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FREESTYLE RECREATIONの感想(2024/03/24時点)

FREESTYLE RECREATION、もう見ましたか?
まだ見ていないのなら、公開されている2回分を是非見てください。

ヨーヨーという遊びの中にフリースタイルというフォーマットが用いられてから早20数年。世代交代があったりなかったり、スタイルの流行があったりなかったり、ルールが変わったり変わらなかったり、移ろいゆく環境の中でプレイヤーは様々な試行錯誤を巡らせてきました。

そんな中で彼らは、また新しい目線で環境を構築しようとしています。彼らの発する一言一言が、今までなかった目線を与えてくれます。
まだまだやれることはあるし、彼らがこの先を先導していってくれるなら、向こう20年はワクワクする未来が待っていそうな気がしています。

また、彼らのもう一つの出口として、Spotifyに各々がレコメンドする楽曲を3曲ずつリストアップしてくれています。

今日車の中でフンフン聞いていた時に不意に思ったんです。
彼らがリストアップした曲、空間的な広がりを持つ曲が多い。第1回でハジメちゃんがポロリとこぼした一言にも繋がってきます。
ここをキチンと理解するならば、音楽的な要素からもアプローチが必要なのではないかと。まだ数年ですがクラブDJとしてやってきた目線で、今回の話を自分なりに解釈を入れてみようと思います。

*入船個人の思想です
*全てを肌感で語っています。


低音域に一家言ニキ

ちなみに入船のDJ的なキャリアでいくと、2011年頃からなんとなくクラブで遊ぶようになり、2014年頃から現場に出させてもらうようになりました。
BACK TO CHILLというDubstepを始めとするベース系のジャンルに特化したパーティに出会ったことで完全に方向性が決まり、ありとあらゆる低音ジャンルに手を出すようなDJになりました。

なんのこっちゃ、という感じですが、要はそのへんを歩いている人より音楽の低音域に関しては一家言あるのです。
あくまで僕はDJなので、実際に作曲をするプロデューサーに比べれば細かい部分までは追求をしていないのですが、空間(クラブ、箱)に対して音がどう響くか、という点において意識しながらDJをしています。
簡単に例を出せば、低音マシマシのド迫力のクラブ系サウンドの後に、高音が印象的なバンド系サウンドを繋いでしまうと「気持ちよくない」、みたいな感じです。
音は目には見えませんが波として実態を持ちます。周波数によって物質を揺らすということは、「波の細かさによって音楽の印象が変わる」ということです。
なので、その印象をブラさないよう、かつ飽きさせないようなDJプレイをしなければならない、というのが鉄則です。(僕は結構ブチ壊しますが)


僕が今回伝えたい要素は2つあって、
・彼らの「耳」に近づくにはどうすればいいか
・ステージ、空間を意識した選曲
というテーマでそれぞれ話していきたいと思います。

彼らの「耳」に近づくにはどうすればいいか

冒頭の気付きは「車の中」で起きました。
上述のようにDJでありながら、普段はスマホのスピーカーからシャリシャリ音を流しています。
車のオーディオって性能結構良かったりするので、スマホのスピーカーとはそら違うだろうという話ではあるんですが、
音の広がり方が全然違うんですよね。あと可聴音域も。
つまり、普段スマホのスピーカーからしか音楽を聞いていない人は要注意です。
本当はその音楽に含まれている音域をバッサリ聞き逃している可能性があります。
それは特に低音部分が顕著になります。

超わかりやすい図があったので拝借

スマホのスピーカーから出て耳に届く音の中で、一番低い部分を300hz(男性の声)程度とすると、 上の図だと200Hz以下が「低音域」に該当する部分なので、ほとんど聞こえていないことになります。

最近はどんな家電も標準搭載されているスピーカーの性能がいいのであまり気にならなくなりましたが、音楽を聞いた時「ベースが聞こえづらいな」とか「なんかスカスカに聞こえるな」みたいなこと、なかったでしょうか。
それはそもそもその低音域を再生できるスペックがないから、というのが原因です。

