読書の秋にBL小説「#1天才と恋愛」
一緒に迷子になってくれた大きなお友達の皆さん、あい、すみませんでした😖
そして、探してくれてありがとうございます。
note使用に書き下ろしました💪
月一の3つのお題企画「BL作家やろうぜ!」で出てきている人達の話を1から連載しようと書き始めました。
当初はnote外でイロイロ😘と書こうとしてたんですが、そこが無くても話の筋は通るじゃない?と思い、分けました!
内容は同じです!
少しアダルトな部分はありますが、小説を読む方なら分かると思います。
この程度の表現は、全国の書店で普通に並ぶ書籍で普通に書かれている表現です。
♯1天才と恋愛
ハンバーガーを食べる時、ほとんどの人が付け合わせのポテトから食べる。
取り取りのメニューから選ぶのはメインであるハンバーガーなのに、届いたらみんなまずポテト、稀にバーガーからの人もいるけど。
そう考えながらバイク乗りがよく集まるダイナーの中をくるりと見渡していたら、小柄な女性スタッフがTシャツの裾を結んで小さな臍を見せ、ポニーテールを揺らしながら花火がついた大きなシェアバーガーを片手に歩いてきた。
そして通り過ぎざまにウィンク、思いがけないサービスに少し気分を良くして、俺はやっぱりポテトを食べている。
メインのバーガーはまだ無傷で、繋ぎなしの100%ビーフがぎゅっと丸く握られたパテからは、まだ湯気が出ていた。
デミグラスソースと、その上にふんだんにかけられたチーズが皿にとろけて、今まさに!と食欲をそそるのに、そそられた食欲を付け合わせの芋ばかりで補う俺は、どうしたものか。
でも、この皮もついたままカラッと潔く揚げられたポテトは、熱々の時に本領を発揮する。
カリカリで中はふかふか。
後半はケチャップで味変しよう。
連れは向かいでお手拭きでしっかり爪の間まで綺麗に手を拭いて、注意を引くように咳払いし、同じくポテトを一つ口に入れた。
「食べたらどうする?ねぇ、有時 はどこに行きたい?」
向かいに座る白瀬巴 は天才だ。
天才は思考が早い食べてないのにもう食べ終わった事を考えている。
届きたての熱々のバーガーを、カトラトリと一緒に置かれている包み紙に慎重に入れながら「あっつッツ!」っと指を弾かせて、眉間に皺を寄せる。
天才は思考が早い、食べてないのに食べ終わった事までもう考えている。
「コーヒーが欲しいよね、巴は」
「うん、ハンバーガー屋のコーヒーは、」
ここまで言って口を噤 む。
キョロキョロしてから「行きつけのコーヒー屋のマスターが試合に来てくれたから顔出さなきゃいけない」と早口で言って、バーガーを大事に紙に仕舞うと、冷めるまでの時間にポテトを摘んだ。
ハンバーガー屋のコーヒーは、量が多くて少し雑多だ。
本当はそう言いたかったんだろうけど、巴は天才だから人目と聞き耳を常に気にする。
俺も流石に現地でそんな文句言う人はどうかと思う。だから、巴の気遣いは正しい。
「そこに行こうか」
「有時 」
気持ち顔を寄せた巴ができるだけ自然にちょっと首を動かし、顎をしゃくる。
「あそこのテーブルの2人組、有時の事見てる」
「ん?」
「自撮りのフリしてスマホかまえた、絶対とってる」
俺達の顔は滅多に差さないが、身長が差す。
今発展途上のバスケットのプロリーグでいる俺達は、身長190㎝、日本では目を引くだろう。
とは言え、バスケは野球さんやサッカーさんの足元にも及ばないマイナースポーツでもある。
最近はメキメキ頭角を表し、顔が差し初め、困ることも増えてきた。
「巴、1、2のさん、でやるよ」
「うん」
「1」
「2の」
「さん」で、俺たち2人は思い切りキメ顔でポテトを食べた。
