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新しい椅子を購入した

新しい椅子を購入した。
ニトリのゲーミングチェアである。
座業の人間は——あるいは一日の内で座っている時間が長い生活をしている人間は——良い椅子を買え、とはしばしば聞く言葉であるが、いざ買おうとしてみると良い椅子がなんなのかわからない。
(ちなみに〝買おう〟と決意したのは、それまで使っていた椅子が長年の酷使に耐えかねて座面が前方に傾いてしまったからである。お疲れ様)

定番はいまだにアーロンチェアのようだが、私からすると目を剥くほど高い。果たして投資の価値があるのだろうか、望んだ効果を得られるのだろうか? などと考えてしまう。買い物をする際にこのような疑心を抱くのは野暮である。おおよそ、先立つものがないか対象にそこまでの魅力を感じていないかのどちらか、その両方であろうと思う。

思考が逸れてきたので、「では座業の人はどのような椅子を使っているだろう?」と新たに問いを立てて、とりあえずpixivを覗いてみた。なぜpixivなのかというとpixivのプロフィールには「作業環境」の一覧があり、その中に「椅子」の項目があるからだ。

いくつか商品名が見つかる。これをGoogleで検索してみると、目玉が飛び出るほど高い。果たして投資の価値が……などと今度は明らかに言い訳で同じ思考をたどりかけたところで、「座ってあれこれ考えるより、現物を見に行けばよいのでは?」というしごく当たり前のことに気づくのであった。

とりあえず、目玉をぎょろぎょろさせた参考資料のことは脇に置き、ネット上のまとめ記事を参考にAmazonなどでオフィスチェアのおおよその相場を調べ、隣町のニトリへ行ってみた。
そこそこ広い店舗なので展示見本(もちろんすべて座れる)はたくさんあり、あまり客がいないのをいいことに(いなそうな曜日と時間帯に行っている)試すすがめつして見た。
意外だったのは複数あるゲーミングチェアがどれも具合が良く、人間工学云々を謳ったオフィスチェアはいまいち合わなかったことである。もしネットの情報だけで、手ごろな価格帯の椅子を選んでいたら痛い目を見ていただろうことは明白だった。
最終的に四種類くらいあったゲーミングチェア中から、冒頭に椅子に文字通り腰を落ち着けたかたちである。

これで腰部の危機とも臀部の危機ともおさらばだ(実際に長時間座る以上、現実はそんなに甘くない)、とデスクにセットしてから気づいた。

——姿勢が悪すぎる。

ヘッドレストまで背もたれをたっぷり使ってキーボードに手を置いてみると、かなり前傾姿勢でデスクに向かっていたことが判明したのである。当然ながらディスプレイと目の距離も近い。
私は両目に軽度の眼球振盪という障害があるので、焦点を合わせるのに苦労するのだが「そこまで近づかないと見えない」ということはない。逆に離れないと見えない、ということもない。
普段から姿勢にはかなり注意しているつもりだったが、デフォルトの姿勢がそもそも良くなかった、という情けない気づきである。

集中してくると前傾姿勢になりがちだし、その方が書きやすく速く書ける、という側面もあるが、デスクに向かっている時間のすべて=書いている(キーボードを叩いている)時間ではないので、この〝それ以外の時間〟の姿勢を改めるようにした。
そうすると、これまでかなりの時間〝不必要な前傾姿勢〟を取っていた事実があぶり出され、軽い眩暈といまさらな後悔を覚えた。

視界が揺らいだところで、少なくとも「この新しい椅子については買い物の価値を疑う必要なくなった」と悟るわけである。

なんでこんな事を書いているのかというと、昨年の始めに臀部が痛い文章を書いて、以降「完治した」としか書いていないことを思い出したからだ。
それに気づいてしまうと、どうにも座りが悪く落ち着かないためこんな文章を書いている。


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