話が一度逸れますが、Skrillexが当時アホほど流行った要因の一つはコレだとも言えます。
界隈では「ダブステップか、ブロステップか」みたいな命名論争みたいなことが起きていましたが、ダブステップというのは本来低音域にグルーブがついたぐらいのド渋な音楽ジャンルだったわけです。
そこにEDM的な中〜高音域を取り込んだ「ブロステップ」が対等し、見事流行したわけです。
往年のダブステップ聴者からすると「何故あんなキンキンした曲が流行るのか」みたいな印象もありましたが、それは当然で、1人1台スマホを持つようになってきた時代、テレビじゃなくてYouTubeでMVを見るようになった時代において、かつてレコードで、スピーカーでキチンと再生されていた低音域はどんどん聞こえなくなっていっていました。その中で中〜高音を取り入れたダブステップ、を披露したSkrillexが流行するのは必然だったと、今では思います。

閑話休題。
恐らく、冒頭に貼ったSpotifyのプレイリストも、スマホのスピーカーから再生されてしまっては彼らが本当に聞いてほしい音像が再現されないでしょうし、伝えられるべきものが完全に伝わらないのでは、と思い今回筆を取った次第です。

「じゃあイヤホンかヘッドホンで聞けばいいのか」というのは半分正解です。
インナーイヤーやクローズドヘッドホン、今は適当に高めのモデルを買えばノイズキャンセリングがついてくる、みたいな時代です。
前述でクドクドと危惧していた自体は起こらず、音楽そのものの解像度は100%届くことでしょう。
ただ、何回言うねんという感じですが、僕は今回のことを「車の中」で気が付きました。
本当に彼らに近づきたい、という意思があるならイヤホンやヘッドホンはやめて、ちゃんとスピーカーで音楽を聞くべきです。
何故って、ステージ上でイヤホンやヘッドホンはしないでしょう?
スピーカーから空間を伝わる音を、観客と自分が同じ環境で耳に入れるわけです。
だから、普段からスピーカーから出力されて、それがどう空間を満たすかを常に耳と頭に入れておくほうがいいわけです。
(ハジメちゃん、営業妨害だったらゴメン)

しかし、彼らが何故そういう「空間と音の関係性」についての経験値があるのかといえば、よくよく考えたら「YAGI」を始めとしてよくクラブに遊びに行っている様子が伺えるし、演劇を見るために劇場に足を運ぶ、とか彼らの日常体験が既にそうなっているわけです。
あるいは、周囲にオーディオにこだわる大人が多いのかもしれません。
特段意識せずとも、「音が空間を満たすこと」がインプットされている故に、彼らは特別なことではないように話を進めていますが、意外とその地点での乖離ってデカいんじゃないかな、と思った次第です。
だからと言ってこの記事ではクラブに行け、劇場に行け、とは言いません。
ただ「ちゃんとしたスピーカーで音楽を聞いてみて」というのは今回頭の隅に入れておいてほしいことです。

ステージ、空間を意識した選曲方

包含して「選曲」と言いましたが、本来的には第2回でハジメちゃんとトオルちゃんのやり取りが全てです。
僕からそこに今回補足を入れたい部分としては、より技術的な面での話です。

音像というのは「いかに分離するか」、「音の粒がどこまで高精細か」という点にかかっています。
正直、音の粒レベルでいえばもうパッケージされて消費者の元に届いてる時点でどうしようもないんですが、マスタリングをする人、会社によって結果が結構変わったりします。
似たような局長の選択肢があったとして、音レベルで「こっちのがドラムが目立つよな…」とか「こっちのが低音域が豊かだよな…」とか自分の思い描くイメージの解像度により近い方を採用する、みたいな基準を持てる可能性があります。

