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相続が絡む不要不動産の大きな問題点とは

■不動産を取り巻く環境

日本における長期的な人口推移を見ると、1900年ごろから急激に増加し、2008年ごろには1億3000万人近くまでになりました。ところがそれをピークに人口は減少傾向となり、2100年にはピーク時の約半分の6414万人になると予想されています。

人口が増えている時は、土地などの不動産の需要が増え、価格も上がり、買い手・借り手もすぐ見つかるという状況でしたが、人口が減るという事は、需要が減り、買い手・借り手も見つけにくく、伴って価格も下がってしまいます。
このことから、生まれた年代(=世代)によって不動産に対する価値観に大きなギャップが生まれているというのが現状です。

■空き家問題

令和元年の統計から、全国の65歳以上の持ち家率は、単身世帯で66%、夫婦世帯で87%と高く、今後相続が発生することで空き家となる不動産が増える事になります。

「空き家問題」とよく言われますが、
自治体だけでなく近隣住民からも上がる声として、メディアなどでよく取り上げられる空き家問題には、
・朽廃などで倒壊しけがなどの被害が発生する恐れがある
・管理されず荒廃し、周辺地域の住環境が悪化してしまう
・放火・不審者などの発生可能性が上がり、周辺地域の治安の悪化してしまう
・有効利用ができず、地域活性の視点からも弊害となる 
などがあります。

しかし、相続によって権利が次世代に移転した不動産などは、子供や親族が遠方に住んでいる・解体や管理に費用がかかる・対応に手間がかかるなどの理由から、適切な管理・対応が成されず、空き家となってしまうことが間々あります。
そして、高齢化に伴って今後も空き家は増加し続けることが見込まれ、これは社会問題として認識されています。

このため国(行政)は様々な施策を実施しています。
例えば、2015年に施行された「空き家など対策の推進に関する特例措置法」では特定空家等に指定されると固定資産税・都市計画税の軽減措置から除外されてしまいます。
また2024年からは土地の相続登記が義務化され、相続の発生から3年以内に登記しなければ10万円の過料が科されるようになります。

そして今年令和5年から施行されたのが、前回までに解説した相続土地国庫帰属制度です。

■不動産に対する価値観の違い

ここで先述の「不動産に対する価値観の世代間ギャップ」をみていきます。

この表のように、これまで親世代は「不動産は付加価値のあるもの」として資産として代々保有し続けてきた背景がありますが、今の子世代は「不動産は負担のかかるもの、資源」と認識しています。

「資源」と「資産 」との違いは「資源は使わなければ価値はゼロ」だという事です。
「使えない・使わない」は価値はゼロと考えます。そのようなものは、いくら親から残されたものだとしても、困ってしまいますし、前述したとおり需要が減るので、貸したり売ったりが非常に大変となってしまいます。

この世代間ギャップをどちらの世代もお互いがわかっていないことが多いです。
親は子に「不動産を残せば喜んでくれるだろう」、子は親に「今の時代残されても困ることぐらいわかってるだろう」と、期待を抱いてしまっているのが現状です。

■不要土地の問題

親の時代は使っていたが、子にとってはいらない不動産の例として、
リゾートマンション、別荘地、遠方の実家などがあります。
こういった不動産は、親の代は【資産】として保有していましたが、次世代は【負債】として保有することとなります。

買い手がつけば問題はないのですが、買い手が現れなかった場合に問題となります。

不要な不動産が処分できないと、
・相続税や固定資産税などの納税資金が確保できない
・維持管理の手間と費用の負担が発生し続ける
・がけ崩れや家事などによる第三者へ損害のリスクが存在し続ける
・詐欺や犯罪に利用されてしまうリスクを負うことになる
・不動産を相続人同士で押し付け合う事で争いに繋がる
といったような問題が残ります。
またこの世代だけでなく、孫の世代、さらに孫の世代と負担が続いてしまう恐れもあります。

以下は親世代から孫世代まで、不動産を相続した場合に実際どれくらいの負担がかかってしまうのかを図に表したものです。(当該遺産に係る相続税率は30%だったものとしています。また、説明を単純化するために速算控除額は考慮しないものとしています。)

年単位、親の代のみなど、一部を切り取って見れば負担は大きくないと感じられるかもしれませんが、将来まで見据えた負担総額を数字として認識すると、当事者は一気に危機意識を持てるようになります。

生前対策や相続に関するコンサルティングの際に、処分が難しい不要土地の存在を確認した場合には、リスクや負担の部分において大きな問題があることを当事者にしっかりと認識してもらい、決して放置してしまうことがないように案内していくのが良いでしょう。

不要土地の処分については、国庫帰属制度の活用を検討するほか、不要土地の引取り事業を展開している企業に相談してみるという方法もありますので、その線も視野に入れてみてください。

詳しくは、TRINITY LABO.会員限定サイトにてご覧いただける
【処分困難不動産の問題解決手法解説セミナー】でも解説しています。

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