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「多元追憶ストライクエンゼル」各話紹介#6

ぼくが制作に参加している自主制作アニメ「多元追憶ストライクエンゼル」。その各話を、メインプロットを追いながら見どころや制作の裏話などをお届けします。

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今回は第六話「守護獣たちの星」の紹介と解説です。

「守護獣とは?!」とここまで本シリーズをフォローされてきた方々のリアクションが想像できる問題回。この記事では、第六話の誕生の裏話や音楽についても紹介をしていきます。
最後には、今回が初公開となる設定資料、「宇宙怪獣図鑑」付きです。

第六話の導入部 〜 どんな話か覚えてますか?

第六話を通しで観ると、そもそもなんの話だったのか忘れそうになります。これまでのヒリュウの話の要素にはなかった「怪獣バトル」がパワフルすぎるからです。ですから、どんな話だったのかここで押さえておきましょう。

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冒頭、ヒリュウの主機である次元振エンジンの出力トラブルが発覚します。前回、第五話で発射した強力な武器である「次元振動砲」によってエンジンのパーツに負荷がかかったためとサブローは分析しています。
そもそもの原因は、ヒリュウの建造(修復)の際、パーツに地球上の物質を使用して無理矢理に修復をしようとしたためのよう。形としてはヒリュウおよびエンジンを再現できたけども、中身としては次元振エンジンの強力なエネルギーに耐えられるようにはなっていなかった、ということです。
この問題を抜本的に解決するには、「オリジナル」の次元振エンジンを構成する「コズモニウム」という物質を入手し、エンジンの状態を「オリジナル」により近づけることが必要となります。「コズモニウム」を採掘するため、ヒリュウは土星の衛生であるタイタンに向かうのですが、そこは巨大な宇宙怪獣たちの楽園だったというわけです。

第六話と宇宙怪獣たちはこうして生まれた

「じゃあなんで宇宙怪獣が登場する必要があったんだい?」という疑問が出てくるかもしれません。第六話の脚本に取り組んでいるときの課題は、宇宙戦艦ものとしてやりたい描写は第五話までに詰まっているんじゃないか、ということでした。本作の着想の根幹の一つである「宇宙戦艦ヤマト」、そのアニメーションとしての再現という意味では割と満足してしまっていたわけです。
そこで、「ヒリュウの物語はぼくらの触れてきた諸作品への賛辞である」という基本に立ち返り、ジャンルの垣根を越えた描写や表現をもっと取り入れることになりました。当時は、実写で特撮をやってみたいなんて声もチーム内にはあったものですから、第六話にはその要素が色濃く出力されたというわけです。
登場する怪獣たちは、往年の名怪獣を彷彿とさせるデザインばかりなわけですが、ここでは宇宙エリマキトカゲ・シヴァルゴを軸に、第六話の誕生裏話を紹介します。

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さて、第六話の脚本や宇宙怪獣のデザインに取り組んでいたのは2016年の上期だったのですが、ちょうどその頃世間では「シン・ゴジラ」(庵野秀明総監督・東宝)がやるよと言われていた頃でした。
その年の1月、ゴジラのデザインが"リーク"という形で世に流れました。

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それがこのビジュアルだったんですけども。これに大きな衝撃を受けたぼくらは、このビジュアルが持つ重力に逆らうことができませんでした。ただしそのまま出すわけにはいきません。そこでぼくらは、重力に抵抗するのでなく、これをもとに往年の特撮作品へのオマージュに全力を注ぐことにしました。
ジラースという怪獣をご存知でしょうか。「ウルトラマン」に登場する別名・エリ巻恐竜という恐竜の生き残りである怪獣なんですけども、まるでゴジラの身体の一部を黄色く塗って首の周りに襟巻きを着せただけのような、そんなビジュアルの怪獣です(検索してみてください)。実際、「怪獣大戦争」や「モスラ対ゴジラ」で実際に使われたゴジラのスーツを"そのまま"使って見た目をいじったという、特撮ファンには有名な経緯のあるウルトラ怪獣さんなんですね。
なので(?)、これをシン・ゴジラさんでやってしまおうと。特撮の歴史でも有名な着ぐるみ流用エピソードさえもオマージュして、宇宙エリマキトカゲ・シヴァルゴが誕生しました。

