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商店街の福引

マッサージの帰りに、商店街の福引券を4枚もらった。
「1等は金券10,000円です。当たったらうちのお店で使ってくださいね」
福引なんて、何年ぶりだろう。
ピンク色の券を手に、商店街の事務所へ向かう。
小さい頃から通っているくせに、商店街の事務所の場所なんて、おぼろげにしかわからない。
「事務所はこちら!」という張り紙をたよりに、脇の小道へと入る。
…ここか。引き戸のドアが重くて開かない。
見かねて、親切な事務所のおばさんが開けてくれた。
「まあまあ、ようこそ。福引きですか?」
中に入ると、商店街の人らしき2人の年配の女性が笑顔で迎えてくれた。
「はい、4回ね!特等も出てるから、がんばって!」
昔懐かしい、ガラガラタイプのくじ引きを、ゆっくり回す。
カラン、と出たのは、赤い玉。一番下のやつだ。
2回目はどうだろう?
…また、赤。
3回目、
赤。
ラスト1回!
……
期待虚しく、赤い玉がころがった。
「あら〜残念!ティッシュかうまい棒、どうぞ」
1等とれたらマッサージ1回分になるなどと邪な考えがよぎったせいか。それとも、この前寄った神社でひいた大吉のおみくじに運を持っていかれたか。
そんなことを考えながら、トイレに流せるティッシュ2つと、うまい棒2本をもらって、事務所をあとにした。

この街で生まれて、この街に住んでから長く経つけれど、地域の人とふれあうことはなかなか少ない。
もちろん、商店街のお店の人たちと話すことも。
それでも、昔から知っているような、同じ時間を同じ街で過ごしてきた者同士の、ゆるやかな親近感、安心感。
東京の片隅で、ひとつの街に長く住むことも悪くない。そう思えたひとときだった。

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