そして、ここからは日常生活レベルで気をつけたいところなんですが、スマホ脳ならぬ、スマホ耳にならないように気をつけたい、という話です。
PCDJ界隈で言うところの「最低限の高音質」なラインというのは320kbpsです。本当はwavのがいいですがmp3でも個人的には構わないと思います。(というか流通上仕方ないことがある)
一方、youtubeの設定でいける最高音質は256kbpsです。
Spotifyはちゃんと320kbps出ます。
kbpsはよく聞く単位だと思いますが、結構これってなんなの?というのは1秒間あたりにどれほどの情報が入っているかを表したものです。 
つまり、kbpsが低ければ低いほど情報量は少なくなります。
音楽ファイルにおける情報量が少ないとはどういう状態か。
言うならば周波数がダマになっていく、と考えれば十分だと思います。
余計ややこしい?
では先程の図を拝借して解説しましょう。

高音質のイメージ
低音質のイメージ
勝手に拝借した上に落書きまでしたのでチクらないでください🥺

実際にはちょっと違いますが、この場だけの簡易的な解説ということで勘弁してください。
つまり、音の粒という部分にダイレクトに干渉してくるわけです。出汁の繊細な味を期待してメシ食ったら醤油の味しかしない、みたいな感じです。違うか。

音質がステージの迫力に直結するのであれば、当然気をつけて然るべき部分だと思います。
これもやっぱり特に低音域は顕著に影響が出ます。
具体的にどうなるかというと、例えばバスドラムの下の方の帯域とベースの帯域が渾然一体になってしまい、バスドラムが鳴る度に強めのベースがワンワン鳴ってしまう、みたいな感じです。
こうなってしまうとメリハリもあったものではありません。
ドラムはドラムとしての機能を、ベースはベースとしての機能を果たそうとするならば、この「最低限の音質」というのは守りたいところです。

*mp3とwavの差について

音楽を好きになって、音質を気にし始めると絶対当たるのが「mp3とwavは結局何が違うの?」という話。
色々調べると色々出てくるので色々見てみてほしいんですが、個人的に一言でまとめるなら「mp3にすることでwavのカドが取れる」という感じでしょうか。
音質に神経質になると「その削れてしまうカドのところに旨味があるかもしれない……!」みたいな気持ちになるのでwavがいい人は徹底的にwavがいいんですが、個人的にはDJしてる時に「客の耳に入るべき音か否か」という判断基準で考えた時に、ほとんどmp3になっていきました。逆にもう低音域しか鳴ってないような変態みたいな曲をかける時はwavを使います。

現在の環境

ここまで言うだけ言いましたが、現行の大会だと「会場による」としか言えない状況でもあります。
会場のスピーカーが、スマホよりは当然良いとしても、クラブや劇場より悪い可能性は全然あります。
つまり、低音域で技を合わせるような構成を組み、会場に持っていったらスピーカーから出力されずにスカスカの音楽で演技するハメになる、という事態が起き得ます。
これは、最初から最後までイヤホンオンリーで練習しない方がいい、という部分にもかかっています。
イヤホンは限りなく耳に近い出口から高音質で音を流し込むので、聞こえない音はないほどの没入感で音楽を聞くことができますが、空間との乖離が一番起きるので、空間のイメージがついた後に、反復練習のフェイズまでいってからイヤホンで練習するべきだと思います。

また、あえてその状況を逆手に取るならば、ロックやポップスが映えるジャンルになるはずなので、その周波数帯から選曲をするのもひとつの手段です。
逆の逆を言えば、会場の環境がもっと音質を大切にする空間であるなら、もっともっと凄いフリースタイルが世に現れるはずなのです。

Twitterでコマゴマ書くよりこういうのは書き切ってしまった方がいいと思い、今回もまたパッションで書いてしまいました……。
またご意見あったらお気軽にください。

長々と書きましたが、とにかくFREESTYLE RECREATIONを見てください。
よろしくお願い致します。


もう一度


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