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相続土地の国庫帰属制度における引き取り出来る土地の要件と負担金

■国庫帰属が出来ない土地とは?

土地の管理コストの国への不当な転嫁やモラルハザードの発生を防止するため、国庫帰属の要件が法令で具体的に定められています。法令で定められた要件に該当する土地については国庫帰属ができません。

1)申請の段階で直ちに却下になる土地(=申請が出来ない)

  • 建物が存在する土地
    ※解体して更地にする必要があります

  • 担保権など負担のある土地
    ※個人名の債権が登記されているケースも少なくありません。

  • 通路その他の他人による使用が予定される土地
    ※通路、墓地内の土地、境内地、現に水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地は申請できません。

  • 特定有害物質により土壌汚染されている土地
    ※土汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質に該当する場合は申請できません。

  • 境界が明らかでない土地
    ※境界が明らかな土地とは…
    ① 申請者が認識している隣接土地との境界が表示されていること
    ② 申請者が認識している申請土地の境界について、隣地所有者が認識している境界と相違がなく、争いがないことが条件です。

2)帰属の承認ができない土地(審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地)

  • 崖がある土地
    ※崖の基準…勾配が30度以上、かつ高さ5メートル以上に該当する場合、不承認となります。

  • 工作物、車両または樹木が地上にある土地
    ※果樹園の樹木や定期的な伐採を行う必要がある竹、建物に該当しない廃屋、放置車両などが存在し、土地の通常管理または処分を阻害する土地は審査に通りません。

  • 地下に除去すべき有体物がある土地
    ※除去すべき有体物…産業廃棄物、建築資材、古い水道管や浄化槽、井戸などがある場合は却下されます。

  • 隣人とのトラブルを抱えている土地
    ※隣接所有者などによって通行が現に妨害されている、所有権に基づく使用収益が現に妨害されている などの場合は引き取ってもらえません。

  • その他、通常の管理または処分するにあたり過分の費用又は労力を要する土地
    ※例えば…
    ●災害の危険により、土地や土地周辺の人、財産に被害を生じさせるおそれを防止するための措置が必要な土地→土砂の崩壊の危険のある土地について崩壊を防ぐために保護工事を行う必要がある場合など
    ●土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地→土地に生息するスズメバチ・ヒグマなどにより、当該土地又はその周辺の土地に存する者の生命若しくは身体に被害が生じ、又は生ずるおそれがある場合など
    ●国による整備(造林、間伐、保育)が必要な森林(山林)→間伐の実施を確認することができない人工林など
    ●国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地→土地改良事業の施行に係る地域内にある土地の所有者に対して、近い将来、土地改良法第36条第1項に基づき金銭(※)が賦課されることが確実と判明している土地など
    ●国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき申請者の金銭債務を国が承継する土地→土地改良法第36条第1項の規定により、組合員(土地所有者)に金銭債務(※)が賦課されている土地(例:土地改良区に賦課金を支払っている土地)など

以上のように、様々なNG要件が設定されており、この制度を使って引き取ってもらえる要件を満たす物件は現状ではそこまで多くないと思われます。
法務省のHPに詳しい要件や、却下要件や不承認要件に当てはまるかどうか判断の際の参考になるチェックシートがあるので、具体的な事案がある場合にはそちらも活用していきましょう。

■負担金の要件

負担金は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した、10年分の土地管理費相当額です。要件審査を経て承認を受けた方は、負担金通知を受け、政令によって定められた金額を支払う必要があります。

この相続土地国庫帰属制度を利用して土地を引き取ってもらう為には、
申請時の審査料(14,000円)
負担金(20万円~)
の他に、土地の境界を明確にするための土地境界確定費用(50万円~)、また既存の建物がある場合は解体費用(木造であれば5~7万円/坪、RCなら10万円/坪 など)が発生し、時間もお金もかかります。
制度としては素晴らしい制度ですが、誰もが簡単に使いやすい制度とは言えない状況です。

少なくとも要件を満たさない土地について、専門家・コンサルタントとしてどう向き合い、どのようなソリューションを展開していくかは、引き続き大きなテーマとして残りそうです。

参考:相続土地国庫帰属制度の概要(令和5年3月30日 法務省)https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html#mokuji6

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