幸福感に繋がる17の知見~大阪大学社会経済研究所のレポートを読む~
大阪大学社会経済研究所の筒井義郎氏をはじめとするチームによる非常に興味深いレポートを発見しました。テーマは「なぜあなたは不幸なのか」です。調査概要を見ると、有効回答数4,423サンプルで日本全国から抽出。そのサンプルに対して10段階で「幸福度」の自己評価を取得して、これを目的変数とし、その他さまざまな属性項目を説明変数にして幸福感あるいは不幸感につながる要因を特定する試みです。調査は2004年に行われているので、若干古いですが、とっても興味深くないですか?
幸福論にはいろいろありますが
「幸福」というテーマは人間にとって普遍的なものです。だからたくさんの考察や著作がこのテーマを取り上げています。「幸福論」もたくさん。有名なアランの「幸福論」より、個人的には福田恒存の「私の幸福論」が好きですね。福田恒存が女性に向けて書いたとされる文献です。その中でぼくの印象に残っているのは以下のフレーズ。
マキャベリのあの名言とも重なります。曰く。
この調査プロジェクトも同じような意図を感じます。なぜなら「なぜあなたは不幸なのか」というタイトルだから。「不幸をもたらす要因を特定することで幸福になろう、あるいはなれるのでは?」というのがこの研究グループからのメッセージと感じられるからです。
幸福を説明変数との回帰関係で表現すると
目的変数を個々人の「幸福感」あるいは「充足感」としているため、これは絶対値とは言い難い数値です。個々人による相対的な「実感値」を幸福と定義しています。しかしこれはやむを得ないと思いますので、この相対的な「幸福感」を目的変数として受容することにします。
説明変数は多岐に渡ります。性別、年齢、職業、価値観など、さまざまな変数を設定し、それらが個々人の「幸福感」とどの程度相関するか、あるいは回帰関係にあるかを多変量解析を用いて明らかにしているのがこのリサーチプロジェクトというわけです。詳細分析については、以下に実際のレポートへのリンクを貼っておきます。ご興味のある方はぜひレポートを参照頂ければと思います。
このレポートが結論づけている、「幸福感」の説明変数とそれへの解説は17あります。非常に面白いので、ひとつずつ紹介し、ぼくなりのコメントを付けていこうと思います。
⇒つまり男性であることは不幸であり、女性の方が幸福である。喫煙習慣は幸福感に影響する。よって喫煙は止められないのでしょうね。
⇒人は年齢を重ねるほど不幸になる。若者はそれだけで幸福なのです。
⇒所得は多い方が幸福。でもある程度あればOK。
⇒資産も多い方が幸福。でもある程度あればOK。
⇒学歴は幸福に影響。(自己満足も含むでしょうが、それでも幸福ならよろしい)
⇒職を求めている人≠失職中ではないでしょうが、その傾向は認められるようです。
⇒なんか切実です。
⇒これはわかります。結果かも知れませんが、都会に住んだ方がいいですよ、皆さん。
⇒住むところは幸福感に影響します。よくよく考えて住みましょう。
⇒利他的であることは重要ですね。
⇒消費してもそれほど幸福にはなれないようです。
⇒解釈がやや難しい。でも我田引水的に解釈するとQOLの高い人は幸福ってことかな?
⇒高学歴女性は働いていた方がいいということかしら。物議を醸しそう。
⇒現在価値を優先する人が時間割引率の高い人。つまり「いま」を大事にする人は相対的に不幸だということですよね?
⇒リスクを取らない人は不幸であるということ。挑戦することは幸福感に繋がるのですね。
⇒解釈できない。ちょっとわからないな。
⇒成功者は「いま」への拘りが低下し、ややリスクを取らなくなるということかな。
ね、実に面白いでしょう。数量解析の結果、いわゆる幸福論が裏付けられているように思います。簡単にまとめるとこんな感じでしょうか?
定量化された幸福の姿とは?
これが幸福の数量化の結果ということになるようです。
大阪大学社会経済研究所のレポートはこちら。
海野裕の公式ブログはこちら。
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