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ジョージア抗議デモ現地レポート(2024年5月)

2024年5月、欧州のジョージアでいま何が起きているのか?
4月17日にジョージアで2万人が抗議デモに参加し、トビリシの議会付近では警官が路上で参加者に暴力を振るったり逮捕者がでたことが報道されれ、その後連日のように抗議デモが行われています。
4月29日から5月8日の数日間をトビリシに滞在し、集会に参加する機会があったので、そこで見たこととなぜそうなっているのかをレポートします。


4月29日に初めて集会に参加しましたが、その日の参加者と4月30日以降の参加者の層が全く異なっていました。なぜか?
何度か参加して分かったことがありました。

全てはジョージア議会が新しい外国代理人の法律を作成しようとしたことから始まります。

外国代理人法(外国スパイ法)とは何か?

2023年3月、ジョージア政府は新しい法律を作成しようとしました。
それは外国の代理人についての法律で、透明性が高まり、外国による独占と呼ぶものを阻止できるとしました。
また、アメリカの法律に似ていることで市民を納得させようとしましたが、実際には2012年にロシアで作られた法律に似ていました。
法案は資金の20%以上を国外から受けているNGOや、外国から影響力を受けているメディアは外国の代理人として登録を義務付け、違反した場合に罰金を科す内容です。
この対象にはジョージア赤十字社も含まれます。
登録が完了すると、追加監査の対象となり、全ての出版物等にマークをつける義務があるため、スパイ法案とも呼ばれています。
現状ロシアでは、政府やプーチンを批判することはできなくなっていることから分かる通り、反対派はロシアで同様の法律が言論弾圧に使用されているとし、「ロシアの法律」と呼んで反発しています。
また、外国からの資金の没収や組織の閉鎖を容易にさせる目的も考えらており、LGBTの権利にも制限をかけようとしています。
反民主主義的でロシア式の外国代理人法はEUの価値と基準に適合しないため、大規模な抗議デモが起き、一旦この法案は撤回されました。
しかし、2024年4月に再度、議会に持ち込まれたため、国民が抗議デモを始めました。

経緯

2023.02 法案が着手される
2023.03 法案の第1回審議で可決
2023.03.09 抗議デモの影響で法案の第2回審議で撤回する
2023.12 ジョージアが正式にEU加盟候補国となる
2024.04.17 撤回された法案が再度議会に持ち込まれ賛成83票(150票中)で可決
→大規模な抗議デモが発生
2024.05.01 法案の第2回審議で可決
2024.05.14 法案設立に必要な第3回審議で可決
2024.05.18 ズラビシヴィリ大統領が拒否権を発動
2024.05.28 議会の再投票で大統領の拒否権を覆すために必要な過半数(賛成84票/反対76票)を得て可決
→法律として事実上成立(60日以内に施行できる状態)

現地レポート

【2024年4月29日】

20:30頃に議会があるRustaveli通りに到着。
6車線ある大きな通りだが、すれ違うのも大変なくらいたくさんの参加者で埋め尽くされていた。

Rustaveli通り

その近くの細い通りには大型バスが多数停められており、簡易トイレも設置されていた。

路上に停められた大型バス

参加者はほぼ50代以上の男性が占めており、若者はほぼ見られなかった。
路上には数多くの大きなモニターが設置されており、クレーンを使った大掛かりな撮影システムを使用し、ステージの上で政治家が行っている演説のライブ映像を流していた。
明らかに資金のある組織によって開催された集会ということがわかる。

議会前に支援者として集められた国民
政治家の演説

後々分かったことだが、与党のGeorgian Dreamが組織したもので、抗議デモではなく政党を支援するための集会ということであった。
しかし、どうやら参加者は自発的に参加しているわけではなく、参加させられていたということ。
そのやり方は、サポートしないと仕事を解雇すると脅されたり、刑務所に入っている家族を出所させる、また賄賂を渡され買収したと言われている。
翌日に会った現地の友人が、可哀想な人達で悲しいと言っていた意味が分かった。
確かに参加者の拍手や声援なども聞いているとどこかやる気が無いように感じられたのも納得ができた。

【2024年4月30日】

現地の友人と食事をした後、22:30頃に議会前に一緒に到着。
明らかに違うのが、参加者の大半が10代、20代、30代の若者が中心であることとバス、トイレ、テレビモニターなどはなかった。  

EUの旗を持つ女性
抗議デモ参加者

マイクとスピーカーだけは使用できるようになっていたが、ステージも前日とは異なり簡易的なものに置き換わっていた。
演説は好きな人が勝手にステージに上がってできるようで、参加者も積極的に拍手や声援を頻繁に行なっていた。
暴力的な光景は一切見られず、平和な抗議デモといった印象を受けた。

抗議デモ参加者による演説

この日は0時過ぎに足早に現場を後にするが、翌日X/Twitterをスクロールすると、参加者は3時頃まで残っていて、警官によって暴力を振るわれた参加者もおり、放水、催涙ガス、ペッパースプレーなどが使用されていた映像を見た。

【2024年5月1日】

17時頃に議会の前を通ったがほとんど人もおらず、ゴミが散乱していることもなく前日の人混みはなんだったのかと不思議な感覚だった。

抗議のプラカードを準備している参加者
議会裏で待機する警官

18:30頃に議会に戻ってきて、裏側の出入り口付近を見に行った。
数百人の警官が待機していて、多くはマスクを着用していた。
ジョージアの国旗やEUシンボルの旗を身に纏っている人も多く見かけた。
同じ空間にデモの参加者と警官が同居している光景が不思議だった。

議会裏で待機する抗議デモ参加者と警官
議会裏の出入り口

議会の表に移ってみると参加者が徐々に増えてきていていた。

議会の表側

その後、時間が経過すると横の出入り口には大量の警官が待機していた。
議会には四方に出入り口がある。

横の出入り口を封鎖する警官隊

始めは参加者と警官隊の距離はだいぶ離れていたが、時間と共に徐々に近づいていき、警官隊に直接抗議をしている人が出てきた。

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