宇宙怪獣のデザインの裏話を紹介しましたが、特撮作品のオマージュは作品のあちこちに、描写や音楽、効果音として散りばめられていますので、目だけでなく耳でも楽しんでいただければと思います。

3人の音楽

第六話のオープニングをみてお気づきの方もいるかもしれませんが、音楽に佐橋龍の名前が入っています。

担当した曲が最初が流れるホワイトホークとコスモラプターαⅡ(百禽)が発艦するシーンには、「帰ってきたウルトラマン」から「宇宙戦艦ヤマト2199」へと受け継がれたワンダバコーラスをボーカロイド(初音ミク)で打ち込むという、ちょっと前例がない表現を採用。
また、宇宙怪獣が登場するシーンに関してもほぼ佐橋(龍)が作曲・編曲を行なっており、怪獣特撮のミームを取り入れた新世紀エヴァンゲリオンの有名な劇伴「ANGEL ATTACK」を引用するなど、アニメや特撮の系譜・歴史を音楽においても語り継ぐチャレンジをしています。

このチャレンジに踏み切れているのは、メインの作曲担当である佐橋潤がストライクエンゼルの世界観を固め、作曲2人目の皐月梟がドラマチックにアレンジをしているからでもあります。シナリオや描写でとことん「好き」を詰め込んでも、ヒリュウの世界からぶれないのは、これら作曲者たちが音楽という映像作品の重要な要素を盤石にしたためと言えるでしょう。

 付録 宇宙怪獣図鑑(設定・著 - 佐橋龍)

宇宙生物とは
宇宙生物とは太陽の神「ヴァル・トエク」に仕える「天使」を守護し、同時に「ヴァル・トエク」の収める世界に善悪の概念と均衡を作り出す存在である。
また地球上に生息するあらゆる生物の始祖たる生命構造を持ち合わせており、その様相は地球上の生物と酷似している場合が多く、故に人類は宇宙生物を地球上の生物に準えて呼称している。
宇宙生物は体内に天然で有機的な次元振機関を持ち、大気中のユバフ粒子を取り込みエネルギーに変換し、代わりにエネルギー変換の副産物として地球型の大気を放出している。そのため宇宙生物の多くが集まる土星の衛星タイタンでは、他の宇宙空間とは異なりユバフ粒子濃度が極端に低く、地球型の大気で覆われた人類の活動が制限されることのない環境的特異点を形成している。
宇宙生物には彼等が「ヴァル・トエク」から預かった世界に善悪の概念と均衡を作り出し、世界に最古の秩序を生み出す役割がある。ユバフ粒子にエネルギー価の高い「高次ユバフ粒子」とエネルギー価の低い「低次ユバフ粒子」が存在することに呼応するかのように「生存」を起源に持つ種族と「破壊」を起源に持つ種族に分かれて、善悪を体現している。生存本能と破壊本能がぶつかり合うことで、世界に破壊と再生の秩序を形成し、「ヴァル・トエク」が司る世界に有機的、生物的な代謝をもたらして、世界の劣化、崩壊を防止している。そのため宇宙生物たちは絶えず「生存」と「破壊」に分かれて戦い合い、その勝敗に関係なく「破壊と再生」の具現化を行っているのである。彼らの決着はつくことがなく、故に秩序として世界の均衡を保っているのである。

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宇宙ガメ・ヴィシュヌス
善の属性に位置し、その中でも最高位の力を持つ宇宙生物。宇宙生物のサイズを人類基準で区分したTsuburaya Scaleはカテゴリー5。地球上のカメ、特にワニガメやオサガメ、その始祖アーケロンに近い特徴から宇宙ガメと命名されている。人類が把握していない、「ヴァル・トエク」によって与えられた真名がヴィシュヌスである。四足で歩行し、武器は強力な顎とあらゆる物理攻撃、光学攻撃、粒子攻撃を跳ね返す甲羅である。特に光学攻撃や粒子攻撃はそのエネルギーを1万倍に増幅し光学攻撃に変換して撃ち返すため、最強の盾を持つ宇宙生物と言える。

