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〇〇をとって遺留分割合を「薄める」。

前回のnoteでは「生前贈与によって遺留分対象財産を減らす方法」について解説いたしました。

今回は、遺留分対策の考え方「外して、薄めて、棄てさせる。それがだめなら後は金。」の中から
「薄める」手法をお伝えしていきます!

▼_以前のnoteはこちら。

■養子をとって薄める。


相続税の基礎控除額の計算上、
法定相続人の数として算入できる養子の数は、
1名(実子がいない場合は2名)です。

したがって、どんなにたくさん養子をとっても、基礎控除額は養子を1名または2名とった場合と変わりません。

しかし、遺留分額の計算上は、養子も実子と同様に取り扱われます。
つまり、養子縁組をすればするほど、相続人一人当たりの遺留分額が減少します。

では、例として、長男が財産を全て相続したいが、将来的に次男が必ず遺留分侵害額を請求してくるであろうと考えられる場合、長男はどのような対策を取ることができるでしょうか?

例えば、
長男の配偶者および長男の子供を全て長男の親の養子にする方法が考えられます。

こうすることで、
相続問題が長男と次男だけの1対1の問題ではなく、
長男、長男の配偶者、長男の子供と次男の3対1の構図となります。
養子となった配偶者や子供を含めて4人が相続人となるわけですから、
次男の遺留分は
4分の1×2分の1=8分の1
まで減ることとなります。

しかし、このような手法は、果たして無制限に認められるのでしょうか?

実は、【無効】とされてしまうケースも存在します。
親子関係を作る意図がなく、単に遺留分対策のためだけに行われた養子縁組は
判例上、認められることはありません。

■養子縁組が【無効】となる要件

養子縁組が無効となる主なパターンは、以下の2種類です。
①意思無能力無効
 ⇒養子縁組をした当時、養親が認知症を発症していた等、
  意思能力がなかったと判断された場合。

②養子縁組意思を欠くことによる無効
 ⇒民法802条に規定があります。

※民法802条※
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百九十九条において
  準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、
  そのためにその効力を妨げられない。

ここで、私(水上氏)が見た判例をご紹介します。

<隣人の世話をしていた者が、自分の娘を隣人の養子にしたケース>
相続人から【無効】が主張され、裁判所がそれを認めました。

【無効】と判断された理由は3つあります。
①養親子の関係
②会っている頻度
③その他、どの程度世話になっているかなどの事情

⇒隣人自身は本人のお世話をよくしていましたが、娘はそこまで面識がない中での養子縁組でした。
本人の最期を看取ったわけでもなく、生前も手続きのために3年に1回会う程度でした。
上記の関係性より、『親子関係を築く意図はなかった』と判断されました。

<孫を養子にするケース>
一方、実際に血がつながっている祖父と孫という関係では、
その養子縁組に財産を直接承継させる意図が含まれていたとしても、
同居していたなど、一定の関係性が認められれば、縁組は有効と判断される判例が多くなっています。

遺留分対策として、養子を複数名取るという方法論は考えられますが、当該縁組の一つ一つについて、無効とされてしまうリスクがないか、注意していきましょう。

今回お届けした遺留分対策の講義の全容は、TRINITY LABO.会員限定サイトでご視聴いただけます。
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