俺達は隠し撮りをされても、自分達からその場で声をかけたり注意ができない。
だから、拡散された後のSNSで彼・彼女達が断罪されることを祈るしかないのが現実。
人気商売だからではなく、こちらから声をかけると、ファンに声をかけられることを許してしまう。
この手ならプライベートに踏み込めると勘違いする人もいるし、それを悪いことと知らない人もいる。
だから、所属チームや、分別のあるファン(バスケットでは「ブースター」と呼ばれている)が注意してくれる事に頼るのだ。
キメ顔映るのは、拡散された時に印象が悪くならないための意地で、あくまでも気付いていない、を前提にするのが俺たちの作戦であり、嫌な気分を発散させる小さな遊びだった。
「ハンバーガーで顔隠れるかな」
巴はやっと大切に包んだバーガーに齧り付いた。
クールなオールラウンダーで日本代表にも呼ばれ続けた巴に、リーグは「バスケット界の貴公子」と5人に1人は思いつくネーミングでメディアに押し出した。
先に言うが、巴は不細工ではない、でも突出した美男かと言われれば物言いがつく。
「俺は好きだけどね?」の範疇。
背が高くて筋骨隆々だと、それだけでイケメンに思える「雰囲気イケメン」マジックだと思う。
それに、本人が見てほしいのは顔ではなく断然プレイなのだ。
モテたくない訳ではないが、勝手なイケメン扱いで期待値を上げて担ぎ出され「そうでもないじゃん」と心無い言葉の矢が刺さる。
コートの中でボールを持てば、見る誰もを魅了する天才プレイが出来るが、一本でもシュートを外すと「あぁ〜・・・」とブーイングより低い声が会場に響き、後日の試合記事でバッシングを受ける。
そんな日々が大学時代から続いた巴は心を病んでしまい、コートから出てロッカーでバッシュを脱ぐと、ただのメンヘラの雰囲気イケメンになる。
他者からの自分へのプレッシャーに心を狂わされたのだ。
かと言って、完全に無視されるとモチベーションは上がらないから、それなりに見られたい。
実に我儘、でもそれは今の人のスタンダードだと思う。
他者の視線や言葉が怖い、静かに暮らしたいと言いながら、皆んなスマホを片手にSNSに血眼だ。
「このポテト美味いね」
「うん、うまいね、俺も好き」
ポテトはもう食べてないのに、バーガーの咀嚼の合間に巴は必死に同意する。
「芋は芋でも、ジャガイモは大好き」
俺の目を見ながら、何度も頷いて。
日本の北に住む俺と、南に住む巴は本州の中間地点の大学で出会った。
高校までは2人ともほぼ無名、大学は自力受験でバスケの名門大学へ入学し、そこで意気投合。
絶対に推薦組だと思っていたほど、巴は確かに天才だった。
「シュートは上手いがディフェンスがザル」と言われた俺が一からディフェンスに打ち込む隣で、攻守共に抜群のセンスで体躯も良く、無駄のない動きの巴は見るものの目を惹きつけて止まなかった。
あの時、天才の巴が隣にいたから俺は必死にあの過酷は練習に耐えれた、だからプロの今があると思っている。
俺達は、寮も同じ部屋で本当にずっと一緒だった。
まだリーグ発足前のバスケット界は、ここぞとばかりに天才巴の人気に目をつけ、日本バスケ会の貴公子としてメディアに打ち出した。
人気は上場。
いつも隣に見切れる俺の評価は「シュートは上手いが天才の隣にいる凡才」止まり。
平凡な才能でも才能なしより箔はある。
巴が日本代表に選ばれたあたりから、大学の中でもついに噂されるようになりだし、俺はついに「天才・白瀬の付け合わせのポテトのM」になった。
某バーガーチェーン店のセットメニューに見立てた秀逸な例えに俺は感心したが、巴の限界はこの頃がピークだった。
「俺もポテトでいい!ポテトがいい、もう無理、ハンバーガー無理!」
「巴、落ち着いて」
