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John Legend and The Roots/Shine

オバマ政権が誕生した10年前の米国は、物事が徐々によい方向に変わっていきそうな、ポジティブな高揚感が少なからずあった気がします。ミュージシャン界隈でも、前向きな機運に満ちていたような。そんなムードを象徴するような、気骨あふれる名盤です。

ブラックミュージック界の第一線で活躍する巨頭同士が、1960~70年代の音楽から、とりわけ“社会派”な名曲を選りすぐってカバーしたもの。ソウルを中心に、ルーツレゲエやゴスペル等も目配りしたセレクト。例えるなら、「極上ステーキの食べ放題」といった趣です。

サウンド的には、基本的なアレンジは不変ながら、生音ヒップホップバンド、The Rootsのタイトな演奏とラップが加わることで、実にヘビーな仕上がりになっています。そして、甘いラブソングが得意なJohn Legendが、泥臭く社会派ソングを歌いあげる姿は、(原曲の熱量比ややマイルド感は否めないものの)、大いにギャップ萌えを感じさせてくれます。
歌詞は、#4は政治参画、#6はゲットーの少年、#10はベトナム戦争と、硬派な内容が目白押し。売れ線要素は極めて低い。色んな意味で、当時だからこそ作れた、奇跡的な名盤だと思います。

そんな栄養たっぷりのラインナップの締めくくりに位置するナンバーが、本アルバム唯一のオリジナル曲「Shine」。経済的に恵まれない子供たちにも公的教育を受けられる機会を、、と訴える、ゆっくりとした壮大な曲です。
”They wait to plead their case. Unknown, cast aside"  "I love to see their face. Can we spare the light?”
“We can let them die, we can let them high”
(嘆願されるのを待つ、うち捨てられた子供達。彼らの顔が大好きだ。光をあてたい。彼らを輝かすのも殺すのも、ぼくら次第なんだ)
“Ordinary people could be a hero. Don’t blow out the light.”  “Let them shine. Let them shine on. Let them shine.”
(誰だってヒーローになれるんだ。吹き消しちゃいけない。さあ光を)

この後の顛末を知ってる我々は、この歌詞には言いようのないほろ苦さを感じます。
彼らの淡い光は、”錆びた工業地帯”を照らすことはできなかったのですから。

https://www.amazon.co.jp/Wake-Up-John-Roots-Legend/dp/B003TXKSWK

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