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Caetano Veloso/Livros

独特な曲です。流麗なオーケストラで始まった矢先、変形サンバのような独特のリズムパターンが重なり、さらに不穏なブラスとノイジーなギターが上乗せされてくる、万華鏡のような音世界。そんな中でも、ボーカルはあくまで端麗で涼やか。こんなアレンジ、どうやって思いつくのか、不思議でなりません。

歌詞がまた、摩訶不思議な世界観で。

”星の間で、不吉にも君は躓いた
僕らの家には ほとんど本がなかった しかも町には本屋が一つもなかった”
”僕らの人生い入り込んでいた書物は 黒い肉体の発する光のように   宇宙の膨張を指し示す”  ”なぜなら文は、概念は、物語は、詩句こそは、
幾多もの世界を この世に投じることができるのだから“

Livrosとはポルトガル語で「書物」の意味。曲名は複数形ですが、この曲が収録されているアルバムタイトルは単数形の「Livro」。つまりここでいう書物とは、概念ではなく、数や重さのある物体です。曲の終盤では、ためこんだ書物(物語や知識)が、ずんとのしかかってきます。

”幾枚もの頁を 空虚な言葉で埋め 本棚をさらなる混乱で埋める"
"星の間で、不吉にも君は躓いた   だがその君は僕にとって 星々の中の星だった”

理系の人が、「数字でこの世の理を表せないか」という夢を抱くのと裏腹に、
文系人間は、「言葉ではこの世の全ては表せないのでは」という絶望を抱きます。
言葉は無限に紡がれ、物語は無限に増殖するが、それでも、世界が完全に表現されることはかなわない。よって、書物は増えど、本棚は永遠に完成しない。

ま、そんな難しいことは忘れて、メキシコ撃破を祝して、サンバを踊りましょう。

(引用元)

https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2015-07-20

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%AD-%E3%82%AB%E3%82%A8%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BE/dp/B0000568IB

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