第一声に俺は「そっちなんだ」と思った。
てっきり俺をポテトだなんて失礼だ!と憤慨したと思ったからだ。
「嫌になる、勝手に天才だ、なんだって取り沙汰して少しでも成績が落ちたら「あいつ天才だからって思い上がってるよ」とか「イケメンとか言うけどそうでもない」とか言ってさぁっ、俺がいつ自分で「貴公子だからイケメンで天才でモテすぎて困ります〜」なんて言った?何時何分何秒だよ!地球は何周回ってた?思い下がってるっての、どん底だわ!」
「一回落ち着こう?」
喉を掻くような掠れた声が哀しみを増幅させる。
「落ち着いても俺はポテトになれない」
「みんなはね、ハンバーガーになりたいんだよ?巴が羨ましいから」
「有時も俺をそんな目で見てるの?」
眉毛が歪に下がって、真っ赤になった巴の白目に膜が貼る。
「見てないよな?見てないよ、見てたら隣にいれないよな?」
寮の部屋でのこんなやりとりが週に2回は繰り返され、俺達はポテト改め「芋論争」と呼んでいる。
これは秘密にせねばならない。
巴は外では「天才イケメン貴公子」を守らねばならないから。
チームも誰も天才の苦悩を救ってなどくれない。
どちらかと言うと、天才巴とマッチアップして心を折った選手ばかりをケアしていた。
この人がどれだけ心を壊していたか、周りは知らないだろう。
劣等感もプレッシャーも「天才」だからない。
若くしてバスケであそこまで上り詰める人は、メンタルもきっと強い。
だから、何を言っても構わない、強いから。
バカを言ってはならない。
弱い人をいじめてはいけないが、強い人も天才もイケメンも等しく人間なのだ。
プレッシャーがないはずなんてないし、むしろ落差がすごい。
「俺もう天才やめたい。
でも俺にはバスケしかない、バスケがしたい、世界だって目指したい、でも、天才は嫌だ。貴公子なんか・・・そんなのクソ喰らえだ、人は俺の何を見てるんだろう?」
「巴」
「芋なんだよ、俺は・・・そうだよ、俺もともと牛が放し飼いされてるような地方のド田舎出身だし、イモい男なんだよ、もともと芋なの、芋になってコートに立ちたい」
気持ちのばらつきが徐々にプレイに差し障り、監督からも打診され、もう空前の灯火だった巴はついにシュートが打てなくなった。
それは同じポジションの俺にとって最大のチャンス到来、少し遅れた日の目を見た。
それを見た巴は焦るどころかそこに落ち着こうとする。
ある意味で、ピンチをチャンスにしようとしていた。
だが、どう考えても巴の類まれな才能は日本のバスケット界を明るくする。
それに巴自身のためにもバスケは続けてほしかった。
バスケと巴は相思相愛なのに、こんなに辛くしているのはきっと周りなんだ。
だから、何度でも叩き直して俺は隣にいようと思う。
「俺は日陰の芋になりたい」
この頃、俺は少しこの状況に慣れてきていた。
最初は色々説得したりポジティブな言葉をかけていたが、それが違うことに気がついた。
ただ聞いてほしいんだ。
失恋した時に「こんな時自分なら」の話や説得を聞きたくないように、これも承認欲求なんだ、と。
「有時になりたい」
「うん」
「バスケが出来るし、芋だし」
「ディフェンスはザルだけどね」
「でも、いつも俺の隣でいてくれるし」
「うん」
「有時は俺に、期待しないもの」
そうだな、と思う。
俺はそんなに優しい男じゃないから、自分のことばかり考えて自分にばかり期待しているからな。
「もう、しにたい」
2人で巴のベットに腰掛けて、俺は無意識に足を閉じて、腿の間に手を入れていた。
どんなに決意を固めても、俺達は無力だった。
どんなに人より体が大きく、バスケットの才能があっても、無力だった。
あぁ、神さま。
なんで天才は孤独なんですか?
