見出し画像

救いようがないくらい救われてる/The Smith/There Is A Light That Never Goes Out

前回のアメリカのJohnさんに続き、今回はイギリスのSmithさん。どちらも超ベタな名前ですが、前者のファミリーネームが“Legend”なのに対し、後者は潔く“The Smith”という。。
このバンドの特徴の一つは、過激で自己憐憫まみれの世界観の歌詞です。

“Take me out tonight
Where there’s music and there’s people And they’re young and alive.”
“Driving in your car I never, never want to go home   Because I haven’t got one anymore.”
(今夜連れ出してよ 音楽のかかる陽気な場所に、君の車で   もう家には絶対帰りたくない  そんなの初めからなかったんだから)

The Smithが代弁していたのは、サッチャー政権時代の「痛みを伴う改革」前後で構造変化に取り残された人たちの心情。前回紹介した「Shine」の光が(おそらく)照射しきれなかった、トランプ支持に流れた層に近いかも・・。

そして、このサビ。

“And if a double-decker bus crashes into us
To die by your side is such a heavenly way to die.”
(もし2階建てバスが突っ込んできたら あぁ、君の隣で死ねるなんて・・!)

この曲にも、“光”は登場します。曲の最後に延々と繰り返されるフレーズ。

“There is a light and itnever goes out.”      (あぁ、消えない灯りがみえる)

「灯り」って、いったい何のことなんでしょう。
2階建てバスとの正面衝突の刹那に、網膜に焼き付くヘッドライトか。
あるいは、そんな甘美な妄想に興じながら見る、対向車線のヘッドライトか。
いやいや、もしかるすると主人公は、車に乗ってすらいないかも。
疎外感に浸された自室の毛布にくるまって夢想する、“君の車”のヘッドライトか。
そもそも“君”にあたる人なんているのだろうか。というか主人公は、若い青年ですらないかも・・

眩暈がするような、救いようのない世界観。だけど。いや、だからこそ。
Legendが大上段に掲げる“彼らに光を”という歌では届かない心の夜。
誰もが持つ疎外感にとって、この歌は救いの灯になるのでは、とも思ったりもします。

https://www.amazon.co.jp/Queen-Dead-Smiths/dp/B00002496Y



この記事が参加している募集

#私のイチオシ

51,105件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?