具現化したトラウマ

石薔薇の魔女モントローザ岩肌の少年イワモト
氷の柱が乱立した部屋で
突然現れた白雪の大軍スノーマンズ総帥マダムネヴァと対峙していた


岩肌の少年イワモトは完全に固まってしまった
「アナタの代わりなんていくらでも居るのよ」
いつか言われた言葉が頭の中に再び残響した


「僕ハ…僕ガ生キテイル意味ハ…。代ワリガタクサン居ルナラ…僕ノ生キテイル意味ハ…何ナンダ…?」
── 岩肌の少年、イワモト


マダムネヴァは
その問いかけには応えず
不気味にほくそ笑んでいる


「生き物が生きている意味なんて無いわよ?
ましてや人生なんてもの、無駄でしか無いわ」
── 石薔薇の魔女、モントローザ
「ソレジャア…何デ…僕タチハ存在スルノデスカ…?!」
── イワモト


岩肌の少年イワモトの目からは
ダイヤモンドにそっくりな
綺麗な鉱物がこぼれ落ちていた


「そんなの簡単よ。
自分の生きる意味を探すためよ。
それにね、もともとそれを知ってるはずなの。
けれども残念なことに忘れてしまっているの。
それを思い出すために、あなたたちは、必死で生きていくのよ。
"寿命"という、期限付きの不自由な身体でね」
── モントローザ
「"あなたたちは"…?
アナタハ違ウト言ウノデスカ…?」
── イワモト
「私には"寿命"はない。良いと思うでしょう?
あなたたちが探してる答えをとっくの昔に見つけたのに、まだ生きながらえているのよ。
空の宝箱をずっと漁り続けている感覚だわ。
退屈ったらありゃしないもの。
けれどね、たまにあなたのような珍しい存在に出会えると、興奮して仕方なくなるわ。
もう、それだけしか、生き甲斐なんてもの、無いのよね」
── モントローザ


モントローザの瞳には
深淵の暗闇と恍惚の輝きが
不自然に同居していた


「僕ガ…珍シイ存在…?」
── イワモト
「そうよ。あなたは私が出会ったなかでも特別で、それでいてかなり奇妙な存在ね。
だから自信を持ちなさい。
他の誰かに必要とされていなかったとしても、私が必要としていること、覚えておきなさい
あなたの魂は、あなた以外存在しないのだから」
── モントローザ
「僕ノ魂ハ…、僕ダケノモノ…」
── イワモト



その瞬間
岩肌の少年イワモト
マダムネヴァをイースターの槍で貫いていた


◀︎ 前頁◀︎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?