涙が出た。
俺にそれだけの力があるなら、いっそこの天才を今すぐに叩き潰してすっきりさせてあげたい。
それも巴自身のためにもなる事は、心の片隅で分かっていた。
だけどそんな勇気も力もない。
中途半端に叩き潰して、巴が無様に生き延びたらそれは本当の意味での巴の終わりだ。
だから思い切り歯を食いしばって抱きしめた。
生きて俺に叩き直される事しか許されないことを、口の中で謝った。
巴は小さく「え?」と声を漏らして、体温の上昇で俺が泣いてしまったことを察すると「いつもありがとう」と、少々的外れな言葉をこぼした。
その一言にさっきの告白が本心でない事を悟る。
鼻をずるずる啜りながら俺は両手で顔を覆い、眉毛を擦って人差し指で涙を拭った。
「巴、俺決めた」
「え?」
「あと200年生きるからね」
「・・・はぁ?」
驚くくらい、呆れた声が隣から聞こえて、俺は背筋を伸ばす。
「200年あったら、シュートは上手くてもディフェンスがザルで付け合わせの芋の俺も、オリンピック代表にまではいけるかもしれない。バスケも頑張るけど寿命をまず伸ばすことにした」
「あ・・・。そう、うん」
「だから、巴も生きなよ」
「やだよ、バスケ以外やりたいこともないし、途方も無いよ」
「巴の目標はオリンピックの舞台にいる俺を見ることにした」
「したって、あなた・・・」
「だからあと200年生きよう」
珍しく巴が俺に押し負けた。
「じゃあじゃあ、200年経ったらどうするの?」
巴の頬が赤い、俺の顔も泣いて赤いだろう。
その頃、世界が2人だけなら人類の為に考える未来もあるが、
「疲れてるから、一緒にしのうか」
俺達は自由だから。
「ずっと、いろよ?目が届くとこに、じゃないと俺、しぬからな」
「うん、監視用に衛生でも飛ばすよ」
大学生といえども、この前まで子供だった俺達は狭い寮の部屋の中でぼんやりお互いを求めてた。
何が正しいのか、どこにいけばいいのか、探せばいいのに探せぬまま、必死に身を寄せた。
思春期と、閉じ込められた寮生活と、昔気質の強豪クラブで色々な欲求が閉じ込められていたのもある。
湧き上がる怒りや悲しみが、下半身の熱になって興奮していたのもある。
お互いの体に触ると言うよりは、女性を抱いた経験からくる手癖での簡単な弄りで、すぐに下半身だけ露出させて繋がるような、無謀で無計画で、無機質ななんの情もない行為だった。
吐息と頬だけが熱くて、泣いたせいでぐずぐずの俺をベットに押し付けた巴が下着をとる。
大浴場やトイレで見慣れたはずの巴の下半身とは全く別の狂気に俺は少し震え上がった。
無理やり自分の下半身を握られても嫌な気分は無かったが、巴は自分でそうしたクセに反応した俺の下半身を見て少し殺気立ったらしい。
そう言えば。
たまたま読んだセクシー男優のエッセイに「女性は柔軟で、お互いに女性器を愛撫できるけど、男性は自分以外の男性器を本能的に敵とみなす。だから、AVの女性同士ものや数人の女の子で男性の相手をさせた時に女の子同士はすんなり絡んでくれるが、男同士は難しい」と書いていて、なるほど、と思った。
男を受け入れる事が出来る男は、良く言って柔軟。
いわゆる素質があるんだろう。
最初は悲しみや怒りに駆られていた巴の憤りは薄れていった。
体を重ねた後の巴のメンタルはしばらくは安定したし、初めの頃ほどただストレスを性欲に変えたような早急なコトをしなくなった。
かといって。
ゆっくりとお互いの体を愛でて舐めるような愛撫もなく、下半身だけ露出して前より少しじっくりと体を擦り合わせる程度。
女性とのそれより、全然気持ちよくはない。
