判断を迫ります。悪い大人です。

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そういえば、「新世紀エヴァンゲリオン」の第壱話でも同じようなシチュエーションがありましたね。決断を渋る碇シンジの目の前に、重症の綾波レイが運ばれるっていう状況。あれも悪い大人が子供を動揺させているようにしか見えません。

なんとなく、「多元追憶ストライクエンゼル」ではメカ演出はヤマトシリーズからの引用、(悪い)人間の見せ方はエヴァの演出の引用が多い気がしないでもない。そんなことはないんですけども。

敵の襲来から見えるこの世界の状況

さて悩むリョウジの意思とは反対に、敵の爆撃機によって破壊される緋彩市の様子が描かれますが、地球の軍はほとんど迎撃できていません。

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冒頭の前日譚より更に前、この世界では火星独立戦争が起きていました。この戦争によって地球の軍は疲弊しているため、軍備が整えられていないのです。よっぽどの戦争だったのか、人員補充のため子供が兵役に駆り出されているのもそういう理由からです。子供が子供らしくない、少なくともぼくらの知る学生生活的なものとは無縁な環境を強いられているというのはこの物語の一つのポイントです。

敵に立ち向かう主人公とヒリュウ

そんな最中、迎撃の指揮をとる女性が出てきます。ヒリュウ戦術長の寺田アオコです。その現場にリョウジは遭遇しますが、その目の前で戦術長は敵戦闘機の攻撃に遭い死亡します。ここのカットは、トラウマであることを示すためあえてグロテスクに描かれていて、この先何度かフラッシュバックとして登場します。

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この光景により怯えながらもリョウジは戦うことを決意し、近くにあった戦闘機・百禽に乗ります。そして敵を撃墜させていくわけですが、その能力が非常に高い。訓練の成果なのか、それともこれはセンスなのか。

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その頃、ミサキや天田らはヒリュウの出航準備を進めています。出航シークエンスは「ヤマト」、ギミックは「マイティジャック」のオマージュ。「マイティジャック」は1968年—「ヤマト」の6年前—に放映された円谷プロダクション製作の特撮ドラマですね。「ヒリュウ」のメカや衣装デザインにはその血脈が受け継がれています。

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地球を飛び立つヒリュウ〜エンディング

ヒリュウは出航し海中から飛び立っていく中、リョウジは敵戦闘機とドッグファイトをしています。リョウジはヒリュウの出航を援護するわけですが、戦闘中に被弾し期せずしてヒリュウに着艦します。そのままヒリュウは地球から離れ、宇宙の海に浮上します。

この世界の宇宙空間は、海に満たされており、地球はその海中に浮かんでいるのです。ちなみに、これから出てくる他の惑星は、冥王星のように海上にある島として出てきます。ぼくらの宇宙とは全く異なる理屈で存在している宇宙であるというのはこの作品の重要な要素ですのでご注目。

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#2 へつづく

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