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贅を尽くした最高の違和感/大貫 妙子&小松 亮太/Tango

前回に続き、異ジャンルの両雄による企画ユニットのアルバムを紹介します。

僕は2人とも大好きなので、2人が組むというニュースを耳にして以来、ソワソワ楽しみにしていたものです。しかしいざ、リリースされた作品を聴いた最初の率直な感想は、「贅を尽くしたギクシャク感」でした。もちろん、両雄がガップリ四つに組んで、お互いの技量や持ち味を惜しみなく発揮した、紛れもない名盤です。しかし滲み出る、隠しようのないギクシャク感こそが、本作のワンアンドオンリーたる所以です。

小松亮太のストロングポイントは、演奏の熱量。漫画でいうと、少年ジャンプ。全部のコマに集中線がひかれているような熱量。
大貫妙子の特徴は、寂寥感とタイム感。歌詞に出てくるのはいつも、うち捨てられた町や、誇りをかぶった思い出たち。歌い方は、あえて符割からズラした独特の間が光る。漫画でいうと、あだち充。
ということで、例えるなら「集中線の多いあだち充」。贅沢な違和感だと思いませんか?

チグハグ模様にさらに輪をかけるのが、2曲目の「Tango」。というのもこの曲は、ター坊が歌詞を提供した、坂本龍一(元恋人)の作品なのですが、タイトルこそタンゴなれど、本場のタンゴの流儀は一切きにせず、イメージに任せてそれっぽい旋律をあてがった、いわゆる「エセタンゴ」なのです。それを今回のカバーにあたり、小松亮太が(よせばいいのに)本格的なアルゼンチンタンゴ仕立てに編曲したものだから、ギクシャク感が増幅。格好いいうえに、深淵に違和感が横たわる、唯一無二の傑作になりました。

終盤にかけてどんどん熱くなる元カレ曲の演奏を背に、ター坊はあくまで寂寞鋭く氷のように歌う。この緊張感たるや!


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