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Flipper's Guitar/カメラ!カメラ!カメラ!

若さは、不遜だ。この世の全てに伍するような全能感に満ち満ちているから。
若さは、不完全だ。未完成ではない。途中経過であるつもりは毛頭ないから。
不遜さと不完全さは、美しい。若さは、いつかなくなってしまうものだから。

Flippers Guitarの歌詞は、若さゆえの狂騒感やらもどかしさを、めいっぱい湛えています。

“嘘をついた でまかせ並べた やけくその引用句なんて!”
“好きなだけ恋の夢をみて 勝手にキスして泣いて”
“花束をかきむしる 世界は僕のものなのに!”

青春映画のカラはしゃぎのような活劇。だが背後には絶えず、クールに自分たちを俯瞰する、諦念にも似た視点があります。それが、歌詞を担当する小沢健司の世界観の魅力です。今のこの瞬間は、いつか確実に、永遠に失われるだろうという、確信。

“名前をつけて 冷たすぎぬように シールで閉じて隠した”
“思いっきり僕たちは キスをなげて さよならする”

写真を撮る行為は、せつない。いつか終わりが訪れるのだと、知っているから。
写真を撮られる行為は、せつない。その瞬間の全抜かんあ、再現できないから。
そして、この瞬間がかけがえないことは、本人達が一番、わかっているから。

『Camera! Camera! Camera!』は、そんな砂鉄がぎゅぎゅっと詰まった名曲です。

“カメラの中  3秒間だけ僕らは 突然恋をする そして全てわかるはずさ”
“悔しいけど忘れやしないだろう このままでいたいと僕が思ってたこと”

ブリリアントな名曲が詰まった『カメラトーク』もまた、完璧なアルバムです。本曲『Camera! Camera! Camera!』のアレンジがしょぼい、という1点を除いて。(本曲の“完成形”は、解散後に発売されたアルバム『Color Me Pop』で聴くことができます)

1か所だけ隙を残したのは、あるいは、“永遠に不完全”であり続けることを美徳とした、天邪鬼な
アンファン・テリブルたる彼らの、あえての矜持だったのかもしれません。


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