でも、自分の中に無理矢理入ってきて、じっくりじっくり腰を擦り付ける巴の汗は、確実に色を持っていた。
それを体感してしまうと、子猫が母猫のちちをねだるようなイジらしさと愛情が、不思議とすくすく湧いてきた。
学年が上がると俺は寮を出て下宿した。
巴は家庭の都合で寮に残ったが、少し距離ができたのと、俺の下宿先で逢瀬を重ねるのがいい刺激になって、また関係は変わってきた。
なんだか恋人同士みたい。
翌日の事を考えながら、限られた時間の中で2人きり抱き合う時間は貴重で慎重になる。
特に体調に関しては気遣っていたつもりだが、俺の体調が悪い時ほど引っ張られるように巴のメンタルは不安定になる。
それでも人より体力は自信があるし、普通の恋人同士のような時間をかけた甘さもない。
そう完全に油断した俺は、コトの最中に思い切り吐いてしまった。
薄ぼんやりと頭に浮かんだ言葉は「まずい」だった。
巴は綺麗好きと潔癖症の間を行き来する神経質な人。
体の関係が結ぶくらいだから俺の体液は受け入れているようだが、吐瀉物はさすがに萎えるだろう。
初恋の人に対する羞恥心みたいに鳩尾が余計にきゅうきゅうと締め上げられて、胃の中身が込み上げる。
「汚い」と顔に皺を寄せられても仕方ない、そうゆう人と知って関係を持っているんだから。
うつ伏せた俺の上にのしかかったままの巴は、黙ったまま、はぁ、はぁ、と洗い息を整えて、すうっと大きく吸うと止め、きょろきょろと辺りを見る。
そして自分が着ていたTシャツを脱ぐと、俺の顔の下に手を入れて軽く持ち上げて、吐瀉物の上に自分のTシャツをばさっとひいて、優しく頭を戻した。
「まだ、吐く?横向きになる?」
俺は驚いて何も言えなくなった。
潔癖症で個別梱包されていないとパン屋のパンも食べれない巴が、俺の吐瀉物も、体液も受け入れていることに大きな愛を感じた。
あぁ、俺、ちゃんと愛されてる。
俺達は案外、ちゃんと恋愛をしているのかもしれない。
なんだか安心したら猛烈におかしくなって、おろおろする巴を無視して嘔吐きながら笑ってた。
「ふっ、ふふふ!・・・う・・ぉえッ!!ふはは!」
「え?ちょ、有時?きゅ、きゅきゅ、救急車?!」
「も、色々無理・・・!早く上から退けよ馬鹿」
「有時が俺を、罵った!救急車!!」
「もういいから」
俺はこの巴の絶妙な面倒臭さが愛おしいんだ。
⭐︎
巴は「ごめん、ごめん」と何度も呟いて、お風呂を沸かしながらぐったりした俺の顔をタオルで拭いて、昼寝用のタオルケットでミイラみたいに包んで床に転がした。
そして「コインランドリー行ってくるから、風呂入って。あとなんかいる?ポカリ?塩水がいいか?保冷剤!いや、アイスクリームだ!」
と、軽く風呂場で洗ったシーツやらをまとめてゴミ袋に入れると、勝手に人の服を着てさっさと出ていってしまった。
守備よく動くのはいいが、こんな時は「そばにいろよ」とまた笑ってしまった。
しっかり乾燥機までかけて戻った巴は、ビチっと綺麗にシーツをかけて珍しくずっと俺を抱きしめていた。
お気に入りのおもちゃが壊れてしまったみたいな、少し子供っぽい感情を感じながら、俺は誰よりも真面目にシュート練習をする、日本の宝の手をとった。
「巴、プロになろうよ。プロになったらもっとすごい人がいっぱいいる。そうすれば巴はプロのバスケ芋になれる」
「有時もなれよ」
「そればかりは俺の一存じゃないからな」
「でも、なれるかどうかは有時さんの一存です」
「それを巴さんに言われるとね、サボれないですね」
「てかさ、よく考えたら失礼だよね?有時はポテトのMじゃないよ、バカだな、XLだっつの」
「・・・あ、服のサイズ?」
俺はやっぱり「そこなんだ?」と少し呆れて巴を見た。
