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「宏観異常現象」と「流言」を考える夏

一年で最も暑いといわれる二十四節気の「大暑」も過ぎましたが、暑さの本番はこれから。真っ青な空に雄大な雲が高くそびえるさまを見ると、かつては「夏本番!」と大きく仰いだものですが、いまや「あの下は豪雨なのだなw」と思ってしまうのは“防災士あるある”かも。

真夏の花、といえば小学生の夏休みの観察日記でおなじみの朝顔でしょう。東南アジア原産とされる蔓性の一年草で、奈良時代末に薬用として中国から渡来し江戸期に観賞用として改良が進み、バリエーションが増えました。
俳句に季語として使う場合は旧暦にもとづき秋の花に分類されます。朝顔を詠んだ「朝顔に つるべ取られて もらい水」は特に有名で、江戸時代の俳人・加賀千代女の作とされる一句です。
つるべ(釣瓶)とは滑車に通した縄の両端に桶を結んで井戸の水を汲み上げる仕掛けですが、現在では水道が普及し、現役であっても動力ポンプ式で蓋に覆われ、井戸水そのものを目にすることも少なくなりました。

井戸は地下水脈と密接な関係にあるので、過去の大きな地震の際には前兆現象として、渇水や濁りなどの地下水異常が記録された井戸もあり、地下水観測も地震の先行現象を得るための有効な手段として期待されています。
国の地震予知研究はトーンダウンしていますが、民間では様々な手法を用いた研究が盛んです。それらの真偽のほどを語る立場にはいささかもありませんが、地震雲、動物の異常行動などいわゆる「宏観異常現象」は、現在のところ科学的根拠や統計的な裏付けなどでの地震との因果関係は解明されておらず、不安をかきたてる流言にも注意が必要です。

大規模災害時等に風説の流布はつきものですが、このコロナ禍の始まりに起きたトイレットペーパー不足騒動もしかり。SNSのつぶやきをメディアが取り上げ、SNSでさらに変質しつつ広まっていく流言を沈静化させるのは容易ではありません。蓄音機の音を広げるパーツをその形から「朝顔ラッパ」とも呼びますが、防災士もそれぞれが、信頼できる情報源より的確な情報を得て、広く周囲に伝えていく役割が求められています。

Writing / 鈴木里美


参考資料|草木花歳時記・秋(朝日新聞社刊 1999年)|地震前兆現象を科学する(織原義明・長尾年恭著 祥伝社刊 2015年)

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