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宇宙エリマキトカゲ・シヴァルゴ
悪の属性に位置し、その中で最高位の力を持つ宇宙生物。Tsuburaya Scaleはカテゴリー5。地球のジュラ紀から白亜紀の間に生息していた海棲爬虫類と陸上獣類の中間生態を持っていたとされる生物「黒竜(こくりゅう)」とその派生系である「扇黒竜(おうぎこくりゅう)」に酷似しているとされる宇宙生物だが、黒竜および扇黒竜は既に絶滅したとされており、宇宙エリマキトカゲとの生物学的な関係性は曖昧である。そのため巨大な襟巻が特徴であることから、現代において生息しているエリマキトカゲよりその名が付けられた。真名はシヴァルゴ。特徴は大きなエリマキトカゲ、背中に生えた無数の背鰭である。体内には他の宇宙生物より強力な生態次元振機関を持っており、最も効率良くユバフ粒子をエネルギーに変換できる宇宙生物とされている。しかしそのエネルギー変換時の熱量は莫大であり、背鰭からの放熱、大量の血液による体内冷却で自身のメルトダウンを防いでいるとされる。一説では宇宙エリマキトカゲの咆哮は他の宇宙生物の発声法とは異なり、体内の熱を口から放出した際に起きる喉の振動が引き起こす鳴動であるとされている。武器は長い尻尾と口から放出される熱ユバフ粒子線流である。この熱ユバフ粒子線流の原理は、余剰次元の爆縮放射を利用した万能宇宙戦艦ストライクエンゼル“ヒリュウ”の「次元振動砲」に似たものであり、体内で発生させた小型の余剰次元爆縮を熱エネルギー粒子線流に変換して撃ち出しているとされる。

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宇宙ハウンド・ガルム
善の属性に位置する宇宙生物でTsuburaya Scaleはカテゴリー4。両耳にある耳から派生した角が地球上のイヌ、中でもシェパードやドーベルマンといった耳の立っている犬種に見えることから宇宙ハウンドと命名された。真名のガルムにも「イヌ」の意味があるとされている。グレーにタン色の模様の入った体表と鼻先と両耳ににある三本の角が特徴。俊敏な動作で敵に迫り肉弾戦を好む。最大の武器は鼻先の角から放たれる次元振動波であり、角を敵に突き刺した状態で次元振動波を発生させることで敵の体組織や骨格などを粉々に破砕することができる。

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宇宙陸イグアナ・イコン
悪の属性に位置する宇宙生物で、Tsuburaya Scaleはカテゴリー3。地球の陸イグアナに酷似していることから宇宙陸イグアナと命名されている。真名はイコン。ジャンプ力と素早さを持ち合わせている。

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宇宙コウモリ・ブラドラ
悪の属性に位置する宇宙生物で、Tsuburaya Scaleは未分類からカテゴリー1の個体が確認されている。カテゴリーが特定できない理由として、生態次元振機関によるエネルギー変換だけでなく、宇宙生物としては珍しく捕食行動により身体を成長させるからとされている。捕食傾向は肉食で、時に同種族での共食いも発生する。捕食によるエネルギー変換、補充が充実した個体はカテゴリー1を超える体長へと成長すると推定される。暗がりや洞窟に群れで生息する。首には音叉のような二股に分かれる骨があり、この骨を振動させることで口から超音波で形成された衝撃光を発する。この超音波衝撃光は接触したものを切断する威力を持つ。この音叉のような骨の特性上、宇宙コウモリは首を回すことができず、左右を向く際は体ごと動かなければならないが、その代わりに眼球の稼働範囲が広く、広い視界で体の動きを最小限に周囲を視認することができる。眼球は暗闇でも対象を視認できる赤外線センサーの役割を持ち、白眼は無く赤い眼球を持つ。また耳も発達しているため視聴覚に優れた宇宙生物だと言える。


第七話へつづく

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