「ここのコーヒー本当にうまいから」
ダイナーを出て2人きりで車に乗ると巴は活き活きとする。
誰の視線も聞き耳も気にしなくていいからだろう。
この行きつけのコーヒーショップも、オーナーが巴と仲が良い事がSNSで拡散されて、多くのバスケファンに愛されるようになった。
だから巴はプライベートを保つために、事前にオーナーに連絡し、裏口からドライブスルー状態でテイクアウトしてくれる。
巴はプロの芋になり損ねた。
もちろん、2人でプロになり今年で11年目を無事に迎えたが、それでもやっぱり巴は天才の貴公子に変わりなかった。
入団は別々の団体だったが、リーグが発足した後に俺は巴が入団からずっと在籍しているアトランティスに移籍し、3シーズンだけ一緒に過ごした。
その間に数回、色っぽい関係にはなったが、体の関係のみで特にそれ以外なにかある訳でもない。
巴は安定して、昔ほど芋になりたがらなくなった。
他府県になる今在籍しているビリーバーズに俺が移籍した後に少しだけ芋状態になったが、年の功か経験値か、そこまで長くは続かなかった。
恋人ではないけど、友達でもない。
心も体も結んでみたけど、肝心な何かをいつも置いてけぼりにしている。
「ねぇ有時、うち来る?来るよね?新しいルームスプレーがさ、」
「巴さん、俺は今日中に帰ります」
一瞬黙って信号待ち。
目の前の横断歩道をたくさんの自転車と歩行者が行き交う。
「シーズンオフですよ?有時さんは俺の服を着ればいいし、パンツは前に置いていったやつがあるから泊まれます」
「弟の同期がうちのチームに移籍します。明日わざわざ挨拶に来てくれるから帰ります」
「みつ君の同期?あ、千早んとこのチームのSFか、移籍の通知出てたな?リキだっけ?」
「うん」
「あいつ、試合前の挨拶の圧すごいよね、散歩行きたい犬だよね」
「フフッ、確かに」
「普通さ、挨拶の後はグータッチか握手くらいじゃん?俺には両手で握手だけど、毎回有時に飛びつくの見てられない」
「ハグです、挨拶です」
「エロい目で見てるって!いつかルパンみたいに空中脱衣するよ?」
「ハハハ!それはちょっと勘弁だな」
「呑気にしてたら後輩に食われるよ?あの目はエロい、絶対に」
「それは巴がそうやって俺を見てるから分かるの?」
「あぁ〜・・・ん、否定しない」
「帰ります、空港か駅に向かってください」
ハンドルを握っているのは巴だから俺にはなんの権限も無いけれど。
諦めて冷めた頃合いのコーヒーを一口飲む。
それにしても、ここのコーヒーは美味しい。
渋みが少なくて香りがフルーティで軽い。
巴が俺の好みを熟知して選んだ最高の店はコーヒー豆まで推せる。
見慣れた並木道に差し掛かり、勝手に自分の家に向かっている事を道筋ですぐに察した。
「誘拐の天才芋、巴」
「はぁ?XLサイズの頑固芋、有時」
思い付きの悪口でちょっと心がスッキリする。
「コーヒー美味しいよ、ありがとう」
「明日も飲みたい?飲みたいよね!オーナーも有時に明日も飲んでほしいって思ってるよ?」
「巴さんは美味しいコーヒー屋見つけるのほんとうまいよね」
「うん、好きだから、ね」
普段は恥ずかしがって歌わない鼻歌まで漏れてきた。
「なぁ、リキはエロい目で有時のこと見てるし、俺の所にいなよ?」
「でもここにいても巴がエロい目で俺を見てるんだよね?」
「・・・。つかさ、移籍の挨拶なんか練習に合流してからでいいって」
「俺も話したい事があるからいいんだよ」
俺に恋愛が絡みかけると巴は不機嫌になる。芋になる前に話題をすり替える。
「引退したらコーヒーショップとかいいね」
「有時も一緒に?ん?えぇ?これってプロポーズ?」
