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『全部を賭けない恋がはじまれば』の感想

書評など書くのは烏滸がましいので感想文を!
多分、今年30冊目位の読書。

本書は、田中泰延さんの創った「ひろのぶと株式会社」の初の出版本であり稲田万里さん初の著書である。

第一章は、noteでも大人気の代表作と言っても過言ではない「パイパン2000円事件」から始まり下ネタ多めな章となっている。面白すぎる。

そこから恋愛や色々経験を経て、回想も挟みつつシリアスな話になっていく。

書評や本紹介でよく言う「○○本」みたいな言い方で言うところの「少年ジャンプ風ラブコメ本」といった展開妙味を感じた。

自分は老若男女問わず、
・なんか変な事件に巻き込まれる運命にある人
・何でもない話でも面白く語れる引きや話術がある人
・ちょっと浮世離れした面白い人

に惹かれる節があるがこの本の著者の稲田さんは、全部を兼ね備えてる(褒めてる)逸材であると思っている。
noteでも我が身に降りかかった面白い事件を面白おかしく書き連ねており、その集大成とも言える著書である。
Twitterのプロフィールにも書いてあった通り肉も300g食べてるし、じゃがいもも出てくる。ゴリラは出て来ないが豚は出てきた。

自分は、置かれた状況から逃げるのも環境を変えるのも苦手で何かを辞める決断等はなかなか出来ない。
学生時代にしていたバイトは、辞めるタイミングを失って就職先の入社日の前日まで働いていた。
中高時代から学び始めた情報学は、今や全然好きでもないが、情報系の学校に行き、その延長でエンジニアに就職し惰性で10年以上同じ会社で働き続けている。

漫画や映画を見ていると簡単に(すごい葛藤なりは描かれているが)自分の置かれた環境から逃げたり、学校や仕事を辞めたり、恋人と別れたりをしている事が多く感じる。

保身的な考えがあるからか全てを投げ出したり投げ捨てたり、感情に任せて行動するといった事が出来ない。
置かれた環境から逃げる事が上手く出来ない。
変えざるを得ない状況になってないという意味では幸運とも言えるのかもしれないが…。

人生の転機となる場面は多々あると思う。
この小説の各章でも転機になる場面が多く描かれている。
三章の章題は「流転」だが、職やパートナーも変わり環境がどんどんと流転していく。
主体的に、能動的に動くことをあまりしない(出来ない)自分からすると楽しそうであり羨ましく感じた。

唐突に周りの人間関係バッサリ切って居なくなる人も結構見てきた。
SNS上では更に多く見てきた。
社会的や人間関係的な事情で消えていった人も多かったが……。
逃亡癖がある人も結構いる。かとおもえば数年後に突然連絡が来たりする。
見知らぬ土地で0からリスタート!みたいなことは憧れはあるが今世では出来そうにない。
人は自分が出来ないことに憧れるものだ。

本書の中でも書かれているが、著者の稲田さんはデザイナー学院を卒業後、不動産会社やOLやスナックのママ等を経て、占い師をしており今回作家として本も出している。
やりたいこと何でもやる凄い人だ。

面白い珍事件だけでなく、何かやりたいことがあったら何でもやってみようと思わされる本でもあった。

どこかの偉人も「人は何者にでもなれる。いつからでも。」と言っている。……と思ったがこれはオリラジのあっちゃんの言葉だった。

ちゃんとした偉人………ではないかもしれないが面白い作家の言葉も置いて終わりにしよう。
終わり方が分からない時の"逃げ方"だ。

20年後に失望するのは、
やったことよりもやらなかったことだ。

綱を解き、船を出し、帆で風を捕らえよ。
探検し、夢を見て、発見するのだ。
マーク・トウェイン

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