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倫理観を数量化するための「24の倫理コンセプト」を編集した話

 「倫理観」という言葉聞いたことがありますよね。「倫理」は「道徳」などと近接した概念として語られることも多く、この二つを峻別するのは結構難しいことです。これまでの私の分析と研究から定義すれば「倫理」の方がやや抽象度の高い、別の言い方をすれば内省的な概念で「道徳」はもう少し制度的、あるいは外部への拘束力を伴うもの、と言えると思います。

 昨今いえむしろずっと以前から、社会の荒廃あるいは劣化を代表する事象として「(特に若い世代における)倫理観の崩壊」などがメディアや学識経験者から指摘されることがあったかと思います。個人的にこうした決めつけに対して、疑問を感じていました。つまり「本当に社会は荒廃しているのか?」「本当に倫理観は劣化しているのか?」という問いです。メディアや学識経験者はそれを事実のように語りますが、それを具体的に裏付けるデータがあるわけではありませんでした。そんなときに一般社団法人倫理研究所の丸山敏秋理事長とお会いする機会がありました。前知識まったくゼロの状況でお会いした私は「倫理」の「研究所」と聞いてたいへん興味を惹かれたのです。

 海野「倫理観の数量化に取り組んでいらっしゃいますか?」
 丸山「いいえ」
 海野「であればぜひ数量化に取り組んでください!」
 丸山「じゃあ君がやって」
 海野「ぜひ」

こんなやり取りの末に「倫理観」の計量、数量化のプロジェクトが発足したのです。最初の調査は2005年に実施しました。サンプル数は1,200。日本に居住する一般男女個人を対象とし、調査機関は国内最大の調査会社である㈱インテージリサーチに依頼しました。

 楽しみな調査結果はおいおいシェアしていきますが、すべての調査の中で深層に近い心理を聴取するのは最も難しいということを書いておきたいと思います。つまり、行動の実態、例えば「今日は何時に起きましたか?」「歯を磨きましたか?」などは問題なく取得できる設問と言えますが、日本人の「倫理観」を聴取しようとする場合、どのような設問が適切でしょうか。

 調査では、何等かの刺激を与えその反応を取得します。その刺激の与え方が難しいのです。結論として、私はコンセプトチェック型の調査を立案しました。古今東西の「倫理」「道徳」「徳目」「生き方」などを収集して分類し、「25の倫理コンセプト」に編集しました。これを刺激物として使う、倫理コンセプトチェックがこの調査の基本的な骨格です。

 設問は3つ。「倫理コンセプト」に対する①「個人的共感度評価」②「社会的重要度評価」③「個人的実践度」です。「倫理」は個人的に共感するだけではなく、多くの人がそれを共有していることに意味があります。よって①と②が兼ね備えられて初めて、「倫理」として機能していることになると考えました。

評価軸1:倫理コンセプトに個人的に共感するか?
評価軸2:倫理コンセプトが社会的に重要と思うか?
評価軸3:倫理コンセプトを個人的に実践しているか?

 倫理コンセプトの編集にあたっては丸山敏明理事長と侃侃諤諤の議論をさせて頂きました。孔子、孟子、聖書、聖徳太子、モラルコンパス、ベンジャミン・フランクリン、カント、スピノザ、パスカル、.........多くの文献に当たりながら編集した「25の倫理コンセプト」は以下の通りです。

①父母を敬う
②祖先や神仏を大切にする
③妻や夫を大切にする
④兄弟姉妹は仲良くする
⑤年長者を尊敬する
⑥礼儀正しくある
⑦冷静である
⑧思いやりを持つ
⑨勤勉である
⑩和を重んじる
⑪他人を信じる
⑫他者を尊重する
⑬物を大切にする
⑭困難を喜ぶ
⑮嘘をつかない
⑯決断すべきときに決断する
⑰実行すべきときに実行する
⑱自分を信じる
⑲希望を持つ
⑳勇気を持つ
㉑節制をする
㉒広く多く学ぶ
㉓主体性を持つ
㉔他を羨まない
㉕命を尊重する

25の倫理コンセプトのカバレッジは相応に広いものと思います。この調査プロジェクトにおいては、日本社会でこれらのコンセプトのうちどれが倫理として機能しており、また機能していないのか。それが数量化されています。第2回調査は5年後の2010年に実施し、その後は毎年定点的に調査を行っています。時系列で分析することで非常に面白い結果が抽出されていますが、それは追って書いていきたいと思います。

まずは「倫理観を数量化する」調査プロジェクトがこの世の中に存在すること。それを私たちが企画運営しているという事実を知っていただきたいと思います。

海野裕の本宅、公式ブログbeyondtextはこちら。


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