沸騰前90℃
モントローザは
無言でお湯を沸かし始めた
どくん、どくん
ホームラの心臓は
ホッキョクの側で音を立てる
彼は枕に顔を埋めるように
心臓に擦り寄って
目を閉じている
鼓動は一定の拍動で
心地よく波打っている
水の入ったポットは
やがてブクブク泡を立て
フタはカタカタ揺れていた
ホームラの心音が
先ほどより早くなった
ホッキョクは
心臓から離れて
コックピットに座った
ポットのお湯は
今にも吹き出しそうで
湯気が変わるがわる
はみ出していた
石薔薇の実の入った
ティーポットにお湯を注ぐと
煙のような
鮮やかな紅が
立ち上り拡がった
ホームラは
ツギハギの鋼鉄の皮膚を
波立たせて笑顔を作って見せた
ホッキョクは
つまらなそうな顔をした
ホームラの心臓は
モントローザの手の上に
石薔薇に包まれて乗っていた
ホームラの背後に潜んでいたガニメデ小隊は
早速行動を開始した
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