駐車場に入った巴はシートベルトを外しながら斜め上に視線を走らせてニヤニヤ。
その辺りに楽しい妄想を繰り広げているんだろうか。
「結婚だな、うん」
天才は思考が早い、恋人でもないのに結婚の事までもう考えている。
このままだと墓まで買いそうだから俺はやっぱり話題を切り替える。
「この前まで付き合ってた女優さんは?」
「ぅおぅ、びっくりした、わ、別れたし!報道に嘘偽りはございません」
「綺麗で落ち着いた人だったのにね」
痛いところを突きながら、車から降りてエレベーターに乗り込む。
「巴さん、あの人とはキスした?」
「へ?そりゃあするよ?」
「俺達、一度もしなかったよね」
エレベーターのモニターをじっと見る。
「同じ高さに顔があるのにね」
俺がずっと感じていた違和感、それは一度たりともしなかったキスだ。
できない訳でもないのに、なぜか俺達は確信に触れたくないように避けていた。
到着の音がして扉が開くと同時に、巴は先に降りようとした俺の手を掴んだ。
「していいの?」
何を今さら、と手を引っ張る。
「ずっと、してよかったんだよ?」
一緒に廊下に出て、手を繋いだまま巴の部屋に入ると、嫌な静けさに包まれた。
何も言わずに阿吽で視線を絡ませてみたが、やはり巴の視線は明らかにキスより先にいる。
「有時、それってね、もしかして・・・ヤキモチ?」
そう言いながら腰を抱く手に少しカチンッ。
「一緒にお風呂入ろ?」
これも大人の恋愛だ。
キスとか、告白とか同意とか、そんなのすっ飛ばして抱き合った。
普通の恋愛のセオリーが、告白をして、手を繋いで、キスをして、抱き合うなら、俺達の順番は確実に逆だ。
でも、だったらそこは筋を通して逆に考えて次はキスでしょう?
というか、今だよ?今しろよ?
「鈍感の天才芋、巴」
「はぁ?嫉妬狂いXL芋、有時」
体から始まる恋愛も、同性相手でも俺はきっと恋愛が出来る。
これは自分の幅が広がった証であり、俺の長所に数えられる。
それを俺に教えてくれた巴の存在は大きく、そして愛おしい。
だが、
天才と恋愛は難しい。
「巴、俺は確信したよ?一緒にあと189年生きるし、衛生も飛ばすけど巴と恋愛はできない」
「あと189年あるからまだ分かんないし、結婚は生活だよ?大丈夫。俺はオリンピックの舞台に立つ有時を会場まで迎えに行ってプロポーズするよ」
「クッ・・・大観衆の前、断り辛い」
「俺、バスケ界の貴公子、天才で著名人、さて、あなたは泥を塗れますか?」
ちこうよれ、とバスルームに手招きする。
逞しくなった、と褒めるべきか。
どの口が言う!と罵るべきか。
悩む俺に巴は吹き出し笑って「冗談です」とソファにドスっと腰を下ろした。
「気楽にいこうよ、人生は長いよな」
天才にはかなわない。
迷子になってます💦
私はログイン状態を保ってるので入れるんですが、🔞なのでしっかりセキュリティされてるのかもしれないですね、日本素晴らしいなぁ😳
有意識者に聞いてみたところ、ログイン出来たら中かからユーザー検索でいける!との事ですが、自分で検索してみたところ私が出てきません🤔
設定もステータスも全体公開にしてんやけどなぁ?
全て私が作り出した幻?
創作は全て妄想やから幻か。
いや、なんの解決でもないわ😳
まぁ、🔞つけなければそのまま読めるはずですし、次の話は全く普通なのでそっちもやってみます。
お手数おかけしました。
アプリでなく、ブラウザではユーザー検索出来るみたいです。
ありきたりすぎるからかな?とか、色々考えて攻めたユーザー名にしちまったじゃねぇか・・・
でもアプリでは無理🙁これはセキュリティの問題か?なんなんや?
pixivアプリ、おもしれー奴・・・